心と体のメンテナンス

月経とホルモンと女性の健康(前編)

年齢で変わる月経パターン
自分にとっての正常とは?

 

Q. 若い女性の月経トラブルとは?

A.

20代から40代半ばの女性で最も多いのが過多月経です。通常、月経は5〜7日続き、2、3日目が出血量の多い〝重い日〟ですが、過多月経の場合は、重い日に大量出血し、レバー状の血液の塊がたくさん出るパターンもあれば、重い日が長く続くパターンもあります。

次いで多いのが、月経周期が安定しない不定期月経、いわゆる不正出血です。月経痛やPMS(月経前症候群)を主訴に受診される人は、実はあまり多くありません。こちらから根掘り葉掘り聞いて初めて「実は痛み止めをいつも飲んでいて…」という患者さんが多いです。「痛いのは仕方ない、普通だ」と自分に言い聞かせ、我慢する人が多いようです。産婦人科医師の立場から言うと、何が「普通」で、何が「普通でない」のかを自己判断せず、少しでも気になることがあれば相談してほしいと思います。

Q.「正常な月経」は、年齢で異なりますか?

A.

その通りです。10代初期の初潮から50代で閉経するまで、ホルモンの変化とともに、月経パターンも変わっていきます。20〜30代は周期の安定期ですが、妊娠、出産、授乳でまた月経パターンが変わりますし、ホルモンバランスも個人によって違うので、何が正常かは分かりづらいと思います。現代に生きる忙しい女性たちは、「今の自分の年齢で何が正常なのか」が分からないままに、おかしいなと思っても我慢したり、見過ごしたり、自分で対処しようとする傾向にあると思います。

今回このコラムで多くの女性に伝えたいことは、「今の自分にとって何が正常かを知り、その時々に適切に対処するためにも、定期的な婦人科検診を受けましょう」ということです。

 

Q.  過多月経の原因と、検査、治療法は?

A.

原因は人それぞれ、ケース・バイ・ケースですが、大きく分けると解剖学的な原因と、非解剖学的な原因があります。ポリープや子宮体がん、子宮筋腫、子宮腺筋腫症などが解剖学的原因。対して、血をサラサラにする薬を飲んでいるとか、出血障害、ホルモンバランスの異常などが非解剖学的原因です。

ポリープや子宮体がんの有無は、超音波、組織検査、子宮内視鏡で確認が可能です。それらの結果を踏まえ、年齢なども考慮に入れ、治療方法を決めます。例えば良性の子宮筋腫なら、出血の量や、これから妊娠出産を計画するかしないかなど、さまざまな条件を踏まえて治療法を決めます。主な治療法は出血を抑えるためのホルモン治療ですが、必要に応じて手術もあり得ます。

 

Q. 不正出血について教えてください。

A.

これも年齢によって異なります。初潮が始まると、定期的に脳が卵巣に、卵巣が子宮に指示を出すことで生理が起こりますが、このプロセスが10代は安定していないので、月経周期が不定期になることがあります。逆に更年期には、女性ホルモンの減少が理由で閉経に向かうため、月経周期が不定期になります。閉経前の不正出血は別の意味を持つことがあるので、後編で説明します。

気を付けたいのは、20〜30代の「月経周期の安定期」に起こる不正出血です。生理が毎月来ないとか、不正出血がある場合は、原因を突き止め、治療する必要があります。

原因として多いのは、多のう胞性卵巣症候群です。卵巣にシスト(のう胞)ができる病気で、無排卵の原因になり、不妊も引き起こします。(後編に続く)

 

 

 

 

澤井未央先生
Mio Sawai, MD
_________________
産婦人科医師。
大阪出身、関西医科大学卒業。
日本で臨床研修終了後に来米し、米国の医師免許取得。
コーネル大学NYプレスビテリアン病院の産婦人科感染症部門での研究を経て、コネティカット州ブリッジポート病院でレジデンシー修了。
現在「NY Midtown OB/GYN」で一般産婦人科医として勤務。ニューヨーク市内レノックスヒル病院で分娩、腹腔鏡/ロボット手術を行う。

 

 

NY Midtown OB/GYN
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