木を見て、森を見て、木として考えるコラム

<第15回> 「だって複雑だから」を乗り 越える・・・知識と、動くための力を得られる本

連日伝えられる、ガザをはじめとしたパレスチナの状況。ニュースやソーシャルメディアを通して目撃する破壊や残虐には、胸が締め付けられる。

昨年10月のハマスによるイスラエル襲撃が文字通り起爆剤となり、イスラエルはガザへの激しい攻撃を開始した。執筆時の1月下旬現在、それは100日間以上続いている。けれども、パレスチナとイスラエルに関することは今に始まった話ではなく、ずっと語られてきた。実に75年以上続くこの状況は頻繁に、「衝突」「対立」などの言葉で表される。しかし私たちが見ているものは、本当にそうなのだろうか。

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向き合うための第一歩

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とはいえ私には、実際に非常に複雑なこの内容を、限られた文字数内で簡潔に説明する役割は果たせない。でもだからといって、「だって複雑だから」を理由に何もせず無関心でいたり、その結果パレスチナの民間人に対して続く残虐を見届けることは、私は強く拒否する。

なのでここでは、市井のひととして、日本語と英語で読書する者として、そして言葉の力とストーリーテリングのアートを信じる者として、私の「だって複雑だから」の瞬間を乗り越えるのを助けてくれた初等的な本をいくつか紹介したい。日英の両方で読めるもの、そして紙の本だけでなくデジタルや音声での購入、図書館での借り出しが可能なものもある。

『パレスチナ 特別増補版』(ジョー・サッコ、訳:小野耕世)

ジャーナリストで漫画家の著者が、1990年代初頭に自ら訪れたパレスチナでの取材を基に描いた、ジャーナリズム的コミック。

『アンジェラ・デイヴィスの教え 自由とはたゆみなき闘い』(アンジェラ・デイヴィス、訳:浅沼優子)

黒人解放運動で知られる著者のインタビューやスピーチを編纂。世界中に存在する様々な抑圧からの解放を唱える上で、パレスチナの解放は重要なキーであることを説く。

『ハイファに戻って/太陽の男たち』(ガッサーン・カナファーニー、訳:黒田寿郎、奴田原睦明)

解放運動を牽引した存在(36歳で暗殺された)であるパレスチナ出身著者による抵抗文学。フィクションを通して、土地を追われたり、家族と離ればなれになったり、尊厳を奪われることの不条理さを色濃く描く。

『ガザに地下鉄が走る日』(岡真理)

40年以上パレスチナに関する研究を続けてきた著者が、何十年にも渡る占領と暴力の中を生きる人々の経験と、あるべき尊厳を伝える。

『世界 2024年1月号』

岩波書店による言論月刊誌。特集では、前述の岡真理をはじめ複数の研究者が寄稿。過去から現在にかけてパレスチナ情勢を解説し、平和をあきらめない未来を考察する。

これらはあくまで一部で、ほかにも素晴らしい書籍は多数ある。本だけでなく、映像作品やポッドキャストなども活用できる。

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誰かの解放の訴えを、ほかの特定の人々への攻撃やヘイトにしない

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「だって複雑だから」を乗り越え、即時永久停戦を求め行動に移す…地域、職場、学校などで周りの人たちと会話し、連帯する。議員や議会に声を届けたり署名をする。集会やデモに参加する。現地の医療・生活支援の寄付をする。ソーシャルメディアで声を上げる。ご自身に合った手段があると思う。

しかしいかなる場合も、特に多様な人々が住むニューヨークで、民族、宗教や言語、人種、または出身など、背景に持つ要素だけで人々が安直に判断されたり、ましてや攻撃やヘイトの対象になってはならない。(次にあげる事例との並列は必ずしも的確ではないが、)第二次世界大戦中に、在米日本人・日系人がその出自から民間人であっても「敵」と見なされ迫害された、私たちに繋がりが深い史実を思い出して欲しい。

「だって複雑だから」…だからこそ丁寧に、でも一刻も早くより多くの人々がパレスチナの地での永久停戦を求め、奪われる命や尊厳を少しでも減らせることを、心から祈っている。

 

COOKIEHEAD

東京出身、2013年よりニューヨーク在住。ファッション業界で働くかたわら、市井のひととして、「木を見て森を見ず」になりがちなことを考え、文章を綴る。ブルックリンの自宅にて保護猫の隣で本を読む時間が、もっとも幸せ。
ウェブサイト: thelittlewhim.com
インスタグラム: @thelittlewhim

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