日本にいる高齢の親の介護 あなたはどうする?

日本にいる高齢の親の介護 あなたはどうする?

介護のプロフェッショナルがアメリカ在住邦人に向けて、遠隔介護または親の介護とどう向き合っていくのかを紹介。


介護、家族の役割とは?

「介護は突然やってくる」と言われますが、それは違います。誰もが高齢になると心身に衰えが出てきて、老いや介護はいずれ皆が経験することです。介護が必要になったらプロのチカラを最大限に活用して「決して家族だけで背負わない」。これは、とても大切なことです。家族には家族にしかできない役割があります。今回は親の介護が必要になったときの家族の役割についてご紹介します。

「家族はチーム」と捉えて。チームプレーで動き、リーダーを決める

厚生労働省のデータでは、平均の介護期間は男性が9・79年、女性が12・93年。これらを踏まえ、平均すると「介護期間は約10年間」と言われています。その期間、家族だけで親の介護をするのは無理です。ましてや、家族の誰かにだけ負担がかかるようになると、いざこざが起こります。

それぞれの家族には、「まだ子どもが小さいので手がかかる」「仕事が忙しくて時間が取れない」など、様々な事情があります。各家族の状況に合わせて、それぞれができることをする。そして、「家族はチーム」と捉えて、役割分担を決めましょう。その時に「リーダー(主介護者)」を決めるのがポイントです。家族間での情報の流れや外部の専門家とのやりとりなど、共有事項をお互いにスムーズにするのが「リーダーの役割」です。

日本で独り暮らしのお母様の超遠距離介護。負担が増えてきたアメリカ在住のAさん

アメリカ在住のAさんは、日本で独り暮らしのお母様の超遠距離介護を2年以上続けています。弟様は日本在住ですが、仕事が忙しく緊急時以外はお母様の対応ができる状況ではないようです。今はインターネットの環境が整っているので、お母様の毎月の支払いや年金などのお金の管理、宅配弁当の手配はアメリカ在住のAさんがインターネットを使って対応されています。ただ、半年くらい前からお母様に初期の認知症状が出始めたことにAさんは気づきます。

例えば、お母様が毎週注文している宅配食材の注文票を確認すると、トマトを20個、キャベツを10個と大量に注文していたり、今週の予定をすぐに忘れて何度も同じことを繰り返すようになるなど、短期記憶の障害が見えてきました。そこで、Aさんはお母様が注文している食材を毎日確認して注文をキャンセル。ネットスーパーに適量を届けてもらうように変更しましたが、毎日この作業をするには手間がかかり、時差の関係から睡眠不足や精神的な負担が増えてきました。そこで、今年の一時帰国の際に「お母様の施設探しをしたい」とご相談があり、お母様の新たな生活環境を整えるために一時帰国前から準備をしています。

親のこと、どれくらい知っていますか?「親の意思」を尊重して決めていく

子どもは親のことは知っているようで、あまり知らないものです。親の預金通帳や保険証書などの保管場所、経済状態も把握しておきましょう。また、親の好みや子どもの頃のことを聞いてみると親の違う一面が見えてきます。「お母さんが好きな音楽は?」「子どもの頃から大事にしている物は?」など。

これから親の介護が必要になった時には「親の意思」を尊重することが大切です。まだ元気なうちに親の話をじっくりと聞いておくことで、これから事が起こったときの家族の判断基準となります。例えば、「介護が必要になったらどこでどのような介護を望むのか」「他界後はどうしてほしいのか」など。子どもの意見を押し付けるのではなく、親には親の意思があり、親の人生があります。親子であっても「親と子どもは別人格であり、別の人生」があります。平均で約10年間という介護期間を家族同士がもめずに良好な関係を保つために、それぞれの意思を尊重して、お互いが納得できるより良い関係を築いていきたいですね。

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サロンドハースでは、日本への本帰国や日本にいる親の老後・介護問題、変化する日本の住宅事情、資金調達など、年々増える皆様の不安や疑問を共に考え、学び、安心に繋ぐためのセミナーを毎月レギュラーで開催しております。また、個別相談も実施していますので、ぜひ、ご活用ください。

 

横畠文美(よこばたけあやみ)

一般社団法人Hearth代表理事。国際介護アナリスト。
前職の㈱ベネッセスタイルケアにて新規老人ホームの立ち上げや広報等に携わる。
41歳の時に「世界のご高齢者の暮らし」をレポートしながら夫婦で7カ月間かけ世界一周。
訪れた高齢者施設は世界各国で200カ所以上、取材したご高齢者やご家族は2,000人を超える。
「介護を通じて日本と世界を幸せに」をモットーに活動中。


セミナー情報

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「日本の介護保険の使い方」

6月14日(水)
午後10時~10時30分(EDT)
参加費: 無料

「認知症&うつの予防!在宅介護のポイント」
6月22日(木)
午後6時~7時30分(PST)
参加費: 10ドル

※参加者には後日、アーカイブと講師が使った資料をプレゼント。
※参加費は経費を除き、海外在住の子ども達やシニアの為に寄付します。

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