心と体のメンテナンス

婦人科系がんと女性の健康(後編)

卵巣がんとBRCA遺伝子
女性を一生守るエストロゲン

 

Q. 卵巣がんはどんな病気ですか?

A.

40歳から増え始め、50〜60代に多いがんです。米国では2万人が毎年発症します。 卵巣の大きさは、閉経前が親指の先、閉経後は小指の先くらいですが、がんのために仮に直径10センチに肥大しても腹部は広いので違和感を感じにくく、症状もありません。急に大きくなるのが特徴で、定期検診で発見することが難しいがんです。

このため発見時にはステージ3まで進んでいることがほとんど。卵巣がんのステージ3とは、腹膜にがんが散っている状態です。腹膜は通常、腹水の量を調整して内臓を守っていますが、がん細胞が付着するとその機能が狂い、腹水がたまります。お腹がポッコリ出る、膨満感があるなどの自覚症状が出ますが、この段階でも痛みがないので、「ちょっと太った」「ジーンズが入らない」くらいに思う人が多く、発見が遅れます。

多くは原因が特定できないので予防はできませんが、1割強の卵巣がん患者では生まれながらにBRCA遺伝子の異常を持っています。「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」は知っておくべき病気です。家族や親戚に乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がん患者がいる人は、必ず主治医や産婦人科専門医にその旨を伝えておきましょう。

 

(監修・鈴木幸雄先生)

 

Q. 女性ホルモンと女性の健康の関係は?

A.

女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあり、主に卵巣で産生されますが、皮下脂肪でも作られます。プロゲステロンは主に妊娠を維持するためのホルモンで、女性の健康に関与するのは主にエストロゲンです。

エストロゲンは、女性の一生の健康を守る大切なホルモンです。では閉経してエストロゲンが減ると健康でなくなるのかというと、そうではありません。若い頃にエストロゲンをしっかり産生していれば、閉経後も骨の健康を維持し骨粗しょう症のリスクを下げてくれます。また、血管が脆くなることを予防し、高血圧や心血管疾患、脳血管障害などを起こしにくくします。

 

Q. 骨粗しょう症予防の「予防3本柱」とは?

A.

①エストロゲン、②食事、③運動です。

①エストロゲン=豆腐、納豆などの大豆食品から、エストロゲンに似た構造を持つ大豆イソフラボンを摂取することが可能です。年齢に関係なくおすすめしますが、特に閉経後の女性は意識して取るようにするといいでしょう。取り過ぎはがんのリスクになるため注意が必要です。ただ、大豆イソフラボンの分解には、エクオール産生菌が腸内にあることが条件です。日本人の半分はこれがないので、その場合はエクオールをサプリメントで補充します。エクオール産生菌の有無を調べるキット「ソイチェックⓇ」は、日本では4000円程度で購入可能。米国では一般には販売されていませんが、エクオールのサプリメント「Equelle」は薬局で販売されています。

②食事=カルシウム、ビタミンD・Kを含む、濃い緑の葉野菜(ケールなど)、海草類(ひじきやワカメ)やキノコ、小魚や乳製品をバランスよく摂取しましょう。カルシウムは錠剤などで過剰摂取すると、体に吸収されず尿路結石になるので要注意です。

③運動=骨に自分の体重をかける運動、つまり歩くことが一番。野外を散歩すれば、太陽を浴びてビタミンDの皮膚産生も助けます。室内ならスクワットも有効。よく言われる筋トレでは、筋肉がつくだけです。

少しずつでいいので、始めてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

鈴木幸雄先生
Yukio Suzuki, MD, PhD

_________________

医師、医学博士。
旭川医科大学卒、横浜市立大学大学院卒。
2021年からコロンビア大学メディカルセンター産婦人科博士研究員(Postdoctoral Research Fellow)として、がん治療のビッグデータ分析研究に従事。
日本では婦人科腫瘍専門医として子宮がん、卵巣がん治療に携わる。
低侵襲手術(腹腔鏡)、予防医療、緩和医療まで包括的な診療が信条。
米国がん患者支援団体Japanese SHAREの臨床アドバイザーも務める。

 

 

Columbia University Irving Medical Center
Department of Obstetrics and Gynecology

161 Fort Washington Ave., HIP 4th Fl.
New York, NY, 10032
※研究専任(診療対応無)

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