心と体のメンテナンス

新型コロナワクチンを知ろう(前編)

遺伝子使用のコロナワクチン
接種後体に残るのは抗体だけ

Q. 新型コロナワクチンはどんなワクチン?

A.

まずワクチンには、生ワクチンと非生ワクチンの二つがあります。生ワクチンは、生きたウイルスを弱毒化したもので、麻疹(はしか)・おたふく風邪・風疹の混合ワクチンなどがそれに当たります。

一方の非生ワクチンは、文字通り生きたウイルスは使っていません。例えば、ウイルスを完全に殺した不活化ワクチン(インフルエンザワクチン他)や、タンパク質ワクチン(肺炎球菌結合型ワクチン他)があります。FDA(米食品医薬品局)から緊急使用許可が降りている新型コロナワクチンは、遺伝子素材を使った非生ワクチンです。

 ファイザー製とモデルナ製はいずれもmRNAワクチンで、新型コロナウイルスの突起部分だけのmRNAを使用。これを投与し、体に「突起部分のタンパク質を作りなさい」と伝達します。伝達を受け、突起部分のタンパク質が体内で形成されると、人間の免疫細胞がそれを認識し、抗体を作るという仕組みです。

ジョンソン&ジョンソン製はDNAワクチンで、新型コロナウイルスのごく一部のDNAを投与することで、体内で突起部分のmRNAが形成され、その後はファイザーとモデルナのワクチンと同じプロセスで抗体ができます。DNAワクチンの方が1ステップ多いだけで、メカニズムはmRNAワクチンと同じです。

 

CDC(米疾病管理予防センター)が「mRNAのメカニズム」を解説したフライヤー(cdc.org)

 

Q. 接種によりウイルスの遺伝子が体内に残りませんか?

A.

よく聞かれる質問ですが、残らないので心配無用です。ワクチンによって体内に運ばれたコロナウイルスの一部DNA、突起部分のmRNA、それによって体内で作られる突起部分のタンパク質は、全て数日のうちに体内から消滅します。後に残るのはワクチンの刺激を受けてできる免疫(抗体)だけです。

 

Q. 三つのワクチンの効果に差は?

A.

ファイザーとモデルナの治験データには、若干の違いがあるだけで、その予防効果に大きな違いは見られません。ファイザーは世界中で約4万人(12〜85歳)、モデルナは同3万人(18〜55歳)を対象に治験が行われ、いずれも予防率は95%程度と報告されています。

ジョンソン&ジョンソン製は、感染予防率はファイザーとモデルナよりも低いと言われますが、重症化の予防率が85%と高いことは注目に値します。新型コロナワクチンは、接種後に感染・発症しても、重症化を防ぐことが最大のポイントだからです(注:4月13日現在、血栓の報告を受けてジョンソン&ジョンソン製は接種を一時中止)。

参考までに、インフルエンザワクチンの予防率は30〜50%です。それと比べても、3社の新型コロナワクチン予防率は相当高いです。どのワクチンがいいかと悩まず、接種対象になったら、こだわらずに受けるのが賢明だと思います。

 

Q. 短期間に開発されたワクチンは本当に安全でしょうか?

A.

通常、ワクチンといえば何十年もかけて開発されます。しかし、今回は世界規模の感染だったため患者数が多く、短期間で大量のデータを取得できたことが、スピード開発が可能になった理由です。それを可能にするために莫大な先行投資もされました。数万人単位のワクチン研究データは、質・量共に信頼性が高い、安全なものです。

同時に、短期間のデータしかないのもまた事実。抗体の持続期間など、はっきり分かっていない部分もあります。(後編につづく)

 

 

 

 

 

 

金原聡子先生
(Satoko Kanahara, MD)

_________________

内科・小児科専門医師。
ニューヨーク市で地域医療に従事するコミュニティー・ヘルスケア・ネットワークのブロンクス診療所メディカルディレクター。
クリーブランドクリニック付属ケース・ウエスタン・リザーブ大学医学部卒業後、ベイラー医科大学で内科・小児科研修修了。
専門は小児科・内科・婦人科・HIV/エイズ・薬物依存症など。
米国日本人医師会理事、子育て家族をサポートするニューヨークすくすく会理事。

 

Community Healthcare Network

975 Westchester Ave.,
Bronx, NY 10459
TEL: 718-320-4466
chnnyc.org

 

 

 

NYジャピオン 最新号

Vol. 1273

トランプ大統領による新政権 第2章が遂に動き出す

米大統領選挙は今月5日投開票され、米東部時間6日午前5時30分過ぎに共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)の勝利が確実となった。一方、民主党候補だったカマラ・ハリス副大統領は6日午後、首都ワシントンで演説し敗北を認めた。支持者らに向け、理想のために戦うことを「決してあきらめない」よう訴え、「この選挙結果は私たちが望んだものではない」としながらも、平和的な政権移譲が必要だと強調した。1期目とは全く異なると言われるトランプ政権2期目の行方はいかに。

Vol. 1272

リトルポルトガル味めぐり

ニュージャージー州ニューアークはポルトガルからの移民とその子孫が多く暮らしていることで有名だ。今週は日本人の舌にも合うポルトガルの味を探訪、併せてリトルポルトガルの成り立ちにも迫る。

Vol. 1271

冬に飲みたくなる、贈りたくなる ウイスキー魅力再発見

ウイスキーといえば、近年ジャパニーズウイスキーが世界で注目を集め、希少価値も上がっているようだ。ウイスキーには、シングルモルトや、ブレンデッド、グレーンなど種類によって味が異なり、銘柄ごとの個性を楽しめるのも魅力だ。そこで今回は、ニューヨークでウイスキーの魅力を再発見してみよう。