知っておきたい女性のヘルスケア

第14回 日本で人間ドックを受診する際の注意点

女性のがん患者に寄り添うジャパニーズ・シェアがお届けする連載。アメリカで暮らす女性に役立つ最新医療情報を発信する。


「日本に一時帰国した時に受けた人間ドックの結果が、アメリカに戻ってから『要再検査』とわかったのですが、どうしたらよいのでしょうか?」 。このような相談が、当団体のヘルプラインによく届きます。

日本へ一時帰国した際に、人間ドックを受ける方は多いのではないでしょうか。中には、日本で人間ドックを受けているからアメリカの医療機関で診てもらう必要はない、と考える方もいるようです。人間ドックは、総合的な検診を1度に受けられる、患者にとっては大変便利な日本ならではのシステムですが、実は注意点もあります。

今回は、アメリカから日本への一時帰国中に人間ドックを受ける場合と、持病のある方がアメリカへ引っ越しされる場合に気を付けていただきたいことを取り上げていきます。

日本で人間ドックを受ける場合

日本で受けた人間ドックの結果を米国に戻ってから知った場合、直面する問題がいくつかあります。乳がんを例に挙げましょう。「マンモグラフィーの画像に何か怪しい影があるようだ」と言われたとします。この情報だけでアメリカの乳腺専門医に再検査をしてもらおうとすると、医師は必要のない検診で患者の健康に悪影響を与えることを恐れるため、日本からそのマンモグラフィー画像を取り寄せるよう促します。

アメリカの場合、18歳以上の患者の検診結果や画像、病理レポート(病理診断報告書)は、患者自身のものとされ、病院は本人の要求に応じてそれらを提出する義務があります。しかし日本では医師や病院のものとなるため、患者に渡すことを拒否しないまでも、料金が発生したり、本人への手渡しのみ許していたりすることもあるようです。一般的には日本の家族が取りに行き、アメリカに住む当人に郵送するケースが多いのですが、患者本人は、これらの画像や病理レポートが届くのを再検査の不安を抱えながらじっと待たなければなりません。

また、病理レポートは英訳したものが必要となります。大都市の病院であれば、ほぼ問題なく対応してもらえるものの、地方の病院では翻訳ができないために対応できないと言われることもあります。日本から画像も病理レポートも入手できなければ、医師に予約を入れることさえも難しくなります。

持病がある人が来米する場合

持病があって来米する方は、日本で処方されていたのと同じ薬をアメリカでも処方してもらえると単純に考えているかもしれません。しかし、アメリカの医師は本当にそれを処方しなければならない症状があるのかを見極める必要があります。そのため、薬が処方された経緯を示す病理レポートや画像を日本から取り寄せなければならず、もちろん英訳も欠かせません。日本語で書かれた薬がアメリカではどんな名称で呼ばれているのか、分量はオンスなのかグラムなのかなど、詳細な情報がそろって初めて、アメリカの医師は薬を処方できるわけです。

コロナ以降、それまでのように一時帰国の際に人間ドックを受けたり、持病の薬を処方してもらうために帰国することが気軽にできなくなってしまったという方もいるのではないでしょうか。特にパンデミックの間は、一時帰国どころか、必要な書類や画像を日本から入手することさえも困難な状況でした。そのため、アメリカで初めて医師に予約を入れることを余儀なくされ、右往左往する患者さんからの相談もたくさんありました。

これから一時帰国の際に人間ドックの受診を考える方は、日本滞在中に結果を受け取れるタイミングで予定を組むようにすると良いでしょう。また、持病のある方が日本からアメリカに引っ越しする場合は、過去3年分の画像と病理レポートの英訳を持参することをおすすめします。そして、アメリカで早めにかかりつけ医を見つけ、自分の健康状態や病歴を記録しておいてもらえるようにしてください。そうすれば。いざという時に慌てることを避けられるかと思います。

 

 

 

今週の執筆者

ブロディー 愛子
Japanese SHARE 代表

2001年に乳がんを経験。
13年より米国非営利団体「SHARE Cancer Support」に日本語プログラムを設立。
これまでにサポートした日系人の数は2000人を越える。
ICF認定ライフコーチ、アーキタイパル・コンサルタントとしても活躍中。
alliswellcoaching.com

 

 

 

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TEL:347-220-1110(日本語ヘルプライン)
Email: admin@sharejp.org
Web: sharejp.org

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