心と体のメンテナンス

認知症を理解する(後編)

認知症予防は健康管理から
食事、運動、ストレス解消

 

Q. 認知症は将来治せるようになりますか?

A.

現段階では、分からないとしか答えられません。認知症の半数を占めるアルツハイマー型の原因が解明されたのは1990年代後半と、つい最近です。アミロイドベータという老廃物が脳にたまることで、記憶障害などの初期症状が現れることが分かっています。

米食品医薬品局(FDA)が1月初旬、アミロイドベータを取り除く薬「レカネマブ」を認可したばかりですが、年末まで専門家の間で「まだ仮説の段階と言わざるを得ない」と言われていた研究分野です。新薬の効果に世界中が注目しています。

 

Q. 認知症治療に希望はあるのでしょうか?

A.

私はあると思っています。脳の状態がアルツハイマー病と確定診断されていても、死亡するまで認知症を発症しなかったケースが報告されています。したがって、病理的にはアルツハイマー病でも、認知症を発症させないようにする方法はあるのではないかとして、予防の研究も進められています。

私は個人的に、アミロイドベータをターゲットにした薬は、一つの治療アプローチとして価値があるものだと思います。認知症を治すというより、進行を止めるだけでも意味はあります。

現在アルツハイマー型とレビー小体型認知症の治療に用いられているアリセプト、ドネベシルなども、進行を遅らせる/止める目的のものです。これらの薬が開発されている間、「そんな薬を開発して意味があるのか」などいろいろ言われましたが、今は広く用いられ、認知症の患者さんとそのご家族の心の支えにもなっています。認知症の発症は高齢になってからなので、1年遅らせることができれば、大きな意味があるのです。

 

Q. 認知症の予防法はありますか?

A.

研究が進められている分野ですが、予防の完全方程式はありませんし、テレビで宣伝しているサプリを飲んだからといって予防できるものでもありません。

私は精神科医療の中でも老年精神科が専門で、臨床経験から実感したことですが、認知症の予防には、人と関わること、仕事を続けることが大事だということです。軽度認知障害(MCI=今週の英単語参照)の患者さんで、仕事をしている間は症状に進行が見られなかったのに、定年で引退してから進行するケースをいくつも見てきました。データはありませんが、私の治療経験から、仕事やボランティアなどで社会に貢献していくことで脳が活性化するのではないかと考えます。これは、認知症のタイプに関係なく言えることです。

それから、ストレスをためるとアルツハイマー型の原因であるアミロイドベータがたまりやすくなるので、リラックスすること、家族や友人と楽しく過ごすこと、よく寝ることはとても重要です。

また、認知症の初期には嗅覚が衰えるといわれます。嗅覚の維持には食事が大事で、バランスの取れた食事と、よく噛むことです。高血圧や高脂血症などの生活習慣病も認知症のリスクとして挙げられるので、結論から言うと、バランスの取れた食事をする、適度な運動をするなど、日々健康的な生活を心掛けることが、将来の認知症の予防につながるということです。歯科衛生も重要です。口腔から脳に良い刺激が行くといわれます。歯磨き、フロスを習慣化し、歯科健診とクリーニングを定期的に受けましょう。

 

 

 

 

 

 

吉田常孝先生
Tsunetaka Yoshida, MD
_________________
精神科医師、老年精神科医学指導医。
日本国外務省診療所勤務・診療所副所長。
2007年から3年間在ニューヨーク日本国総領事館で医務官として勤務。
その間ニューヨーク日系人会(JAA)高齢者問題協議会の活動にも参加し、高齢化する在米邦人コミュニティーの実態調査に尽力する。
NPOニューヨーク邦人医療支援ネットワーク(JAMSNET)の運営にも携わった。

 

日本厚生労働省日本厚生労働省
認知症施策ページ
www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html

 

 

               

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