木を見て、森を見て、木として考えるコラム

<第13回>日曜開館が終了に。市の公共図書館予算削減から考えること

半年前にスタートした当コラムも、今回が年内最後。振り返ると第一回はこう始まった──「私は、図書館が好きだ。三度の飯より好きかはわからないけれど、週に三度は通う」。公共図書館が直面する予算削減の危機を取り上げる上で、私個人の図書館への愛を述べたのだった。

これを書いたのは、市の年度予算発表目前の6月。その直後、高まる懸念の声を受けてか、削減は見送られた。草の根の予算削減反対運動に参加していた私は、胸を撫で下ろしたのを覚えている。ところが11月の中間予算にて、図書館予算の削減が決定してしまった。これは市全域の公共図書館運営に影響をきたし、日曜開館サービスが終了することに。連載を振り返りながら、図書館に週三度通うのは難しくなるなぁ、と思ったり。日曜日しか図書館に行けない、または日曜日に働く保護者を持つ子どもの居場所として図書館が機能していた場合など、日曜開館に支えられてきた多くの利用者に影響するだろう。

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図書館だけでなく、教育や環境に関する予算も削減に

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今回の中間予算では、公立学校運営など教育関連の予算削減も発表された。削られた領域を保護者ボランティアで補填するよう呼びかけた市長は、一部保護者団体から批判を受けている。加えて、9月に第六回で触れたコンポスト関連の予算も縮小し、一部地域で運営の遅延が避けられない。これは7月に第二回で書いた気候危機問題にも繋がるわけで、市の環境対策が後回しになっていると言える。

第一回でも触れたが、こういった分野の予算削減には、南部国境からニューヨーク市にたどり着いた多くの移民に関する予算の増加が影響しているらしい。こういった人々が尊厳を持って暮らすための予算確保が必要であることには、私も強く同意する。けれども、その対応はそもそも適切に行なわれているのか、疑問視する声は多い。そしてその中には、今後も長期的に市で生活していくことになる人も多く、すると学校や図書館をはじめ市運営サービスの利用者は増える。例として、市の公立学校生徒数は増加しているそうだ。加えて物価や家賃の上昇も止まらない。なので、移民を含め市民の生活に直結する分野の予算も、むしろ今こそ強化されるべきではないのかな。

と、思うところを書いてきたけれども、行政予算に関する私の知識は浅く、「市井のひと」として抱くモヤモヤを言葉にしているに過ぎない。そして、私にはこの土地での投票権はない。それでも、税金を納め、市のサービスを利用する地域住民として、モヤモヤとの対峙は重要だと思っている。投票権の有無にかかわらず、私たちはみな、この彩り豊かで活気に富むニューヨークをつくる一員なのだから。

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「木を見て、森を見て、木として考える」

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連載開始から半年経ち、いまさらながら、当コラムの不思議なタイトル「木を見て、森を見て、木として考える」に触れたい。

私たち個人は、地域レベルから地球レベルまでいくつも重なる森があるとしたら、それらを構成する木だ。木として、個人として、抱くモヤモヤはきっとたくさんある。その際、自身の立ち位置を知るべく「木を見る」とともに、視野をさまざまなレベルの大きさに広げ、異なる人たちの声を聞き、「森を見る」よう努める。そしてそこからまた自分という木に立ち返り、「木として考える」──つまりこれは、私たちは個人であると同時に、コレクティブ(集団的、共同の)パワーを生む要員でもあることを、確認する作業のようなもの。そうすると、購買行動や、学校、職場や地域などコミュニティーでの連帯などを通して、自分に合う形でできることを探せるのではないかな。

ジャピオン読者はそれぞれ多様な意見を持つと察するけれど、この場を頂き、どなたかの「木を見て、森を見て、木として考える」きっかけになっていたら…と願いながら執筆している。たとえば「図書館が好き」ひとつとっても、そこから発展するように。

半年間このコラムを読んできて下さった方々、ありがとうございます。よいお年をお迎えください。そして来年も、どうぞよろしくお願いします。

 

COOKIEHEAD

東京出身、2013年よりニューヨーク在住。ファッション業界で働くかたわら、市井のひととして、「木を見て森を見ず」になりがちなことを考え、文章を綴る。ブルックリンの自宅にて保護猫の隣で本を読む時間が、もっとも幸せ。
ウェブサイト: thelittlewhim.com
インスタグラム: @thelittlewhim

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