NYでカラオケ
1960年代後半、日本で発祥し国民的娯楽となったカラオケ。80年代以降、台湾や韓国などアジアをはじめ、海外に進出したカラオケは、今や北米やヨーロッパでもみんなに愛されるエンターテインメントとなっている。ここニューヨークでも「KARAOKE」の看板を見掛けることもしばしば。今号では、カラオケで上手に歌うコツや市内にあるカラオケ店を紹介!思い切り歌って騒いで、ストレスを発散しよう!
この秋、4年ぶりに一時帰国した。2013年の渡米から2019年までは毎年帰っていたので、こんなに時間が空いたのは初めてのこと。JFKで羽田行きの全日空便に搭乗すると、機内でいつも流れる葉加瀬太郎の『Another Sky』が聞こえてくる。独特の感覚が呼び起こされ、「あぁ、私は帰るんだ」と実感した。
けれどもこの曲は、往路だけでなく復路でも流れ、その際にはまた違う気持ちになる。ホームである東京に向かう一時帰国には「帰路」があり、その「帰り」の便で行き着く先は、ニューヨーク…理屈ではわかっていても、こんがらがる。2週間前に「ただいま」と降り立った羽田から、家族に見送られて今度は「いってきます」と旅立ち、2回目の『Another Sky』が響く飛行機でJFKに辿り着くとまた「ただいま」を抱く感覚は、何度経験してもとても不思議だ。これは、移住をした多くの人たちが感じたことがあるのではないかな。新しい経験と記憶が積もり、生活が続く土地が、いわゆる「第二のホーム」だとわかっていても。
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「第二のホーム」を持つゆえ経験する、ホームでのアイデンティーティクライシス
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4年ぶりの東京では、聞いていた通り、外国からの観光客(に見える方々)が以前より多いと感じた。すると、白人のパートナーと一緒にいる私も英語で話しかけられる現象も、ぐっと増えた。インバウンド需要と呼ばれるものがあり、接客において英語(及び多言語)対応が強化されるのはわかる。外国人に見える人と一緒にいる私に英語で対応するとっさの判断も、理解はできる。しかし、私が一人でいる時にはそれは起きないので、不思議ではある。私自身は、誰と一緒にいても、同じ人のはずなのに。
会いたかった人たち、食べたかったもの、行きたかった場所、見たかったもの…それらが懐かしさとともにどっと一度にやってくる一時帰国は、わくわくする。それと同時に、ニューヨークで陥るのとは別の類いのアイデンティティークライシスも経験すると毎度思う。
海外移住にはさまざまな背景がある。私の場合は、自らの選択と希望でニューヨークに移り住んだ。期待と不安が入り混じった当時の意識のほとんどは、「第二のホーム」となるニューヨークに向けられていた。そしてそこでの経験が、自分のアイデンティティーを浮き彫りにしたり曇らせたりする。その一方で、ニューヨークで過ごす時間が長くなるにつれ、言うなれば「第一のホーム」である東京で覚える不安も大きくなっていく。ここに「ただいま」を抱いていいのだろうか。ここでも自分はもはや「外国人」なのだろうか。たまの一時帰国には旅行と似た要素も多くないだろうか。
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狭間にいるからこそ惹かれる、日本の「ディアスポラ文学」
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この連載でも以前触れたように、私はここ数年、日本の現代女性作家の小説に強く惹かれている。中でも、ドイツで執筆する日本出身の多和田葉子や石沢麻依、日本で活動し台湾にもルーツを持つ温又柔の作品は、むさぶるように読んできた。「ディアスポラ文学」とも呼ばれる彼女たちの文章は、それぞれ異なる背景のもと、言葉や言語の果たす役割、母語や母国語と呼ばれるもの、事象と自分との物理的または時間的距離などと向き合う。
私がこういった文学に出会ったのは偶然のようなものだけれど、ハマったのは必然かもしれない。二つの言語の狭間に揺れ、二つの場所に異なる「ただいま」を持ち、どちらの場所でもそれぞれアイデンティティークライシスを抱くのだから。
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ホームに「帰る」が、誰にとっても当たり前ではないということ
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二つの土地の物理的距離は、いくらテクノロジーが発展しても変わらない。ならばせめて時間的距離を縮めるべく、次回は間を空けず来年にはまた帰りたい。
しかし今回の一時帰国は、自分からは遠い土地で、多くの人々が命と居場所を奪われる残酷な事態が続く状況下でもあった。なので、またすぐ帰りたいと願う一方で、二つのホームに「帰る」ことが自分には可能であっても、それは誰にとっても当たり前ではないことを、今一度考える機会にもなった。
COOKIEHEAD
東京出身、2013年よりニューヨーク在住。ファッション業界で働くかたわら、市井のひととして、「木を見て森を見ず」になりがちなことを考え、文章を綴る。ブルックリンの自宅にて保護猫の隣で本を読む時間が、もっとも幸せ。
ウェブサイト: thelittlewhim.com
インスタグラム: @thelittlewhim
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