心と体のメンテナンス

パンデミックによる体の不調と対策(後編)

鍼のツボは天然の鎮痛剤
気血の流れ整え痛み緩和

Q. パンデミックによる体の痛みの鍼(はり)治療例をご紹介ください。

A.

53歳の女性が、パンデミックで自宅待機が始まってから半年後に、重度の腰痛と頭痛を訴えて来院しました。「いろいろ心配してストレスがたまり、睡眠不足になり、眠れなかった翌日ほど痛みがひどい」ということでした。

東洋医学の「痛み」は、「気血」の流れが滞り、陰陽バランスが崩れた状態です。この女性は、パンデミックで精神状態が変化したことで、「気」の流れが滞り、その弊害が頭痛・腰痛という「体の痛み」となって現れた典型的なケースでした。

まず週に2回鍼治療に通ってもらい、ストレスを緩和するツボ、血の循環を良くするツボ、そして慢性疲労などを緩和する一種の万能ツボである「足三里」(両膝下から指3本分くらいの位置)に鍼を打ち、クリニックでの治療中はゆっくり休み、リラックスしてもらいました。1カ月たったころにはストレスが緩和され、精神が安定してきました。そうすると夜眠れるようになり、頭痛と腰痛もほとんど治まり、その後はメンテナンスのために月1回通ってもらっています。

東洋医学の「経絡」は、近年西洋医学分野でも研究が進み、ハーバード大の研究者が「解剖学的に経絡が存在すること」を医学雑誌「Nature」で発表している

 

Q. 鍼のツボについて教えてください。

A.

鍼のツボは、体が備え持つ天然の鎮痛剤です。ツボを刺激すると、エンドルフィンなど体の鎮痛物質の分泌が促されるので、痛みの緩和に即効性があるのです。治癒の促進効果もあります。

私は西洋医学の内科専門医でもあります。鍼によるツボの鎮痛効果は科学的にも証明されており、単に「東洋医学の考え方」ではなく、至極科学的な事実であることを知ってほしいと思います。

 

Q. 鍼のツボと「経絡」との関係は?

A.

東洋医学の重要な概念の一つが「気血」です。気血とは、一般的にエネルギーと理解されています。その気血の流れる通路が「経絡(けいらく)」で、体の健康ネットワークのようなもの。胃経、腎経など、全身に12本の特性を持った流れがあり、その経絡上の要所に約360のツボ「経穴(けいけつ)」が存在します。

西洋医学では、「経絡」が解剖学的に人体構造として実在するかについては、まだ完全に証明されていません。しかし、すでにハーバード大学の研究者が医学雑誌「ネイチャー」で、経絡は存在するとの研究結果を発表しています。

鍼は、この経絡上にあるツボを刺激することで、気血の循環を促し、陰陽バランスを整え、気を強化し病原体を取り除く治療法です。パンデミックによって、オピオイド系鎮痛剤の乱用が増えましたし、クリニックでのセラピーが一時受けられなくなり、生活が一気にバーチャル化してしまいました。人間にとって大きな精神的、身体的な負担になり、それが気血の流れを滞らせたとしても全く不思議ではありません。

鍼治療のコンセプトは至ってシンプル。リラックス効果もあり、体の痛みの緩和に適した治療法であることを、広く知っていただけるとうれしいです。

 

Q. カッピングやモグサ治療、耳の鍼治療もされますか?

A.

カッピングは人気のある治療法で、薬物に対する解毒作用はありませんが、体の悪血の解毒に効果があります。耳の鍼治療は薬物の解毒効果が高く、薬物中毒や禁煙治療に適した方法です。モグサは鍼同様に、ツボの上に置いて気の流れを良くし、免疫力を上げる効果があります。アメリカではオンラインで類似品が出回っているので注意してください。

 

 

 

 

 

 

リシェン・マ先生
Risheng Ma, L.Ac, Ph.D, MD
_________________
鍼灸師(Board-certified)。
New York College of Traditional Chinese Medicine (NYCTCM)卒業、鍼灸免許所得。
中国の医師免許を持ち、山西医科大学病院で内科専門医として勤務後、スイスのチューリッヒ大学で薬学研究員に。
マウントサイナイ病院アイカーン医科大学では7年間講師を勤めた。
西洋・東洋医学の学術/臨床経験を併せ持つ。
2021年から石谷ヘルスセンター勤務。

Ishitani Health Center

1600 Parker Ave.
Fort Lee, NJ 07024
TEL: 201-302-9993
ishitaniHealth.com
ishitaniclinic.com(日本語)

 

 

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