意外に完治ま&#
女性のがん患者に寄り添うジャパニーズ・シェアがお届けする連載。アメリカで暮らす女性に役立つ最新医療情報を発信する。
今回は、婦人科がん専門医の立場から、女性の命を守ることと同時に男性の命を守ることにもつながるがん予防のトピックを、Japanese SHAREの臨床アドバイザーでもある鈴木幸雄が執筆いたします。
HPVワクチンとは、ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus)の感染を防ぐワクチンです。HPVは主に性交渉によって感染し、がんの発症や性感染症につながります。ほとんどの人は一生に一度感染し、一部で持続感染状態(基本的に無症状)となり、健康に影響を及ぼします。日本ではがんを発症しやすい16型・18型、尖圭コンジローマというイボを作る6型・11型の4つを予防する「4価ワクチン」が主流です。16型・18型のみの「2価ワクチン」も同等の予防効果があります。
米国ではこの4型に加え、がん発症のリスクの高い別の5型を組み込み、より効果が高いとされる「9価ワクチン」が主流ですが、日本ではまだ無料接種の対象外です。
ワクチンで防げるがん
2010年頃から始まった、子宮頸がん検診とHPVワクチンによる予防プログラムにより、多くの国で前がん状態の減少が示され、がんの予防効果もきちんと示されるようになりました。いち早く開始した豪州では、28年までに子宮頸がんの制圧を見込むことを発表しました。
米国では、男性の中咽頭がん患者が女性の子宮頸がん患者数を上回り、男性にとっても切実な健康問題となっています。他には肛門がんなどもHPVが原因となります。HPVは男女共に注意すべき発がん性のウイルスであり、米国を含む多くの国で、男女共にワクチンの接種対象になっています。
さて、子宮頸がんについて改めておさらいすると日本では年間1万1000人の新規患者(がんになる手前の状態である「上皮内がん」も含むと約5万人)がいる子宮の入り口(頸部)にできるがんで、40歳までの若い世代の男女がかかるがんの約半分が子宮頸がんです(上皮内がん含む)。
原因の99%はHPVで、一次予防(病気を未然に防ぐ)が可能ながんです。二次予防(早期発見)のための子宮頸がん細胞診やHPV検査も確立されており、定期検診で早期発見することも可能ですが、検診で見つかりにくいタイプも3割弱ほどあるため、ワクチンと検診のコンビネーションが重要です。
打つタイミングは?
HPVワクチンが推奨されるのは、日本では主に12〜16歳の女児、米国では9〜14歳の男女児であり、「性交渉を持つ前の接種」が大切です。接種回数は、日本は3回ですが、米国も含む世界基準は2回(半年間隔)で、米国では対象年齢の約65%が少なくとも1回の接種をしていますが、日本では推奨がストップしていたため約1%にも満たない状態が長らく続いていました。最近では対象世代の接種率が10%を超えてきていると予測されています。1年半ほど前に私が行った調査(約2200人)でも8%程度でした。
対象年齢児のいるご家庭は、在米中にHPV関連がん予防効果が90%以上期待される9価ワクチンを接種しておくのも選択肢です。「接種は子供の意見を重視」と言う親御さんもおられますが、リスクベネフィットの意思決定を委ねるのは簡単ではありません。やはり、親の考えが大切になってきます。わが家でも対象世代の娘に接種を開始しました。
さて、コロナ禍で受診控えも問題になってきている中、改めて予防医療がご自身やご家族を守る大切な手段であることを今一度お伝えしたいところです。
今週の執筆者
鈴木 幸雄
婦人科腫瘍専門医
医学博士。
婦人科腫瘍専門医、産婦人科専門医・指導医。
Japanese SHARE臨床アドバイザーを務める。
これまで多くの子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん患者における手術、化学療法を担当。
現在はコロンビア大学メディカルセンター産婦人科博士研究員として臨床研究に従事。
sharejp.org/dryukiosuzuki
●ウェビナー●
子宮頸がんとHPVワクチン
1月29日(土)
午後8時〜9時30分開催!
今回のコラムを執筆された鈴木幸雄医師、みんなで知ろうHPVプロジェクト「みんパピ!」(minpapi.jp)の木下喬弘(たかひろ)医師と三ッ浪真紀子医師、ジョージタウン大学産婦人科レジデントの安川茉弥医師を迎え、HPV感染症、子宮頸がん、HPVワクチンについて講演。HPVワクチン接種対象世代の子供を持つ保護者必見! 参加無料。
参加方法と詳細は下記ウェブサイトをチェック!
https://sharejp.org/schedule/2022/1/29
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