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鍼灸で慢性疾患を改善
生活習慣見直しも大事
Q. 鍼灸治療が消化器系と婦人科系疾患の症状改善に効く仕組みとは?
A.
鍼灸治療の基本は、全身の「気血(きけつ)」の流れを改善し、体を本来の「健康な状態」に戻すことです(前編参照)。それにより、例えば次のような効果を期待できます。
▽自律神経とホルモンバランスの調整 ▽筋肉の緊張緩和 ▽血圧の改善 ▽深部体温の正常化 ▽鎮痛 ▽消炎 ▽免疫力の向上など。
Q. 婦人科系の治療例を教えてください。
A.
17歳で多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群の診断を受け、婦人科医の下で治療を続けている32歳女性の例をお話ししましょう。
多嚢胞性卵巣症候群は若い女性に多い排卵障害です。卵巣に多数の嚢胞(卵胞)があり、月経が自然にこないので、この女性は経口避妊薬(ピル)で月経を起こしていました。顔の毛が濃い、肥満などの典型的な症状はありませんが、家族に自己免疫疾患が多く、本人も原因不明の炎症に悩まされていました。何年か前に食生活を改善し、定期的に運動もするようになってから体調が比較的良かったのですが、もっと健康になりたいという理由で来院されました。
問診と腹診を行い、太もものうっ血の解消による気血の流れの改善と、体質(前編参照)改善のための治療を週1回のペースで始めました。治療開始から2カ月半後、婦人科のエコー検診で、以前はたくさんあった嚢胞が一つも確認されませんでした。
その後、月1回のメンテナンス治療に切り替えて8年になりますが、毎年の検診で嚢胞は見つかっていません。女性は2カ月半前に主治医と相談してピル服用をやめ、鍼治療を週1回のペースに戻しました。うれしいことに、それから今日までに2回、生まれて初めてピルに頼らず、月経が正常周期で自然に来たそうです。女性は現在、2週間に1回に頻度を減らして鍼治療を続けています。
Q. 不妊症治療にも鍼灸は有効ですか?
A.
当院では、不妊で悩んでいた人が妊娠した例がいくつかあります。
不妊治療を1年半続け、その間2回流産を経験した38歳の女性がいました。問診と腹診から、腹部うっ血、自律神経とホルモンバランスの乱れ、そして不妊治療のストレスが原因と思われる心因性の骨盤内うっ血があると判断し、それらの治療と体質改善に取り組みました。女性は、3回目の治療の翌日に受けた体内受精で妊娠。その後は当院でつわりや腰痛の治療を継続し、初診から10カ月後に健康な女児を無事出産しました。
Q. 消化器系の治療例を教えてください。
A.
ひどい頭痛と肩凝り、腰痛を訴えて来院した40歳女性の例を紹介しましょう。この女性は潰瘍性大腸炎(下痢、腹痛、血便などを特徴とする大腸の炎症性疾患)でも悩んでいたのですが、他院で前に受けた鍼治療があまりにも痛かったため、私にはこれを隠していました。
ところが、鍼灸治療で肩凝りや腰痛が改善されてきた時点で、大腸炎の症状が悪化。主治医が処方した非常用の鎮痛剤も効果が十分でなかったため、何とかしてほしいと相談を受けました。そこで再度腹診を行い、鎮痛剤を併用しつつ、自律神経の乱れ、腹部うっ血、弱った胃の治療などを始めました。治療3回目で症状が7割方改善し、半年後には鎮痛剤が不要になるほど回復しました。
しかし、その後も時折症状が悪化したことから、食生活の問題を疑い、炎症作用のあるグルテンと砂糖の摂取を最低限に抑えてもらいました。すると、症状はすぐに改善し、再発や悪化も起きなくなりました。
Q. 鍼灸治療と並行して日常生活で気を付けたいことは?
A.
食生活の改善、汗をかく程度の定期的な運動、十分な睡眠です。食生活の改善と運動については、必要に応じて指導します。特に40代以降になると、気血の流れの改善に運動は不可欠で、運動しなければたちまち流れが停滞します。体に負担をかける姿勢や癖の矯正、ストレスを溜め込まないための工夫も大切です。
鍼灸治療さえ受けていれば健康になるわけではありません。鍼灸師も全力を尽くしますが、患者の生活を変える努力によってより大きな効果を期待できるでしょう。
※次回からは、宮崎郁先生に「めまい」についてお聞きします。
木村・ガルジーナ・留美子先生
Rumiko Kimura-Galzina, MS, LAc
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鍼灸師(LAc=Licensed Acupuncturist)。
ニューヨーク・ニュージャージー州鍼灸免許。
全米鍼・東洋医学認定委員会(NCCAOM)認定鍼灸師。
トライステート・カレッジ・オブ・アキュパンクチャーで修士号取得。
中医学(TCM)式、日本式(松本岐子氏が開発した腹診中心のKM式)、トリガーポイントの筋膜治療に重点を置く鍼灸物理医学(APM)式の3スタイルを習得。
ニューヨーク鍼灸学会会員。
Kimura Acupuncture, P.C.
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TEL: 516-882-1292
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