心と体のメンテナンス

「死ぬまで元気」のための「5つのM」(前編)

健康寿命と「5つのM」
目指せ、ピンピンコロリ

 

Q. 健康寿命について教えてください。

A.

独立して生活することができ、支障のない日常生活が送れる期間を、健康寿命と言います。世界の男性の平均寿命は80歳、女性は86歳ですが、それに対して健康寿命は男性が71歳、女性が74歳と言われます。平均寿命と健康寿命のギャップは9年以上あり、これがなかなか縮まりません。

人間は皆、健康で長生きしたい、ピンピンコロリをと願いますが、それはつまり健康寿命をいかに伸ばすかです。米国の老年医学専門医が患者を診る際の指針に、「5つのM」があります。そこには老化防止のコツが詰まっているので、ぜひ多くの老若男女に知ってほしいと思います。

ウェビナー動画のリンクはこちらから

 

Q.「5つのM」とは何ですか?

A.

元気な高齢者になるための5つの因子であり、チェックポイントです。①Mobility(身体機能)、②Mind(精神、認知機能)、③Medication(薬)、④Multi-complexity(多様な疾病、社会的ニーズを持った状況で、それらをいかに予防していくか)、⑤Matters Most to Me(生きがい、価値観、治療目標)。

要は、体が思うように動き=①、気持ちも元気で=②、必要に応じて上手に薬と付き合いながら=③、病気を予防し=④、目標や生きがいを持って生きる=⑤、ということですね。

参考までに、高齢になっても元気な人、老化しにくい人には共通点があります。それは、男女ともタバコを吸わず、健康的な食生活と運動を習慣付けていること。詳しくは左上の表を参照してください。

 

Q. 「5つのM」①Mobility(身体機能):健康寿命を伸ばす運動 ・ 量は?

A.

患者さんからもよく聞かれますが、私は逆に「どんな運動なら続けられますか?」と聞くようにしています。運動はその種類や量よりも、継続して日常生活に取り入れることが重要だからです。

「死亡リスクの低減」のためには軽めのウォーキングを1日1万歩と言われる一方で、心臓学会は週3回1日50分の軽めの運動を推奨するなど、諸説あります。重要なのは、「ゼロ(全く運動しないこと)」から脱出すること。ちょっとでも生活に運動を取り入れ、継続的に行うことで、死亡リスクが大幅に低減することが分かっています。毎日50分が無理なら、週末だけでもいいのです。ただ、1、2週間やってやめてしまっては意味がありません。

 

Q. 「5つのM」②Mind(精神、認知機能):治る認知症がありますか?

A.

家族や友人が最近物忘れするようになったからと、認知症だからもう治らないと決めつける必要はありません。その原因によっては、症状を改善できます。

「治る認知症」の原因には、ビタミンB12/B1欠乏症、うつ病、薬剤性、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能低下症、ナトリウムやカルシウムの異常があります。私の患者さんでも、ビタミンB12を補充したことで物忘れが改善した人がいます。ちなみにビタミンB12欠乏症は、長期間胃薬や糖尿病の薬を飲んでいる人に起こりがちです。認知障害の初期段階で、なるべく早く検査を受け、その原因を知ることが大事です。

一方で、アルツハイマー病や脳血管障害、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症は治すことはできません。米薬品医薬品局(FDA)が年明け、アルツハイマー病新薬レカネマブを認可しましたが、治療の状況を大きく変えるものにはならないでしょう。(後編につづく)

 

 

 

 

 

 

山田悠史先生
Yuji Yamada, MD
_________________
米国老年医学専門医/マウントサイナイ医科大学老年医学・緩和医療科所属。
2008年慶應義塾大学医学部卒業。
東京医科歯科大学医学部附属病院などで研修。
15年からマウントサイナイ大学ベスイスラエル病院内科研修医。
20年から同大学病院老年医学フェロー。
22年から同大学アシスタントプロフェッサー。
著書に「最高の老後 『死ぬまで元気』を実現する5つのM」(講談社)。

 

Icahn School of Medicine at Mount Sinai
Brookdale Department of Geriatrics and Palliative Medicine
1 Gustave L. Levy Pl.
TEL: 212-241-6500

 

 

NYジャピオン 最新号

Vol. 1275

─ハワイ最新情報・前編─ 国内旅行で人気再燃 ハワイを満喫しよう

今年9月にアラスカ航空とハワイアン航空が統合し、ホノルルを第2の主要ハブとして確立させると発表。また、今年の国内旅行(*1)の人気ランキング第4位は、オアフ島が選ばれるなど今再び注目されている。小さな子供連れからシニア世代まで十分に楽しめるオアフ島を中心にハワイの魅力を特集してみた。来年春休みの旅先として計画してみては!(*1)U.S. News Travel調べ

Vol. 1273

トランプ大統領による新政権 第2章が遂に動き出す

米大統領選挙は今月5日投開票され、米東部時間6日午前5時30分過ぎに共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)の勝利が確実となった。一方、民主党候補だったカマラ・ハリス副大統領は6日午後、首都ワシントンで演説し敗北を認めた。支持者らに向け、理想のために戦うことを「決してあきらめない」よう訴え、「この選挙結果は私たちが望んだものではない」としながらも、平和的な政権移譲が必要だと強調した。1期目とは全く異なると言われるトランプ政権2期目の行方はいかに。

Vol. 1272

リトルポルトガル味めぐり

ニュージャージー州ニューアークはポルトガルからの移民とその子孫が多く暮らしていることで有名だ。今週は日本人の舌にも合うポルトガルの味を探訪、併せてリトルポルトガルの成り立ちにも迫る。