知っておきたい女性のヘルスケア

第16回 乳がん検診で「要精密検査」と言われたら

女性のがん患者に寄り添うジャパニーズ・シェアがお届けする連載。アメリカで暮らす女性に役立つ最新医療情報を発信する。


10月は乳がん月間です。今回は乳腺科医の田原梨絵が、乳がん検診で「要精密検査」と言われた場合、どのような検査をするのかについてご説明します。

多くの場合は
異常なし?

乳がん検診で要精密検査と言われた方のどれくらいが乳がんと診断されるかご存知ですか?

要精密検査のお知らせを受け取ってから、実際に検査を受け、最終的な結果が分かるまで、心配や不安で落ち着かない日々を過ごす方がほとんどではないでしょうか。中には、絶対に自分は乳がんだと思い込んでしまう方もいます。

一般の検診でマンモグラフィーを受けた人が1000人いる場合、要精密検査の通知を受け取るのはおよそ50人で、最終的に乳がんと診断されるのは約3人です。つまり、検診でマンモグラフィーを受けた方のうち、乳がんと診断されるのは約0・3%で、要精密検査となっても多くの方は「異常なし」なのです。結果を知るのが怖いからと放置せず、早めに医療機関を受診して検査を受けることが大切です。

代表的な検査

それでは精密検査とはどのような検査をするのでしょうか? まずは問診、視触診、マンモグラフィー、超音波検査が行われ、必要な場合に細胞診、組織診、MRIなどが行われます。乳がんの確定診断は一般に組織診で行われ、確定後は必要に応じてCTや骨シンチグラフィー、PET検査などで進行度を診断します。

問診…問診票での月経の状況や出産・授乳の経験、親族内がん経験者の有無などの質問は、乳がんにかかりやすいかどうかなど、乳がんのリスクを判断するために必要な情報です。自覚症状がある場合には、いつ気付いたか、気付いてからの変化、痛みを伴うかなど詳細を記入していただき、診断の参考にします。

視触診…視触診では、乳房に変形がないか、乳頭に湿疹や分泌物がないかなどを見て観察し、乳房に直接触って、しこりの場所、大きさ、硬さ、しこりの境目がはっきりしているかどうか、よく動くかなど、しこりの状態などを調べます。首や脇の下のリンパ節が腫れていないかどうかも触れて確認します。

マンモグラフィー…乳がん検診時の画像を、精密検査を行う病院で参照できない場合、あるいは追加の検査が診断に必要な場合には再度マンモグラフィーを行います。

超音波検査(エコー検査) …マンモグラフィーで要精密検査と判断された所見に該当する病変が乳房内にあるかどうかを調べます。病変があった場合には、その形や境目部分の性状などで、良性なのか悪性なのかを推測します。日本では精密検査の際に乳房全体の超音波検査を行いますが、米国ではマンモグラフィーで要精密検査となった部位のみを検査するのが一般的です。

細胞診および組織診(針生検)など…画像診断で良性か悪性かの区別がつかない病変や、がんを疑った場合には、乳房に細い針を刺して注射器で細胞を吸い出して採取する細胞診や、局所麻酔下でやや太い針を刺して病変の一部を採取する組織診(針生検/バイオプシー)などが必要になります。これらの検査で採取した細胞や組織を病理医が観察し、良性か悪性か、どのような病気によるものかを判断します。通常1〜2週間で結果が出ますが、確定診断のために数週間を要する場合もあります。

その他の画像診断…その他の画像診断として、MRI検査を行うことがあります。造影剤という検査薬を用いて乳房の病変を詳しく調べます。同検査は、乳がんであると判明した場合、乳房内での広がりを確認するために行うことが多いのですが、乳がんか否かの判断が難しい場合にも行うことがあります。乳がんと診断された後、必要に応じて、CTや骨シンチグラフィー、PET検査などで乳房以外の部位への病変の広がり(転移)を調べ、進行度(病期)を判断します。

参照:患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版

 

 

 

今週の執筆者

田原 梨絵
乳腺科医

Japanese SHARE臨床アドバイザー、一般社団法人BC Tube理事を務めるボストン在住の乳腺科医、MD。
ダナファーバーがん研究所研究助手、MDアンダーソンがんセンターのリサーチ・インターンを経験。
Instagram: @rie_tahara_breast.md

 

 

 

●ウェビナー●

「知っておきたい! 乳がん 検診後の精密検査」

10月29日(土)午後8時〜9時30分開催!

乳房・乳がんに関する動画を作成、発信しているYouTubeチャンネル「乳がん大事典【BC Tube編集部】」(bc-tube.com)の伏見淳医師と田原梨絵医師が登壇。乳がん検診で要精密検査となったらどのような検査をすべきか、どのようなことがわかるかについて講演する。参加方法と詳細は以下のページを参照。

URL:https://sharejp.org/schedule/2022/10/29

 

Japanese SHAREは、アメリカに住む、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がんの患者さんを日本語でサポートする非営利団体です。
TEL:347-220-1110(日本語ヘルプライン)
Email: admin@sharejp.org
Web: sharejp.org

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。

Vol. 1243

お引越し

新年度スタートの今頃から初夏にかけては帰国や転勤、子供の独立などさまざまな引越しが街中で繰り広げられる。一方で、米国での引越しには、遅延、破損などトラブルがつきもの、とも言われる。話題の米系業者への独占取材をはじめ、安心して引越しするための「すぐに役立つ」アドバイスや心得をまとめた。