知っておきたい女性のヘルスケア

第4回 「ブレストアウェアネス」を習慣に

女性のがん患者に寄り添うジャパニーズ・シェアがお届けする連載。アメリカで暮らす女性に役立つ最新医療情報を発信する。


乳がん月間である10月は、Japanese SHAREの臨床アドバイザーで乳腺科医の私、田原梨絵が「ブレストアウェアネス」についてお話させていただきます。

乳がんの早期発見のために、日頃から心掛けていることはありますか? 「セルフチェックしているから大丈夫」と、マンモグラム検診を受けていない方、あるいは「定期的にマンモグラム検診を受けているから」とセルフチェックをしていない方、どちらも早期発見のチャンスを失っているかもしれません。

マンモグラム検診で見つかることが多いと思われがちな乳がんですが、実はマンモグラム検診で見つかるのは全体の約半分です。残りの半分は何らかの自覚症状から見つかります。また、まれですが、検診と検診の間に本人の自覚によって見つかることの多い「中間期乳がん」という乳がんもあります。これには前回の検診で発見されなかったもの、画像で見えにくいもの、しこりが急に大きくなったものが含まれます。検診で異常なしだったとしても、乳房の変化に気付いた場合、「検診で異常なしだったから大丈夫」と自己判断せずに、医療機関を受診することが大切です。

早期発見に役立つ「ブレストアウェアネス」

みなさんは「ブレストアウェアネス」という言葉をご存知ですか? 自分の乳房の状態に日頃から関心を持ち、乳房を意識して生活することをいいます。乳がんの早期発見のために役立つブレストアウェアネスを生活習慣として身に付けるために、4つの項目を実践しましょう。

①自分の乳房の状態を知るために、日頃から自分の乳房を、見て、触って、感じる(乳房のセルフチェック)

②気を付けなければいけない乳房の変化を知る

③乳房の変化を自覚したら、次の検診を待たずに、すぐに医療機関へ行く

④40歳になったら定期的に乳がん検診を受ける

「セルフチェックだけ」「検診だけ」で大丈夫と過信することなく、この4つの項目に気を付けてブレストアウェアネスを習慣にすることで、乳がんの早期発見につながります。②については以下のポイントを押さえておきましょう。乳がんは「しこり」のイメージがあるかもしれませんが、しこり以外にもさまざまな症状があります。

〈乳房〉
・左右サイズの差、形の変化
・突出したしこり、乳房内、脇の下のしこり
・皮膚のくぼみやひきつれ
・むくみや赤み
〈乳頭〉
・変形、へこみ、ひきつれ
・赤み、腫れ、ただれ
・分泌物

セルフチェックを習慣にすることで、これらの変化に自分で気付くことができます。普段と違う変化がないかどうかを確認しましょう。タイミングとしては、月に1回行うのがおすすめです。生理がある方は胸の張りが少ない生理後に、生理がない方は毎月〇日、月初め、月末など時期を決めておきましょう。「入浴前後に鏡の前で」「寝ながら」「シャワー・入浴中」など、やりやすい時と場所を選んで行ってください。乳がんは、自分でも見つけられるがんです。ぜひ、セルフチェックを習慣にしてください。

また、生理周期、妊娠、授乳中の乳房の変化など、正常な乳房の変化を理解することもブレストアウェアネスには重要です。乳房の変化が必ずしも乳がんとは限らず、痛み・乳頭分泌・しこりなどの症状があっても、乳がんであるケースはそれほど多くはありません。変化に気付いたら慌てずに、かつ次の定期検診を待たずに、医療機関を受診しましょう。

最後に、私は乳腺科医の仲間と一緒に、乳腺・乳がんに関する正しい情報を届けるため、非営利のYouTubeチャンネルを運営しています。乳房の症状、乳がん検診に関する情報から、乳がん治療の解説まで、さまざまな動画を配信しています。今回の内容をイラストでわかりやすく解説した動画もありますので、ぜひYouTubeで「乳がん大事典【BC Tube編集部】」(youtube.com/channel/UCg4nbS1riU6-rMgXqkUcp-g)を見てみてください。

 

 

 

 

今週の執筆者

田原 梨絵
乳腺科医

ボストン在住の乳腺科医、MD。
Japanese SHARE臨床アドバイザー、一般社団法人BC Tube理事を務める。
ダナファーバーがん研究所研究助手、MDアンダーソンがんセンターのリサーチ・インターンを経験。
Instagram: @rie_tahara_breast.md

 

●ウェビナー●

みんなで知ろう! 乳がんとブレスト・アウェアネス!

10月23日(土)午後8〜9時30分開催!

乳房・乳がんに関する動画を作成、発信しているYouTubeチャンネル「乳がん大事典【BC Tube編集部】」(bc-tube.com)の理事、田原梨絵医師とBC Tube編集部メンバーの医師が、日本人の乳がんの特徴、乳がんのリスク、ブレストアウェアネスについて解説。参加費は無料。

参加方法と詳細は以下のページを参照。

URL: sharejp.org/sche dule/2021/10/23

 

 

 

Japanese SHAREは、アメリカに住む、乳がん、卵巣がん、子宮がん患者さんを日本語でサポートする非営利団体です。

TEL:347-220-1110(日本語ヘルプライン)
Email: admin@sharejp.org
Web: sharejp.org

 

 

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