心と体のメンテナンス

SHAREの「米国医療システム知恵袋」治療の第一歩は主治医選び(前編)

治療の第一歩は主治医選び
重要なセカンドオピニオン

Q. 健康なうちにすべき「治療の第一歩」は?

A.

病気になってから医師を探しても、初診では予約を入れにくいことがあります。いざというときに困らないように、まずは主治医(プライマリーケア・フィジシャン=PCP)を選んでおきましょう。

アメリカの保険制度の一つHMOプランでは、専門医の診療は主治医のリファラル(紹介状)がないと受けられない仕組みです。婦人科は例外で、年に一度の婦人科検診は主治医のリファラルなしで受けられます。乳がん検診も通常、婦人科医がリファラルを出します。乳がんと子宮頸がんは定期的なスクリーニングで早期発見ができるので、必ず受けるようにしてください(別表参照)。

乳がん検診は、大病院の中にある放射線科で受けると、明らかに影が見える(ガンの可能性がある)場合、そのまま病院内の乳腺外科医に予約を入れてもらえるので、時間を無駄にすることなく治療を始めることができます。

 

Q. 主治医から指定された専門医、ラボに行くべきでしょうか?

A.

その必要はありません。自分で選んだ専門医、ラボ、画像検査施設に行くことができます。その場合、それらが自分の保険を受け付けることを確認してください。主治医も、推薦した専門医が患者の保険を取るかどうかまで把握していないことが多いのです。

ラボや画像診断の結果は、リファラルを出した医師に送られることが一般的です。検査結果と診断書は患者のものなので、画像はCDでもらっておくことをお勧めします。セカンドオピニオンのために、別の病院の専門医に会うときなどに必要になります。病院は個人情報漏洩(ろうえい)防止のため、画像ファイルや病理診断書をEメールで送ることはしません。

大事なことですが、病院・画像検査施設で医療情報の「リリースフォーム」に必ずサインしてください。これは、検査結果などを他の医療機関に渡してもいいという合意書です。セカンド/サードオピニオンを仰ぐ際に必要になります。

Q. 日本語通訳をお願いするべきですか?

A.

がん患者を支援する立場でお答えします。いくら英語が堪能な人でも、がん宣告を受けた瞬間に気が動転し、医師の説明が頭に入らなくなるものです。通訳がいることで、時間的、精神的な余裕が生まれ、冷静になることができるので、ぜひ利用してください。ビデオ診療中なら、クリック一つで日本語通訳につながる時代です。

Q. がん宣告を受けた場合、セカンドオピニオンは必要ですか?

A.

必要です。アメリカではセカンドオピニオンにも保険が適用されますし、リファラルも必要ありません。その代わり、画像情報や、その診断書のコピーを持参するように言われるので、それらを迅速に入手するためにも、先ほど話した「リリースフォーム」にあらかじめサインしておくことが大事です。

セカンドオピニオンの医師を選ぶ際には、最初の医師とは別の病院に所属する医師を選ぶことをお勧めします。同じ病院内の医師では、その病院の方針のようなものもあり、自動的に同じ診断になる可能性があります。

日本人は、セカンドオピニオンを取ることを「最初の先生に失礼だ」と思いがちですが、アメリカでは逆です。セカンドオピニオンを取らない患者は、自分の健康に意見を持たない、意識の低い患者だと思われます。(後編につづく)

 

 

Japanese SHARE
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写真:ブロディー愛子代表。
SHAREは、アメリカの乳がん・卵巣がん・子宮がん患者を支援するNPO。
ブロディーさんがSHAREの名の下に日本語プログラムを立ち上げたのが2013年。
ニューヨーク周辺を中心に在米日本人の患者を支援してきた。
今年夏、正式にSHARE日本語部門として認められ、カリフォルニア州にも日本人スタッフを常駐。
日本人が多く住む地域に重点を置きつつ、活動を全米に広げるために尽力中。

 

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