究極の疲れないカラダ

いくら治療しても疲れやすさが消えない理由

日本でもアメリカでも、どれだけラクになったかを競い合っている治療院が多く見られます。じつは、わたしにとって患者さんがその場でよくなったかどうかはどうでもいい話です。

もちろん、直後によくなることがベストではあります。しかし、的確な診断と診療をおこなうのが医療であり、直後効果も正しい診断があってはじめてどの程度効果が出るか予測できます。

たとえば、寝違えによる首の簡単な筋肉損傷なら、2時間後に炎症のピークがきます。ですから、「今朝起きたら首が痛くて…」と、寝違えで訴えてきた人には「明日、明後日のほうがさらに痛むでしょう。でもそのあとは治まっていきます」と、痛いまま帰しても気にしません。しかし、2週間経ってもまだ強い痛みを訴えるようなら、診断が変わってきます。

5年後にどのくらいよくなっているかが、治療においていちばん大事なことで、そのためには、自分で自分の症状をコントロールできるようにならなければなりません。なぜ5年後かと言えば、症状の元には機能運動性の低下があるからです。 機能運動性を高め、維持できれば再発を防げます。

こうした考えのきっかけは、22歳のときに出会ったある歯科医師の方からの助言でした。

「虫歯治療は視力が落ちたときに眼鏡を出すような一時的な対処でしかありません。大切なのはこれから歯を守るために、歯茎のケアや正しい歯磨きを患者さんが継続できるかどうかなのです」

お話を聞いて、私たちの医療も痛みをラクにすることは治療の一環でしかなく、ほんとうの目的は根本原因を突き止めて、患者さんが将来痛みのない動けるカラダをつくることではないかと思いました。

また「60分でたった3000円!」と安さを売りに集客している治療院はニュー ヨークにも数多くあります。マッサージでもカイロでも、同じ値段なら時間の長いほうが安上がりでよいと思われがちです。

しかし、これは医療にはまったく当てはまらないと思っています。わたしのクライアントには時給換算すれば、1時間3000ドル超という人たちがいます。

先日も映画の撮影現場に招かれて、ある著名アーティストの方を治療しました。 部屋に入るなり「5分しかないのでよろしく頼む」とアシスタントの方に告げられました。そのくらい時間が惜しい人たちです。

これは時間に余裕のある人たちにとっても同じことです。最短で将来の健康を守れる治療こそ最高の医療です。その場でラクになった、長い時間をかけてもらったで満足することなく、5年後の機能回復をめざして、根本から原因を治す指導をしてもらってください。

不調を感じると病院へ行く。ところが、レントゲンを撮ってもらっても異常が見られず、原因がわからない。薬だけをもらって帰ってくる。

そこで「何もしてくれなかった」と不満を抱き、民間療法へ足を運ぶものの、日本では医師以外に診断できるライセンスがないため、「何が原因で、どういう治療をすれば、どのくらいで完治する見込みがあるか」が明らかにされないまま、 何年も治療院に通うことになる。周りもそうだから、いつかよくなるだろうと疑わない。こういう人たちを山ほど見てきました。

 

 

 

仲野広倫
Hiromichi Nakano, DC

創業大正15年、仲野整體4代目。
幼少の頃から自然医療に触れて育つ。
日本の実家で修行を経て、単身渡米。
南カリフォルニア健康科学大学(SCUHS)卒業。
2019年パンアメリカン競技大会、2021年東京オリンピックにアメリカオリンピックチーム(TEAM USA)に正式帯同した唯一の日本人。
カイロプラクティック認定スポーツ医(CCSP)、認定学位(DACBSP)、ストレングスコーチ(CSCS)等の学位を所持しそれらスポーツ医学の知識とトップアスリートの診療経験から筋肉骨格系の症状を根本的に治す『機能運動医学』を考案。
カイロプラクティック、整体等の様に姿勢、骨盤のズレなどの見た目問題ではなく根本的なカラダの『機能運動性』を自分自身で理解、改善することで健康を維持できると書いた出版書籍の『世界の最新医学が証明した 究極の疲れないカラダ』『根こそぎ疲れがとれる究極の健康法』は累計16万部を突破。
アメリカトップレベルのアスリート、著名人の診療にもあたり、現在もミッドタウンにて自らのクリニックTAI NYCにて日々の診療にあたる。


著名人からのコメント

・「仲野さんにはぼくもニューヨークで何度も救われました」坂本龍一さん(音楽家)

・「ピードを落とさず働くために最高のアドバイスが詰まった本」南壮一郎さん(株式会社ビズリーチ 代表取締役社長)

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