心と体のメンテナンス

アメリカでの出産と母乳育児(前編)

百人百様のお産、期待と不安
妊娠中の準備・心構えが大事

 

Q. 妊娠中にやっておくことは?

A.

妊娠後期(36週くらい)に入ったら、小児科医を探し始めましょう。アメリカでは、通常分娩なら出産して48時間で退院し、その2、3日後には最初の小児科健診です。かかりつけの産婦人科医や、子育てをする友達に小児科医を紹介してもらうといいと思います。

新生児は、大人や幼児と異なる問題があるので、新生児医療の経験が豊富な小児科医を選びましょう。「Board Certified」の小児科医をお勧めしますが、家庭医(ファミリードクター)や内科医でも、新生児医療の経験が豊富なら適任だと思います。休日、緊急時の連絡システムが確立されていることも重要ポイントです。出産した病院と、小児科医が提携していなくても大丈夫です。

 

Q. 最初の新生児健診で何を診ますか?

A.

新生児の体重を確認し、産後の育児について様子を聞きます。母乳育児の場合、授乳を始めて4、5日しないと母乳が十分に分泌されないことがあるので、赤ちゃんの体重が一時減ることが多く、健診時の体重によっては、医師から授乳のアドバイスがあるかもしれません。

最初の健診には、以下の書類を持参してください。▽出産した病院からの書類一式▽出生時と退院時の体重記録▽B型肝炎予防接種を受けたかどうか▽出生後の聴覚検査の結果▽新生児スクリーニング(先天性疾患の有無などを検査)の記録。また、黄疸(おうだん)の治療を受け、退院後も治療・観察が必要な場合は、分娩入院時に診察を受けた小児科医の連絡先も新生児健診の時に持参してください。

この時の健診で異常がなければ、2回目の健診は1カ月後です。体重増加が少なく、経過観察が必要な場合は1、2週間後になるかもしれません。生後1カ月の後の健診は、2・4・6・9・12カ月です。

 

Q. 他に、妊娠中に考えておくべきことは?

A.

母乳育児か、人工栄養(フォーミュラ)か、その混合か、授乳方法を妊娠中から考えておき、そのための情報収集を始めましょう。赤ちゃんには母乳がベストですが、フォーミュラでも栄養価は十分に考慮されています。

また、赤ちゃんが生まれることについて、夫・パートナーともよく話し合いましょう。家族が増えることは素晴らしいことですが、一気に生活が変わり、お母さんは出産すると同時に授乳で忙しくなります。期待と不安から、お母さんとお父さんが精神的に参ってしまう可能性があることも想定しておきましょう。夫婦のライフスタイルの調整や、お父さん/パートナーが手伝えることを事前に話し合い、協力して、大変ながらも楽しい子育てを経験してほしいです。

それから、出産は百人百様。正しい出産というものはありません。自分が考えていた出産と実際が違うこともあります。自然分娩を希望していたのに麻酔を使ってのお産になったり、帝王切開になったり。想定外も想定内だと思い、オープンマインドで、ポジティブにお産に臨んでください。

 

Q. 子育てのネットワーク作りは大事?

A.

とても大事です。ママ友ネットワークは、子育てのあらゆる場面で実質的、精神的な支えとなります。すくすく会は、専門家と経験者に相談しながら、自然にママ友もできるので、子育てのサポートシステムを構築するのに役立っていると思います。ぜひご参加ください。(後編は母乳について)

 

 

 

 

 

 

 

 

加納麻紀先生<NYすくすく会>
Maki Kano, MD
_________________
2004年9月発足の育児支援NPO。
NY近辺で妊娠・出産、育児をする日本人家族を対象に支援。
加納先生(内科・小児科専門医師、Board Certified)が発起人。
医師、看護婦、助産師、ソーシャルワーカーがボランティアで活動に参加。
パンデミック以降は、オンライン・サポートミーティング「すくすくお茶会withじょさんし」を定期開催している。

 

 

 

NYすくすく会

info@sukusukukai.org
sukusukukai.org

加納麻紀先生<東京海上記念診療所>

141 S. Central Ave., #102
Hartsdale, NY 10530
TEL: 914-997-1200

 

 

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