心と体のメンテナンス

テーマ ◆ 消化器系と婦人科系の鍼灸治療(前編)

「気血」の詰まりを解消
体質改善で病気を予防

Q. 鍼灸(しんきゅう)治療で「ツボ」を刺激するのはなぜですか?

A.

東洋医学では、「気血(きけつ)」に過不足がなく全身をくまなく循環している状態が健康で、逆に流れが滞り、心身に不調を来した状態が病気と考えます。鍼灸治療では、気血を運ぶ通路である「経絡(けいらく)」に沿って体表に現れる「経穴(けいけつ)」、いわゆるツボに刺激を与え、悪くなった気血の流れを改善し、症状の緩和と解消を目指します。

「気」は「目に見えないエネルギー」のことで、血流に乗って全身に届けられる酸素のようなもの。「血(けつ)」は「目に見えるもの」を指し、血液と、血液が運ぶ栄養素などの総称です。

症状が楽になった後も鍼灸治療を継続することで、病気や症状の背景にあった体の悪循環を修正して体質を改善し、病気の再発や、新たな発症を予防することを期待できます。

 

Q. 鍼灸治療はどのような症状に効果がありますか?

A.

頭痛、肩凝り、腰痛など、痛みの緩和と解消に有効なことが広く知られています。

意外かもしれませんが、痛み以外の全身のさまざまな病気や症状、例えば月経痛、月経不順、子宮や卵巣の病気、不妊症など婦人科系の問題や、過敏性腸症候群、下痢、便秘など消化器系の問題にも鍼灸治療は使われており、当院でも高い効果を上げています。

 

木村先生は5月末、新型コロナウイルス感染対策を施し診療を再開。窓に換気扇を入れ、殺菌用の紫外線照射装置と空気清浄機を設置。治療台には使い捨ての紙製ロールシーツを使用

 

Q. 同じ症状でも、患者によって治療方針が違うのはなぜですか?

A.

症状が同じでも、原因や体質は人によって異なるからです。

症状だけを見て治療をすると、一時的に楽になることはあっても、時間がたつと再発するケースが多々あります。なぜかというと、症状は体の中で起きたこと・起きていることの結果であり、そもそもの原因を解消しなければ、本当の意味での治療にはならないからです。

同じ痛みでも、痛みの背景に何があるかを理解した上で、患者ごとに最適な治療方針を決めることが大事です。

 

Q. 治療方針の決定で重視することは何ですか?

A.

気血の流れと、個人の体質、体力、症状の現れ方などを表す「証(しょう)」という概念です。

「虚実(きょじつ)」は、代表的な「証」の一つです。「虚(きょ)」は体に必要な気・血・津液(しんえき=体を潤す水分)が不足した状態で、気が足りない状態を「気虚(ききょ)」、血が十分でない状態を「血虚(けっきょ)」などといいます。対照的に、「実(じつ)」は気・血・津液があり余った状態です。「虚」は慢性疾患の場合に、「実」は急性疾患や風邪、インフルエンザなどの場合に多く見られます。

「虚」でも「実」でも気血の流れが悪くなる可能性があります。「虚」の場合は気・血・津液の不足を補い、「実」の場合は余計なものを減らす治療を行い、気血の流れを改善します。

「証」としては他にも、「陰陽」「寒熱」などがあります。例えば「陰が強く、寒が生じる」とは、寒気、冷え性など、体が冷えた状態のこと。「陽が強く、熱が生じる」とは、発熱、ほてりなど、体が熱くなった状態です。これらは全て、症状の現れ方に関係しています。

当院では、初診時に問診と、腹部を中心とする触診を行い、気血の流れがどこで、どういう風に詰まっているか(虚か実か)、体質や症状の現れ方はどうか(証)、どの臓腑(ぞうふ=内臓)が関係しているかなどを判断します。問診では、来院の理由、既往歴、家族の病歴、食生活、生活習慣にいたるまで、詳しく聞きます。

 

Q. 鍼灸では治療の継続が大事とされるのはなぜですか?

A. 

辛い症状が解消すると、それで治療を止める人がいますが、体質改善のためには数カ月に1回程度、体の調子を整えるメンテナンス治療をお勧めします。病気予防に役立つだけでなく、健康への意識が高まり、体の変化や異常に気付きやすくなるという利点があります。

治療によって体を本来の健康な状態に戻してやることで、通院理由以外の気になっていた問題が「いつの間にかなくなっていた」ということはよくあります。痛みや不調から解放されるだけでなく、肌や髪の毛がきれいになり、毎日が楽しく生活に活力が出たという人も多いです。

※次回は、婦人科系と消化器系疾患の治療例についてお聞きします。

 

木村・ガルジーナ・留美子先生
Rumiko Kimura-Galzina, MS, LAc

_________________

鍼灸師(LAcLicensed Acupuncturist)。
ニューヨーク・ニュージャージー州鍼灸免許。
全米鍼・東洋医学認定委員会(NCCAOM)認定鍼灸師。
トライステート・カレッジ・オブ・アキュパンクチャーで修士号取得。
中医学(TCM)式、日本式(松本岐子氏が開発した腹診中心のKM式)、トリガーポイントの筋膜治療に重点を置く鍼灸物理医学(APM)式の3スタイルを習得。
ニューヨーク鍼灸学会会員。

 

Kimura Acupuncture, P.C.

99 Hillside Ave., Suite K
Williston Park, NY 11596
TEL: 516-882-1292
kimura-acupuncture.com

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1078

リアルで! バーチャルで!

ハロウィーン体験

大規模なパーティーやパレードが難しくとも、10月だけのホラーな雰囲気は楽しめるはず! 今号は、ニューヨーカーが仕掛けるハロウィンの試みの数々をご紹介

Vol. 1077

こだわりのダイナー

ニューヨーク市内の飲食店では先月30日から、インドアも再開。がんばる飲食店への応援も込めて、老舗ダイナーから新しいダイナーまでを紹介します。あなたにとってのお気に入りの店が見つかるかも。

Vol. 1076

ニューヨークらしい秋冬ファッション

先行きが不安な今年の秋冬だからこそ、自分らしいおしゃれで、毎日を明るく過ごしたい! 日本に一時帰国するのを控えている人も多い今年は、あえて「ニューヨークらしい」ファッションを楽しんでみない?

Vol. 1075

さりげなく差を付ける身だしなみ

新型コロナウイルスの影響で自粛生活が続き、外出しないため、身だしなみにもこだわらなくなった人も多いのでは? 外出の機会も増えていく中、さりげなく、そして、かっこよくきめる、NY在住者のこだわりの身だしなみを今号では探ってみた。