心と体のメンテナンス

ベビーブルーと産後うつ(後編)

サポートシステムを構築
頼り上手で産後うつ撃退

Q.ベビーブルーと産後うつ予防のためのアドバイスを。

A.

予防に直結するかはわかりませんが、サポートシステムを持つことは極めて重要です。私が2020年夏に出産したときは、産後3カ月で職場復帰しましたが、パンデミック中だったのでデイケアに預けることに少し抵抗がありました。その際、旧知の先輩ママに赤ちゃんの世話を頼み、要所で助言をもらい、本当に助かりました。先輩ママからじかに聞く情報は、ネットで検索する情報よりもずっと役に立ちます。何より私の子育てに関する不安を言葉にして伝えることは、一種セラピーのような効果がありました。先輩ママを頼ることはとても大切だと思います。

次に、妊娠中から育児・家事分担について夫・パートナーと相談し、決めておくことも大事です。分担が難しいなら、ヘルプを雇うとか、食事は今流行りの食事配達サービスを試すなど、具体的なプランを立てておきましょう。

さらに言えば、夫・パートナーが掃除や洗濯、料理・片付けをする場合、仮にその〝雑さ〟が気になってもできるだけ文句を言わないこともカギです。心を広く持って、多少のことには目をつむり、家事分担する夫・パートナーに感謝の気持ちを持ちましょう。

Q. ベビーブルーと産後うつの治療方法は?

A.

軽症から中等症ならカウンセリングのみで、中等症から重症なら抗うつ剤とカウンセリングを組み合わせると、効果があるとされています。

私は、まずはカウンセリングでしっかり患者さんの話に耳を傾けます。患者さんの多くは、「母とは、全てを犠牲にして子供に尽くすべきもの」といった母性愛神話に重圧を受けています。そのために感じる不安や怒りといった感情を言葉にして吐き出し、誰かにありのままを聞いてもらうことで、気持ちが楽になるものです。夫・パートナーのカウンセリング参加も、治療を成功させるための重要なファクターです。

ただ、それでも症状が悪化していると判断した場合は、医師の介入による薬物療法で、まずは状態を安定させることが必要になります。授乳中でも安全に投与できる抗うつ剤があるはずですが、母乳の量が減るといった副作用が起こることもあります。それでも、投薬のリスクとベネフィットを比べた場合、ベネフィットの方が大きいと判断されたなら、自分と赤ちゃんの健康のために投薬治療を始めるべきでしょう。

カウンセリングや精神科の治療は、産婦人科医や主治医と連携して行います。薬物治療中はもちろん、カウンセリングでの患者の様子を、医師と共有することは、サイコロジストとしての大切な役割の一つです。

 

Q. 夫・パートナーもベビーブルーになる?

A.

なります。産後にライフスタイルがガラっと変わるのは、パートナーにとっても同じです。特に、妻(母親)が産後うつの場合、パートナーも一緒にうつ症状を発症しやすいと考えられます。

また、母親の産後うつが治療されないままでいると、先に生まれた子供がいる場合、その子たちの情緒・精神的な成長にも支障を来すことがあります。自分のためにも、家族のためにも、しっかり治療を受けることが重要です。

その場合、やはりパートナーの役割はカギとなります。うつ症状として、決断力、判断力の低下が母親にみられる場合は、パートナーが気付いてアクションを起こすことが治療への第一歩です。

 

 

 

 

表西恵先生
Megumi Omonishi, PhD
_________________
サイコロジスト。
セントラルアーカンソー州立大学でカウンセリング心理学科修士号、ジョージア州立大学で同科博士号取得。
テネシー州、ジョージア州などで臨床経験を積む。
現在はクリニックでの診療とビデオ診療をアメリカ26州で行う。
著書に「アメリカ人は気軽に精神科医に行く」。

 

 

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