究極の疲れないカラダ

なぜ何もしていないのに疲れるのか?〈その1〉

「何もしていないのに、すぐ疲れてしまう…」という人は、赤ん坊が立つのにどれだけの年月がかかるかを考えてみてください。よい姿勢を保つだけでも私たちはポステリアチェーン(カラダの後ろ側の筋肉)をフルに使っています。

姿勢が悪くなると臀筋を鍛えろと言われるのも、大殿筋、ハムストリングス、内転筋といった筋肉が最初のディフェンスだからです。

もし臀筋が弱り硬くなって動かなければ、あとは背骨まわりの脊柱起立筋が背骨を支えるしかなくなります。しかし、脊柱起立筋は小さな筋肉で鍛えるのは困難です。

筋力がなくなれば自分のカラダを支えられなくなります。腰が前傾し、ひざから曲がって猫背になります。最初は意識すれば自力でよい姿勢に戻ることができます。ところが、長年悪い姿勢のままだと、いくら力を込めてよい姿勢をつくろうと思ってもできなくなります。カラダも疲れやすくなります。

筋力がないと重力による負荷で、筋肉がしだいに硬く癒着していきます。すると筋肉のパフォーマンスを出せなくなる。つまり弱くなります。筋肉による支えがなくなった関節は負荷がかかって、可動域が狭くなります。典型的には、あぐらがかけなくなったりします。

開脚や股割りでなんとか股関節の可動域を出そうとするものの、すでに筋肉の故障から関節の故障へ進行している可能性があるので、軟部組織のリリースをしなければなりません。レントゲンによる的確な診断も必要です。関節が硬いから、ストレッチするのは根本的に間違いです。

関節の故障も初期は軽度の痛みですみます。ただ、機能運動性を高めなければ徐々に関節が老朽化し、変形を起こします。変形性関節症がひどくなると基本的には手術でしか治りません。骨を切り取って新しい人工関節を入れる大がかりなものです。

股関節やひざは、最新の手術で予後もよくなっているものの、首や腰の痛みの原因になりがちな背骨は脊髄が通っているため、人工関節に取り替えるわけにはいきません。予後も股関節やひざと比べてよくありませんし、脊髄は脳の一部であり、非常にデリケートな場所なので手術のリスクも大きくなります。

「首に痛みがあり、今は手のしびれる感じるようになった」「腰が痛くて、最近はひざまで痛くなった」「背中が伸びにくく、倦怠感やだるさが取れない」「がに股やO脚になってきた」

これらはすべて機能障害が進行した一例です。腰から股関節、ひざまで痛いとさまざまな場所が故障するのは、全体の機能運動性が落ちているからであり、「足の捻挫」など一過性の怪我とはわけが違います。若いころの痛みは放っておけばそのうちよくなったかもしれませんが、慢性の痛みはまったく別物です。

痛みのある人は「痛くて運動したくない、できない」となりがちです。ただ、どれだけ休んでも回復しません。我慢したり、放置するほど悪化します。(次号につづく)

 

仲野広倫
Hiromichi Nakano, DC

創業大正15年、仲野整體4代目。
幼少の頃から自然医療に触れて育つ。
日本の実家で修行を経て、単身渡米。
南カリフォルニア健康科学大学(SCUHS)卒業。
2019年パンアメリカン競技大会、2021年東京オリンピックにアメリカオリンピックチーム(TEAM USA)に正式帯同した唯一の日本人。
カイロプラクティック認定スポーツ医(CCSP)、認定学位(DACBSP)、ストレングスコーチ(CSCS)等の学位を所持しそれらスポーツ医学の知識とトップアスリートの診療経験から筋肉骨格系の症状を根本的に治す『機能運動医学』を考案。
カイロプラクティック、整体等の様に姿勢、骨盤のズレなどの見た目問題ではなく根本的なカラダの『機能運動性』を自分自身で理解、改善することで健康を維持できると書いた出版書籍の『世界の最新医学が証明した 究極の疲れないカラダ』『根こそぎ疲れがとれる究極の健康法』は累計16万部を突破。
アメリカトップレベルのアスリート、著名人の診療にもあたり、現在もミッドタウンにて自らのクリニックTAI NYCにて日々の診療にあたる。


著名人からのコメント

・「仲野さんにはぼくもニューヨークで何度も救われました」坂本龍一さん(音楽家)

・「ピードを落とさず働くために最高のアドバイスが詰まった本」南壮一郎さん(株式会社ビズリーチ 代表取締役社長)

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