今話題のプランタンニューヨーク
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10月のある金曜日の夜、北ブルックリンの老舗ライブハウスにて、名古屋からやってきた「NEOかわいい」バンド、CHAIの公演を観に行く機会に恵まれた。ピンクのお揃いの衣装を纏った4人組は、マイクや楽器を手に自分たちの音を奏で、全身で自分たちの世界を表現する。ポップでキャッチーな楽曲が続いたと思ったら、ニューウェーブに変わったりギターをひずませたり。そして何より、彼女たちの一挙手一投足から目が離せない。だってその姿は、私がかつて日本で見知ってきたどの「かわいい」とも違ったから。
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「誰もがstrangeだよね?」「normalなんてないよね?」
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「新しい」だと思っていたNEOは、「ニュー・エキサイト・オンナ」を意味するらしい。そしてバンドの公式グローバルサイトには、「『かわいい』のために、大きな瞳や細い脚を手に入れなくちゃいけないわけじゃない」「『かわいい』は人の数だけある。みんなそれぞれの形で『かわいい』」「自信のなさも含めて自分。むしろ自信のなさはアートになる」といったことが書かれている。独特の体の動きを交えながら歌い続けるボーカル、それを固める安定したリズムやメロディー。彼女たちが発する「NEOかわいい」表現とメッセージはまさにエキサイティングで、響く音とともに私の体に染み入ってくる。
メンバーが「誰もがstrangeだよね?」「normalなんてないよね?」と英語で問いかけると、満員の観客たちは両手をあげ歓声を響かせる。その瞬間、金曜日のブルックリンは大きく揺れた。CHAIが、私たちを揺らしていた。それはきっと、今まであまり経験したことがないような日本の新しい「かわいい」に観客たちが呼応することで生まれ、会場いっぱいに広がるコミュニケーション。私は笑顔になり、歓びによる笑い声までこぼれた。
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日本のバンドやミュージシャンのライブで、「日本っぽい」をとっぱらう体験
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私は今まで、日本のバンドやミュージシャンのニューヨーク公演をいくつか観てきた。少年ナイフ、Perfume、細野晴臣、幾何学模様、青葉市子、そしてCHAI。日本出身の私にとって、ニューヨークで日本の音楽がライブで聴けるのは貴重で、この上なく嬉しいこと。けれども、私がこの街で観たかれらは果たしてすごく「日本っぽい」のかと考えてみると、そうでもないような気もする。
むしろ、「一周回って、日本」みたいな感覚かもしれない。その「一周」は、日本から地球をほぼ半周する場所にあるニューヨークでかれらそれぞれが持つ独自の表現とメッセージに触れて、固定観念のように持っていた「日本っぽい」をとっぱらい、また半周巡るように日本に連れて行ってもらう旅。そしてこのエクスペリエンスは、日本出身ではないニューヨークのファンや観客にも、共有されるのかもしれない。
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「ジャパニーズなんです」の看板ではなく、「自分らしい」をこしらえる
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ニューヨークに住み、自分の視野を広げてきたつもりだけれど、それでも、私は凝り固まった「かわいい」や「日本っぽい」に今も囚われていると感じることもある。それらは、ニューヨークで「私はジャパニーズなんです」と語る看板のような、持たなくてはいけないと思い込んでいる何かのようで、うまく手放せていないのだろう。
けれども、日本から半周回ってやってきたバンドやミュージシャンこそ、まさに広い視野を持っていて、その上でそれぞれが独自のパフォーマンスで魅せる。その様を目にすると、自分が持ってしまっている看板の存在にハッと気づき、叩き割りたくなる。
私たちがこしらえる看板があるとしたら、それは「自分らしい」であるべきなんだろうな。様々な場所から来た人々が集まるこの街で、日本の歴史、文化や社会を知るよう努め続けながら、一種の責任のような「どうあるべきか」と、自分は「どうありたいか」の塩梅を見つけることで、「自分らしい」はきっと見えてくる。そしてそのプロセスを楽しまなくちゃな…。それを、CHAIは今一度思い出させてくれた。
COOKIEHEAD
東京出身、2013年よりニューヨーク在住。ファッション業界で働くかたわら、市井のひととして、「木を見て森を見ず」になりがちなことを考え、文章を綴る。ブルックリンの自宅にて保護猫の隣で本を読む時間が、もっとも幸せ。
ウェブサイト: thelittlewhim.com
インスタグラム: @thelittlewhim
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前回に続きま&#
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