~New Yorker’s English Expressions~ ニ&
テーマ:育児とキャリア
子育て中の女性を中心としたコミュニティー「ママサロン」主宰の直子さんと、料理教室「Five or Under」主宰のネイチャーマン初音さんが、ニューヨークでの子育てとキャリアについて語り合った。
——現役で子育てをしているお母さん同士ですね。
初音 5歳と3歳の息子、そして1歳の双子の娘がいます。今日は夫とナニー(乳母)さんとの「子育てオールスターチーム」に任せてきました。
直子 信頼できる育児チームがいるって大事ですよね。
初音 そうですね。特に非常事態に対応できるチームは大事。何かあったらスクラムを、ババっと組みます。でもボスは、母親である私。
直子 誰かがリードしないとね(笑)。私もハウスキーパーさんとシッターさんなどフル活用で、いろいろ乗り越えてきました。最近は子供が成長し、やっと家事を外注せずに回せるようになってきました。
初音 日本は子供の勉強、お弁当、家事、遊びなど、全方面を子育てとして親がやるイメージがありますが、アメリカでは本当に大事だと思うことに親が注力して、苦手な部分は他の人の力を借りるのが、スタンダードな気がします。
——さながら、会社経営。
初音 まさしく子育てを目的とする会社です。
直子 そういうメンタリティーは大事ですよね。以前、会社経営時に人事を担当していたので、「子育ても同じようにやればいいんじゃないか」と気付きました。
初音 私も、本当にやりたいことにもっと時間を充ててもらえたら、という思いから、少ない食材で手早くできる料理教室を始めました。母親として大事にしているのは、子供が今どんなサポートを必要としているかを見極めることです。すごい勢いで4人が成長するので、これだけでも大変。子育ても仕事もメリハリは重要です!
直子 そうですね。必要なヘルプを活用しつつ、自分と家族の優先順位をうまく整えることが、育児を楽しむ鍵だと考えています。仕事も家庭運営も、チームで戦略的にやるのが、私の性に合うんだと思います。
初音 仕事を理由に子供を預けるのも、私にとってはいい息抜きにもなります。料理が好きだから。日本だと、子供を優先しない親として批判されるかな。
直子 そうなの。もっと個人の自由を尊重できる社会を目指すムーブメントに、ママサロンの皆さん含めたみんなで、参加していきたいと思っています。
初音 女性の人生は、夫や子供という自分以外の要因で変化が現れて、軸がぼやけてくる。自分の「内なる声」をないがしろにせず、しっかり聞いている人が、キャリアアップしていく気がしますね。
直子 本当にそう。「ママサロン」を始めた理由は、子育てでキャリアを離れたり、趣味や特技を活用するチャンスがないという人に、スポットライトを当てたい、というものでした。
——駐在員の妻として専業主婦をしている日本人女性も多いですよね。
直子 駐在員の奥さまの中には、「専業主婦だと日本でも肩身が狭くて」「何か資格を取っておいた方がいいのかな」とストレスを抱えている人がいます。
でも、ニューヨークで旦那さまと支え合い、迷いながらでも子育てにどっぷり浸かれることは、将来の糧になる、すばらしい経験だと思う。
初音 新しいストレスがあるということは、新しいステージに到達した証拠なのではと思います。私はバリバリ仕事をすることを最重視する価値観でしたが、子供が生まれて崩れた。仕事を辞めて、「自分は本当に料理が好きなんだ」と気付き、今に至ります。
ニューヨークは次に行きやすい街だとも思います。履歴書に書くような職歴が少なくても、探し方やアピールポイントを工夫すれば、意外と就職先もある。
直子 結婚や子育てでチャレンジがあったからこそ、考えるきっかけになり、自分も家族もより強く、賢く、たくましく成長するんです。
家庭運営と育児は、戦略的に工夫するもの —直子
子供がいたから、新たなステージに来れた —初音
写真左:ネイチャーマン初音
早稲田大学大学院法務研究科卒業。元金融勤務。ひでこコルトンさんによる「NY*おもてなし料理教室」マスターコース(認定校)修了後、五つ以下の食材で作るおもてなし料理教室「Five or Under」をスタート。クラスはマンハッタン区ユニオンスクエア、ニュージャージー州モリス郡など。five-or-under.com
写真右:直子
米株トレーディングやシンクタンク勤務を経て、マネジメントコンサルティングファームを夫と共に12年経営。第2子出産後、日本人の母親を対象にしたコミュニティー「NY ママサロン」スタート。多様なジャンルのイベント企画・運営を行う傍ら、通訳・翻訳、コンサルタントとしても活動。facebook: MamaSalon