木を見て、森を見て、木として考えるコラム

<第8回>近年米国で急増している禁書と、それに対抗する「禁書週間」

東京で育った幼い頃から、地域や学校の図書館は私にとって身近な存在だった。数々の本と出会い、その中には今も強く記憶に残っている書籍がある。しかし、あの頃の自分が読みたかった本がもし、誰かの偏っているかもしれない思惑によって本棚から取り除かれていたら…?

米国ではここ数年、主に保守的傾向が強い州で、地域や学校の図書館から書籍を排除する、いわゆる禁書が相次いでいる。年々深刻になる禁書について、より多くの人々が知り考える機会として、毎秋「禁書週間」(Banned Books Week)が開催される。今まさにその期間中で、今月1日から7日まで。これに賛同する図書館や書店などは、全米で頻繁に禁書になる書籍を集めた「禁書コーナー」を特設したり、そういった本の読書会を実施するなど、反骨的なアプローチで禁書と闘う姿勢を示す。

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禁書は事実を「消そうとする」、そして人々を「黙らせる」

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全米図書館協会の調査では、児童や若年者層向けを中心に、人種や性的マイノリティーに関する書籍が禁書対象になりやすいことが明らかになっている。この国の差別や抑圧の歴史と、それらが未だ根深く存在する現状を「消そうとする」、文学表現を通してそれらを伝えようとする人々を「黙らせる」動きとして、懸念の声は高まる。

公共図書館や公立学校の多くは、州など地方自治体からの予算で運営される。しかしだからといって、これらの場所を利用する全ての市民たちの「読む自由」「知る自由」は、「誰かの力」に制限されてよいのか。そして実情はさらに複雑である。一部の地方議員は、特定の書籍を禁じることを望む一部の人々の声を聞くことで、資金や支援を集める。つまりは政治利用されていると言える。それは公共図書館や学校教育の正しいあり方なのか。

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図書館で繰り広げられる、文化的争い

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私たちが住むニューヨーク州は、かねてから禁書に強く対抗してきた州の一つである。しかし、意思表明だけでは足りないほど、全米の禁書増加は顕著になっている。そこでブルックリン公共図書館は昨年から、同図書館所蔵デジタル書籍にアクセス可能な利用者カードを、居住地にかかわらず全米の若い希望者に発行している。読みたい本が自分の住む地域の図書館や学校から消えてしまった学徒を中心に、利用者は6000人を超える。

しかしながら、反差別教育に保守的な州の一つであるオクラホマ州では、とある教員がこのブルックリン図書館の情報を生徒にシェアしたことを理由に解雇された。このように、禁書の方針に従わない者を罰する、ようは「禁書を強化する」州は増えている。

まるで終わりのない追いかけっこのように、禁書に対抗する州は更に勢いを強める。イリノイ州やカリフォルニア州は、実質「禁書を禁じる」法案を進めている。幅広い知と教育への市民アクセスの保護がその軸にある。一見すると当たり前のことのようだが、今それが危機に瀕していることを、ひしひしと感じる。

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禁書されやすい本を読もう、そして話そう

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一般市民レベルでも、禁書に対抗する意思を行動に移す動きは見られる。ここ最近、LGBTQ+関連小説の売り上げがぐんと伸びているそうだ。単に人気であったり、図書館で借りにくくなり購入が増加した可能性はある。しかしそれより、禁書される書籍には「禁じられるワケ」があり、そういった本こそ読まれるべき、と関心がむしろ高まったり、禁書になった作品や著者を応援したい読者が増えているゆえの現象だと言われる。

昨今の禁書増加を危惧するならば、私たちにできることはある。公共図書館で利用者カードを作り(登録者数が増えるだけでも図書館の支援になる)、禁書されやすい本を借りる。または書店で購入する。その本や禁書そのものについて、周りの人たちと会話する。可能であれば、地域の議員にその声を届ける。

私たちが持つ「読む自由」「知る自由」は、民主主義の礎である。今私たちは、それを維持するよう努めなくてはいけない時を迎えているのだ。

 

COOKIEHEAD

東京出身、2013年よりニューヨーク在住。ファッション業界で働くかたわら、市井のひととして、「木を見て森を見ず」になりがちなことを考え、文章を綴る。ブルックリンの自宅にて保護猫の隣で本を読む時間が、もっとも幸せ。
ウェブサイト: thelittlewhim.com
インスタグラム: @thelittlewhim

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