アメリカでの健康と医療

第6回 在米日本人の皆さんが乳がん早期発見のためにできること

在米日本人の健康と医療をサポートする「FLAT・ふらっと」がお届けする連載。アメリカで健康な生活を送るために役立つ情報を発信します。


こんにちは、乳腺科医の田原梨絵です。新団体、FLAT・ふらっとでもこれまでと同様に、臨床アドバイザーとして皆さんの健康を支えていきますのでどうぞよろしくお願いします。

10月は乳がん月間です。今回は在米日本人の皆さんが、乳がんの早期発見のためにできることについて解説します。

日本人に乳がんが増加?

皆さんは日本人に乳がんが増加し続けていることをご存知でしょうか?次のグラフは1975〜2017年までの日本在住の日本人女性の乳がん年間罹患者数(新たにがんにかかる人数)、死亡者数の変化を表したものです。近年では年間約9万人が新たに乳がんにかかります。乳がんは年々増加傾向にあり、罹患数が40年間で約10倍に増えています。生涯の間に乳がんに罹患するリスクは、米国人が8人に1人であるのに対して、日本人は9人に1人です。以前は米国人と比較して日本人の乳がんは少なかったのですが、日本人の乳がんの増加とともに罹患リスクはほぼ同じ程度に近づいてきています。

乳がん検診は40歳から?

日本人の乳がんの発症ピークが40歳代から70歳代であるのに対して、米国人は60歳代以降の高齢者にピークがあります。日本では乳がんの発症が増える40歳代に合わせて、40歳以上の女性に2年に1回マンモグラフィ検査を受けることを推奨しています。米国では州や病院によってルールに違いがありますが、予防医学専門委員会からの提言で、乳がん検診開始の推奨年齢が2009年以降50歳とされていたのが、2023年5月に40歳に変更されました。年齢が早められた主な理由は、米国で若年の乳がんが増加傾向にあり、患者の6人に1人が40歳代であることです。そこで、40歳代の乳がんを早期発見するために検診開始の推奨年齢が早まりました。在米日本人女性の方も、40歳から乳がん検診を開始しましょう。また、乳がんの家族歴(血縁に乳がん罹患者がいる)があれば、遺伝子検査についての説明やカウンセリングが受けられますので、必ず医師に詳細を伝えてください。

ブレスト・アウェアネスとは?

私たちが乳がんの早期発見のためにできること、それは「ブレスト・アウェアネス」です。ブレスト(Breast)は乳房、アウェアネス(Awareness)は意識。自分の乳房の状態に日頃から関心をもち、乳房を意識して生活することを「ブレスト・アウェアネス」といいます。大切な生活習慣であるブレスト・アウェアネスには4つのアクションがあります。

自分の乳房の状態を知るために、日頃から自分の乳房を、見て、触って、感じる「乳房セルフチェック」。頻度としては月に1回程度がオススメ。

気をつけなければいけない「乳房の変化を知る」。しこりだけではなく、乳房の左右サイズの差・形の変化、突出したしこり、脇の下のしこり、皮膚のくぼみやひきつれ、むくみや赤み、乳頭の変形・へこみ、赤み・腫れ・ただれ・分泌物など様々なものがありますが、セルフチェックでいつもと違う変化がないかを確認する。

乳房の変化を自覚したら、次の検診を待たずにすぐに医療機関へ行く」。乳房の変化がある場合は検診ではなく、ただちに医療機関で診てもらう。

40歳になったら定期的に乳がん検診を受診する」。乳がん検診は症状がない方が対象です。39歳までは月に1回のセルフチェックを習慣づけ、40歳からはセルフチェックに加えて定期検診を受ける。

これらの4つのアクションを身につけ、「ブレスト・アウェアネス」をあなたの健康を守る新たな生活習慣にしましょう。

 

乳がん大事典【 BC Tube編集部】

有志の乳腺科医の集まりであるBC Tube編集部が、乳房や乳がんに関する正確な情報をYouTubeで発信中!www.youtube.com/@-BCTube

 

 

 

 


今週の執筆者

田原梨絵 乳腺科医、MD

「FLAT・ふらっと」乳がんプログラム臨床アドバイザー、一般社団法人BC Tube理事を務める、ボストン在住の乳腺科医、MD。ダナファーバーがん研究所研究助手、MDアンダーソンがんセンターのリサーチ・インターンを経験。

Instagram: @rie_tahara_breast.md


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「FLAT・ふらっと」は、乳がんと婦人科がんの患者、がん患者全般、高齢者、特別支援が必要な子どもを持つ保護者、介護者など、在米日本人の健康を、広い範囲でサポートする団体です。

Website: www.flatjp.org

Email: info@flatjp.org

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