心と体のメンテナンス

3D時代の歯科インプラント治療(後編)

進展著しいインプラント
患者へのメリットを重視

Q. 3Dデータ以外に、今と昔のインプラント技術の大きな違いは?

A.

インプラント治療が始まったのが1960年代で、80年代までは機能のみを重視した治療でしたが、90年代ごろから審美効果が注目され始めました。特に2000年以降、インプラント分野の研究が著しく進み、治療は大きく変わりました。

まず、前編でも説明しましたが、昔はインプラントを1本1本埋め込んでいたものです。しかし今は、間隔を空けて埋め込み、ブリッジと組み合わせる方がずっと審美効果が高いことが分かっています。これは、患者さんにとってコスト面でのメリットもあります。インプラントは高額な治療で、本数が増えれば増えるほどコストが上がるからです。今は少ない本数で、機能・見た目とも長期間維持できるようになりました。

さらに、昔は太いインプラントの方が丈夫でいいとされてきましたが、その後の研究で、インプラントが太いと周辺の骨を余分に吸収し、5〜10年で見た目が大きく損なわれることが分かりました。そこで、近年は骨を維持するために細めのインプラントが使われるようになっています。

 

近年の研究で、細めのインプラントを間隔を空けて埋め込み、広範囲の治療ならブリッジと組み合わせることが、審美効果が高いことが分かっている

 

Q. 治療期間も短縮されましたか?

A.

昔は抜歯からインプラントの埋め込みまで4カ月は待っていましたが、現在はケース・バイ・ケースではありますが、抜歯と同時にインプラントを埋め込むことができるようになり、治療完了までの期間が大幅に短くなりました。

以上のように、インプラント治療は、他の歯科分野(クラウンや根管治療など)とは比較にならない進展を見せています。従って、最適なインプラント治療のためには、最新技術と治療方法を熟知し、正しく最新データの分析ができる能力が歯科医に求められます。私は幸い、歯科大学で歯科医向けにインプラント技術を教えているので、最新技術や治療方法に真っ先にアクセスでき、当院での治療にも役立てています。

 

Q. インプラントを長持ちさせるために患者がすべきことは?

A.

毎日の基本的なケアと、定期的な歯科医による検診を怠らないことです。歯科医の仕事は、インプラント治療が終わったら完了ではなく、重要なのは、アフターケアのための患者教育だと思っています。

インプラントは自分の歯ではないので、痛みもなく虫歯にもなりませんが、全く問題が発生しないわけではありません。骨にチタン合金を埋め込んでいるのですから、それ自体が問題を起こすこともあるのです。特に、最初の3年間はインプラントが定着する期間なので、定期検診ではクリーニングはもとより、かみ合わせをチェックします。

インプラントは、上からの力には強いですが(物をかむ動作)、横からの力に弱いので、堅い肉をかみちぎるような食べ方は避けてほしいです。また、インプラントは自分の歯よりも歯根部分が細いので、歯茎との隙間が大きくなります。そのため、そこに食べかすがたまりやすいので、インプラントの患者さんには、ウォーターピックの使用を奨励しています。その上で、フロス、歯ブラシ、歯間ブラシを使ってもらいます。

口内が汚れると、歯茎はもとより、インプラントが埋まっている顎の骨の損失につながります。特に治療後の最初の数年は、骨とインプラントが不安定な時期なので、半年〜1年に一度の定期検診は欠かせません。口内の清掃状況が悪く歯茎や骨に影響が出ても、早期段階なら骨を回復させることも可能です。

 

 

 

 

 

 

 

ヨハン・キム先生
(Yohan Kim, DMD, FICOI)

_________________

一般歯科・審美歯科・歯科インプラント専門医
Fellow of the International Congress of Oral Implantologists FICOI
Madison Dental Loft院長
ペンシルベニア大学歯科学校卒業(DMD取得Coler-Goldwater Specialty Hospitalで研修
NYU歯科学校臨床助教授、ベルビュー病院臨床教授、Hiossen® Implant Systemアドバイザー。
米歯科協会(ADA)一般歯科学会他

 

Madison Dental Loft

30 E. 40th St., #602
(bet. Park & Madison Aves.)
info@madisondentalloft.com
madisondentalloft.com
日本人スタッフ常駐

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1240

今年のセントパトリックデーはイル文化を探索しよう

3月17日(土)のセントパトリックデー(Saint Patrick’s Day。以下:聖パトリックデー)が近づくとニューヨークの街中が緑色の装飾で活気づく。一足先に春の芽吹きを感じさせるこの記念日は、アイルランドの血を引く人にとっては「盆暮れ」と同じくらい大事。大人も子供も大はしゃぎでパレード見物やアイリッシュパブに出かける。聖パトリックデーとアイルランド魂の真髄を紹介する。