日本にいる高齢の親の介護 あなたはどうする?

日本にいる高齢の親の介護 あなたはどうする?

介護のプロフェッショナルがアメリカ在住邦人に向けて、遠隔介護または親の介護とどう向き合っていくのかを紹介。


高齢の親の介護
一体いつまで続くの?

コロナが落ち着き、夏休みで日本に一時帰国する人が増える時期になりました。久しぶりに日本にいる高齢の親御さんに会う人も多いでしょう。高齢になると心身の衰えは誰にでも起こり、生活に支障が出てきます。日々の暮らしの中でケガや事故を未然に防ぎ、安全で安心な暮らしを続けていくには、早めに親の生活環境を整えることが大切です。今回は、日本に一時帰国したときに、高齢の親のために、これだけはやっておきたいことをご紹介します。

親の現在の状態を正確に把握する
カラダや認知症状、暮らしぶりを確認

高齢の親の介護。現在、ご家族で親の介護をしている人にとっては「こんな状態がいつまで続くのだろう?」「本音を言えば、しんどい」と思って当然。また、老いていく親の姿を見るのは切ないものです。ただ、介護は永遠に続くものではありません。今回は平均の介護期間とその捉え方をご紹介します。

介護は平均で「約10年」
介護は永遠に続くものではありません

厚生労働省のデータによると平均介護期間は男性で9・79年、女性は12・93年です。これらの数値は平均寿命から健康寿命を引いたものを平均介護期間と表しています。健康寿命とは介護が必要なく生活できる状態を表し、平均寿命から健康寿命を引くと介護が必要な期間が出てきます(※1)。また、生命保険文化センターの調べによると介護期間は4年7カ月となっています。こちらの調査は過去3年間に介護経験がある人に「どのくらいの期間、介護を行ったのか」(現在介護を行っている人には「介護を始めてからの経過期間」)を聞いたものになります(※2)。

米国からの遠距離介護で疲れ果てたAさん
在宅介護で頑張っているけれど

米国在住のAさんは日本で独り暮らしのお母様の遠距離介護を2年ほど続けています。公的介護保険の訪問介護サービスをフル活用して、食事や入浴の介助、お買い物など、日々の暮らしのサポートを取り入れています。しかし、最近はお母様に認知症状が出始め、公的介護保険のサービスでは間に合わないようになってきました。インターネットを駆使して、お母様が外出する前日に持ち物を一緒に準備したにもかかわらず、当日出かける直前に「あれがない。これがない。」と言い始めて、また一緒に探すことになったそうです。米国在住のAさんは時差もあるのでお母様の探し物に朝の4時まで付き合うことも。

そんな日々が続き精神的にも肉体的にも限界を感じられたAさんが、弊社団にご相談されました。そこで自治体や民間が行っている介護サービスを紹介し、将来的にはお母様の高齢者向け施設への入居を検討することでAさんの負担はかなり軽減されました。

「介護期間」とは親のことを知り
これからの自分の人生を改めて考える期間

先ほどの厚生労働省のデータでは介護期間は平均で約10年、別のデータでは約5年となっています。子供の成長は「日々できることが増えていく」ので嬉しく楽しいことです。ただ、高齢の親は老いと共に「日々できないことが増えていく」。例えば、目の衰えによって段差が分かりにくくなる、電球の取替えなど、高い所の作業ができなくなった。老人性うつによる頭痛やめまい、不安や焦燥感を感じたり、認知症の症状が出てくることも。

老いていく親の姿を目の当たりにすることは家族としてはやるせなく、切ない気持ちになります。ただ、「親は先を歩いて姿を見せてくれている」と捉えてみてはいかがでしょう。親はどのように産まれ、今までどのように生きてきたのか、これからどうしていきたいのか。親と子供が膝を突き合わせて話すことで、自分のルーツに触れることができ、これからの自分の人生を考える機会になると思います。

親と子供は別人格であり、別の人生があります。プロのチカラを最大限に活用して家族には家族にしかできないことをする。それぞれが悔いを残さないように生きていきたいですね。

(※1)厚生労働省「平成28年簡易生命表の概況」、「健康寿命の指標化に関する研究──健康日本21(第二次)等の健康寿命の検討──(平成27年度分担研究報告書)」
(※2)生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度

● ● ●

サロンドハースでは、日本への本帰国や日本にいる親の老後・介護問題、変化する日本の住宅事情、資金調達など、年々増える皆様の不安や疑問を共に考え、学び、安心に繋ぐためのセミナーを毎月レギュラーで開催しております。また、個別相談も実施していますので、ぜひ、ご活用ください。

 

横畠文美(よこばたけあやみ)

一般社団法人Hearth代表理事。国際介護アナリスト。
前職の㈱ベネッセスタイルケアにて新規老人ホームの立ち上げや広報等に携わる。
41歳の時に「世界のご高齢者の暮らし」をレポートしながら夫婦で7カ月間かけ世界一周。
訪れた高齢者施設は世界各国で200カ所以上、取材したご高齢者やご家族は2,000人を超える。
「介護を通じて日本と世界を幸せに」をモットーに活動中。


セミナー情報

今のうちに知りたい!親の介護×不動産セミナー

「介護にかかるお金」
9月20日(水)
午後10時~10時30分(EDT)
参加費: 無料

「米国でリタイアする時の資金計画」
9月28日(木)
午後9時~10時30分(EDT)
参加費: 10ドル
※参加者には後日、アーカイブと講師が使った資料をプレゼント。
※参加費は経費を除き、海外在住の子ども達やシニアの為に寄付します。

日本の介護・実家の処分、相続など各種相談はコチラまで!(初回相談無料)
一般社団法人Hearth(ハース)
総合窓口(日本)hearth777@gmail.com/81-90-1402-1738

公式LINE始めました。
最新情報をお届けします。

NYジャピオン 最新号

Vol. 1271

冬に飲みたくなる、贈りたくなる ウイスキー魅力再発見

ウイスキーといえば、近年ジャパニーズウイスキーが世界で注目を集め、希少価値も上がっているようだ。ウイスキーには、シングルモルトや、ブレンデッド、グレーンなど種類によって味が異なり、銘柄ごとの個性を楽しめるのも魅力だ。そこで今回は、ニューヨークでウイスキーの魅力を再発見してみよう。

Vol. 1268

ニューヨーカーも絶賛 日本人オーナーの古着屋さん

日本人ならではの感覚や知識、審美眼を活かしたビンテージショップが、ニューヨーカーや観光客から人気を集めている。おしゃれが楽しくなる秋、お散歩がてら出かけてみよう。