巻頭特集

ニューヨーク・メッツ大解剖!

先月21日、「2023 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の決勝戦でアメリカと対戦し、3対2で3度目の優勝を果たした侍ジャパンこと日本代表チーム。その興奮が冷めやらぬうちに、今後はメジャーリーグベースボール(MLB)が開幕。そこで今回はニューヨーク・メッツを特集。(文・取材/中村英雄)


球場での観戦をより楽しむメッツの魅力

先日、MLB史上初めて、ニューヨーク・メッツ(以下メッツ)が年俸総額3億ドル(約400億円)を突破し、今シーズンの年俸総額は3億3614万3332ドル(約448億円)に積み上がっていると報じられた。また、今年は日本から千賀滉大投手の加入もあり何かと話題のメッツ。本紙で「プロスポーツから見る経営学」を執筆中の中村武彦さんに、今年のメッツの見どころについて話を伺った。
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今年は、メッツに千賀滉大投手の加入により、楽しみが増えたのではないでしょうか? ここで千賀選手の成績などを説明するまでもないので割愛しますが、シーズンも長いですし、一年を通して応援していきたいものです。

メッツの本拠地といえば、2009年に完成したシティ・フィールドであり、クイーンズ区フラッシング・メドウズ・コロナ・パークに隣接しています。ニューヨークの名物と言えるこのスタジアムに足を運ばれた方も多いかと思いますが、メッツの選手がホームランを打つとホームラン・アップルが出現。球場の入り口には昔のシェイ・スタジアム時代に使用されていたホームラン・アップルが飾られており、地下鉄7番線のホームから降りてくると出迎えてくれ、フォト・スポットとなっています。

注目すべき今シーズンの
2つの見どころ

さて、今年MLBでは試合の進行速度を早めるためにベースのサイズが拡大されたり、投球までの時間に変更があったりと、いくつか大きなルール変更が話題になりました。同時に、シティ・フィールドでは観戦体験を向上すべく、大きな話題になっているものが二つほどあります。

一つ目は、球場内の超特大ビデオボードの出現です。試合のリプレーや、得点、さまざまな情報やエンターテインメントを映像で見せるLEDスクリーンがなんと17400平方フィートの特大なものになったのです。以前の約3倍の面積とのことで、これはスタジアム内での観戦体験を大幅に向上すること間違いありません。

二つ目は、ライトフィールドの中に新設された隠れバー「キャデラック・クラブ」です。人数限定のVIPセクションで、既に最前列の座席は年間で約2万5000ドルするものの完売しました。ここでは専用の駐車スペースに高級な飲食など付随してきます。特に人数が限定されているだけに、このセクションで観戦する人同士でネットワーキングしてもらおう、という狙いがあります。一方で、ニューヨークには約60万人いると言われる大学生をターゲットとして15ドルからのチケットの席も用意しています。

バラエティ豊かな
観戦体験を

スポーツビジネスの観点から解説をしますと、スタジアムに来場する人々は必ずしも野球ファンでなかったり、詳しくない人もおります。その人たちにも楽しんでもらえるように、そしてまた来てみたいと思ってもらえるように「観戦体験」を充実させることが大切になります。

また、高級なVIP席は個人がプライベートで使用するよりも企業がビジネスに使用することが多く、普通の味気ない会議室や、代わり映えしないレストランにクライアントと行くより、スポーツを通して一緒に感情移入したり、共有したり、一体感を醸成しながら商談などをするのに適しているといえます。もちろん未来のファンも育てる必要があり、大学生向けの特別チケットも用意しております。

在住者の中には、一度はヤンキース・スタジアムに訪れたことがあるという方が多いかもしれませんが、今年はメッツを観戦しにシティ・フィールドまで足を伸ばしてみるのも面白いのではないかと思います。

 

 

中村武彦さん

マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。
08年パンパシフィック選手権設立。
09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。
ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。
現東京大学社会戦略工学研究室共同研究員。
FIFAマッチエージェント。
リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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