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「ちゃんと曲の意味を理解して歌って!」指揮者の山内竜志(りゅうじ)さんが、メンバーに勢いよく声を掛ける。フィンランド第二の国歌とも呼ばれる合唱の代表曲、「フィンランディア」の練習が始まった。発音するだけでも難しいフィンランド語の曲を歌うのは、紐育(ニューヨーク)男声合
唱団のメンバーだ。ミッドタウンの練習室では新型コロナウイルス感染防止対策のため全員がマスクを付けて練習に臨んでいた。
1991年に創立された同団は、ニューヨークで唯一の日本人による男声4部合唱団だ。毎年12月に開催される定期演奏会に向けて、毎週金曜日午後7時からレッスンが行われている。例年は本番まで1年かけて準備するのだが、パンデミックの影響で2020年3月から練習が中止に。21年夏に再開されてからは、通常の半分の期間で仕上げなければならない状況だった。また団員には駐在員が多く、コロナ禍で帰任したメンバーも少なからずいたという。
この日は1カ月半後に迫った定期演奏会に向けて、プログラムの通し練習が行われた。合唱曲「いざ起て戦人よ」や、「春よ、来い」「冬のリヴィエラ」などなじみのJ-POPが続く。山内さんのオリジナル曲「帰郷」にも熱い指導が入る。「今の音、違うよ!」。鋭い指摘を投げ掛けることもあるが、うまく表現できた時は「Very nice! すごく良くなっているよ!」としっかりと褒めてメリハリをつける。ジョークを交え、和気あいあいとした雰囲気にみんなリラックスした面持ちで練習に励んでいた。
ベースの桶谷重成さんは、10年に入団したベテラン団員。「メンバーは駐在員が多いので毎年顔ぶれが変わります。その年によって合唱団全体のカラーも変わって面白いんですよ」と話す。時に厳しい指導の入る練習だが、初心者から経験者までさまざまなレベルのメンバーが分け隔てなく参加でき、みんな同じ目標に向かって活動できるのがうれしいとのこと。
トップテナーの平川正典さんは、20年1月に指揮者の山内さんから直接勧誘を受けて合唱団に加わった。しかし入団直後にパンデミックの影響で、練習が中止されることに。コロナ禍で感染防止に気を付けながらの練習再開となったが、山内さんのエネルギッシュな指導と情熱のこもった練習が、同団の魅力の一つだと話す。
同じくトップテナーの松崎春彦さんは、21年7月に入団した新メンバーの一人だ。パンデミックの影響で人と会う機会がめっきり減ったという松崎さん。合唱団の参加をきっかけに練習を通してメンバーとコミュニケーションが取れるのがうれしいとのこと。
年の瀬も押し迫る寒空の夜、厳かな教会で開催された定期演奏会。アットホームで温かい同団を物語る心のこもった演奏に、会場は大きな拍手で包まれた。
今週の先生
山内竜志さん
ニューヨークは文化の街であると同時に、さまざまなバックグラウンドを持った優秀な人たちの集まる場所でもあります。そんな街で家族同様に信頼できるメンバーと、同じ目標に向かって活動できるのが紐育男声合唱団です。遠く離れた母国の曲目を同じ境遇の人々と歌えるのも貴重な機会だと思っています。初心者も経験者も大歓迎。気軽に見学に来てください。
紐育男声合唱団
練習は毎週金曜日午後7時から9時まで、マンハッタンのミッドタウンにある練習室で行う。見学自由、いつでも入団可能。同団体に関する問い合わせや詳細は下記のメールアドレス、またはURLより。
【問い合わせ】
info@mgcny.net/mgcny.net
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