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60%は成人までに治る
投薬が治療成功のカギ
Q.ADHD(注意欠如・多動性障害)はどのように診断しますか?
A.
基本的には問診です。何歳から症状が始まったのか、どんな症状があるかなど、まず保護者に質問します。重要なのは複数の情報源から様子を聞くことなので、学校の担任の先生にも連絡し、授業中の様子や、他の生徒と接するときにすぐ手が出たりしないかなどを聞き、最終的にADHDかどうかの診断を下します。その上で、いつ、どの症状をターゲットに治療を始めるかを相談します。MRI(核磁気共鳴画像法)などの画像診断や、血液検査は、現段階では行いません。
Q.ADHDはどのように治療しますか?
A.
治療方法には、投薬、認知行動療法(CBT)、認知能力訓練、脳波をモニターするニューロフィードバック、食事療法、コーチング(生活の中で、作業の時間配分や計画性、実行能力などを指導)――があります。中でも、メインは投薬と認知行動療法です。25年前、コロンビア大学を中心に、ADHD治療の大規模な治験が行われ、その後の治療法を確定する画期的な結果が発表になりました。この治験では、①投薬のみ、②認知行動療法のみ、③特に何も治療せず、月1回問診を続ける、④投薬と認知行動療法の組み合わせ――この4グループに分け、その治療効果が比較されました。
その結果、最も効果が高かったのは④の投薬と認知行動療法の組み合わせで、その次が①の投薬のみ。つまり、治療の成功には、投薬が不可欠という結果が出ました。使用する薬は、ADHD刺激薬(スティミュラント)で、ブランドでいえば「リタリン」や「アデロン」「コンサータ」などです。
薬の副作用に食欲不振があるので、薬を飲まない日(ドラッグホリデー)を設け、薬の効果が切れている時や、服用前にたくさん食べるなど、工夫をしながら治療の継続を図ります。
②の認知行動療法というのは、すぐ手が出たりする子供に対して、それを我慢できたときに褒めるなど、カウンセラーと共に取り組む作業です。
Q.ADHDは治療すれば治りますか?
A.
60%は成人する前に治り、40%は多くが不注意優勢型(ソワソワしてはいないが、集中できないタイプ)として存続するといわれます。
治る人が多いのは、ADHDの有無に関係なく、成長とともに脳も発達し、実行機能を司る分野が成熟することと、本人が自分の苦手な分野を認識し、それを補足する工夫ができるようになるからです。その結果、年齢を重ねるごとに実行能力が上がり、計画的に物事を進め、整理整頓ができるようになります。
では治療をしないでいるとどうなるかというと、違法薬物の使用、不注意によるけが・交通事故に遭うリスクが上がる、不登校(学業不振だと学校に行きたくなくなる)、人間関係の悪化(すぐ暴力を振るったり、言ってはいけないことを口走ったりするので、「失礼な人」のレッテルを貼られる)――などの状況が報告されています。成人した後も症状が継続すると、最終学歴と職場での業績が低く、情緒的な問題も多いことが分かっています。
適切な時期に適切な治療を始め、子供の将来を支えてあげたいものです。ただ、ADHDの症状/能力を生かした職業で成功する例ももちろんあります。緊急時に24時間体制で出動する救急医療隊員や、外回りの営業職など、ADHDの特性を生かせる職業はたくさんあります。
斎藤恵真先生
Ema Saito, MD
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ザッカーヒルサイド病院入院病棟部長。
入院患者のケア、臨床研究、研修医・医学生教育に携わる。
ドナルド&バーバラ・ザッカー・ハウストラ/ノースウェル医科大学精神科教授。
札幌医科大学卒、日本で2年間の研修後来米。
ニューヨーク市、近郊の病院で小児科、精神科、小児精神科の研修修了。
臨床研究職を経て現職。
米国内外での研究論文発表多数。
在ニューヨーク日本総領事館精神科顧問医。
The Zucker Hillside Hospital
Department of Psychiatry
75-59 263rd St.
Queens, NY 11004
TEL: 718-470-8390