心と体のメンテナンス

最先端と古来の融合歯科治療(後編=鍼)

歯科学と東洋医学の融合
痛み緩和に鍼とツボ応用

 

Q.5月から鍼を導入されるそうですが、セカレアニュー先生が歯科と鍼を結びつけるきっかけは?

A.

定期歯科検診や治療に来て、歯以外の問題を話しだす患者さんはたくさんおられます。例えば顎や首、顔の痛み、さらには腰や膝の痛みまで。こうした患者さんは、医師を転々としてもまだ治らないと言われます。何とかして助けたいとずっと思ってきました。ある時、私自身、膝と腰の痛みがあったので、友人を通して日本から訪米中だった鍼師の治療を受けたところ、痛みが一気に軽減。その即効性に驚きました。

鍼について聞いたことはありましたが、ヨーロッパで育った私にはなじみが薄く、その効果については正直懐疑的でした。ところが、この一度の鍼治療で目が覚め、歯科治療に応用できないかと考え始めました。ニューヨーク州立大学が、東洋医学に興味を持つ医師と歯科医を対象に、鍼治療の特別過程を設けていることを知り、そこで学び、資格を取得しました。

 

治療前、患者をリラックスさせるために、手のツボに鍼を打つセカレアニュー先生(患者モデルは、クリニックの吉田さん)

 

Q. 歯科医での鍼治療とは、具体的にどんな治療ですか?

A.

患者ニーズも含めてまだ模索中ですが、まず歯科治療にストレートに応用できる分野から始めます。つまり治療中と、治療後のペインマネジメント=痛みの管理です。

部分麻酔が必要な時、歯茎に麻酔注射を打つときの痛みを軽減するために、鍼のツボは有効です。痛みを100%取ることはできなくても、緩和することができます。または麻酔の代わりに、腕や顔にあるツボに鍼を打つことで、治療中の痛みを管理できるケースもあります。治療後も、鎮痛剤に頼らなくていいように、鍼治療を提供することも考えています。

TMD(顎関節症)にも応用できるはずです。当院の患者さんも、TMDの治療をしてもまだ顎の痛みを訴える人が多く、西洋医学的な治療だけでは患者ニーズをカバーできないと、常々実感していました。TMDにもさまざまありますが、顎関節を包む筋肉を鍼でリラックスさせることで、痛みの緩和や不具合の調整につながることも考えられます。

次に、患者さんにリラックスしてもらうための鍼の応用です。歯医者というと、大人でも緊張して怖がる人が多いので、リラックス効果を促すツボに鍼を打つことで、緊張を緩和することもできます。

 

Q. 歯と体全体の健康に鍼治療を応用できますか?

A. 

まさにそれが、私が将来的にやっていきたいことです。歯茎には、人間の臓器に直結するツボがあります。例えば、上下とも顎の中央前歯4本は腎臓と膀胱、そこから左右対象に、前歯の両隣の1本が肝臓と胆のう、次の2本が肺と大腸、次の2本が胃と脾臓、奥歯が心臓と小腸、という具合です。興味がある人は、「歯と経絡」「歯とツボ」などのキーワードでオンライン検索してみてください。

このことを学んだとき、歯科医として興味を持たずにはいられませんでした。今もこの分野については勉強している最中で、将来的には口内のツボと臓器のつながりを理解した上で、総合的に診断・治療することができる、数少ない歯科医になりたいと思っています。例えば、治療した歯がまだ痛むような場合に、それが歯の問題なのか、もしくは臓器の不調によるものなのか、鍼とツボの知識があれば、患者さんに総合的な健康アドバイスができます。歯科治療も、洋の東西を融合する時代です。

 

 

 

 

 

 

 

 

小山内乃介先生〈右〉
Daisuke Osanai, DDS

クリスチャン・セカレアニュー先〈左〉
Cristian Secareanu, DDS

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Woodside Family DentalElmhurst Dental Care共同院長。
両医師ともニューヨーク大学歯科学校卒業。市内の病院で研修後、クイーンズ区内2カ所で歯科医院を開業。
一般歯科から、根管治療、インプラント、ホリスティック歯科、審美歯科、歯列矯正(インビザライン)まで多岐にわたるデンタルケアを提供。

 

 

Woodside Family Dental

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