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随分昔ですが、印象に残っているケースが一つ。「ここ数日胃が痛くて、兄が胃がんだったので心配です」と、みぞおちの痛みで来院された50代の男性がいました。ゴルフが好きで、「数日前セミプロとプレーしたので体も痛い」と、胃痛とは別に、“ちょっとした自慢話”のつもりで話していかれました。実はこの方、数日後に体の左側に疱疹が出たと再来院され、帯状疱疹の前兆の痛みだったことが後で判明。
ゴルフの“ちょっとした自慢話”を、胃痛と関係ないと思い込んだことを反省しました。どんな痛みなのか、どこが痛むのかを聞き、胃痛と体の痛みとが同時に起こるという特徴を、最初の来院で察知できていれば、帯状疱疹の皮膚病変が現れる前に、抗ヘルペスウイルス剤の処方で早めに治療できたかもしれません。
また、前回も触れましたが、心筋梗塞や狭心症など心臓からくる痛みを「胃が痛い」と訴える人は本当に多いのです。命に関わることなので知識として持っておいてほしいと思います。
憩室とは、腸壁が外側に風船のように飛び出した状態のことで、憩室炎とはそこが炎症を起こした状態です。腸壁は、外側の膜、筋肉、粘膜などが層になってできていますが、年を取ると筋肉層に裂け目ができ、そこから粘膜が外側に飛び出してできるのが憩室です(イラスト)。
一つではなく複数できるのが普通で、中には何十個とできる人もいます。大腸内視鏡による観察で、60歳以上の2人に1人が憩室を持っているといわれます。ただ、憩室は何ら悪さをするわけでもないので、大腸がん検診で憩室が発見されても、痛みがなければ治療はしません。がんに発展することもありません。医師から「憩室があるから、今後腹痛が起こったら憩室炎かもしれない」といった注意を受ける程度です。
憩室炎は、虫垂炎よりも頻繁に起こり、50代以降に増えます。風船状に飛び出た穴に便などが溜まり、そこに菌が付着して炎症を起こすと、その部分が腫れて痛みを起こします。炎症部分から出血し、血便が出ることもあります。
憩室炎はひどい腹痛を伴うことも度々ですが、ほとんどは抗生物質で治ります。あまりにも頻繁に炎症を繰り返す場合や、憩室が破れて便が腹部に漏れ出し、重度の炎症に発展するなどの場合は、手術になるケースもあります。
果物の種やナッツなどが憩室に詰まることが原因だと長年信じられてきましたが、5万人の食生活パターンと憩室炎を分析した結果、種やナッツを食べていた人の方がかえって憩室炎は少なかったそうです。医学の世界では、長年信じていたことがしばしば覆されます。
どちらも右下腹部痛を生じる代表的な疾患ですが、虫垂炎は吐き気を伴うことが多いのに対し、憩室炎は吐き気がないのが特徴です。吐き気は小腸がまひすることで起こります。虫垂炎は小腸に密接しているため、虫垂の炎症が小腸に波及してまひし、吐き気を起こすのです。
腹痛は、人間生きていれば誰でも数え切れないほど経験しますが、中には看過すべきでない腹痛があります。単なる胃腸炎は腸の蠕動(ぜんどう)に伴って痛みが波打ちますが、持続性の痛みだと危険な病気の可能性が高まることを知っておくと良いでしょう。
桑間雄一郎先生
Yuichiro Kuwama, MD
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内科専門医師(Board Certified)。
東京海上記念診療所院長、マウントサイナイ医科大学内科准教授。
東京大学医学部卒業後、腫瘍血管外科勤務を経て来米、ベス・イスラエル病院で内科研修を修了。
東大医学部非常勤講師、日本医師会総合政策研究機構・主任研究員などを歴任。
著書に「裸のお医者さまたち」(ビジネス社)、「極論で語る総合診療」(丸善出版)など。
東京海上記念診療所
Mount Sinai Beth Israel
Japanese Medical Practice
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(bet. Park & Madison Aves.)
TEL: 212-889-2119
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