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米政府機関の調べによると、アメリカでは2017年時点で、成人のほぼ5人に1人が何らかの精神疾患を持っていたそうです。つまり、人によって症状や重症度は異なりますが、精神疾患は誰でもかかる可能性がある病気だということです。
精神疾患は、適切な治療によって症状の改善を期待できます。ところが17年の調査では、過去1年間に専門家のケアを受けた成人患者の割合は約4割にとどまっていたそうです。
理由はいろいろですが、一つは精神疾患に対する理解の低さです。体の病気と同じように、精神疾患は専門家による治療が必要な病気です。「頑張れば何とかなる/我慢すれば自然によくなる」と考える人は多いのですが、それは間違いです。精神疾患が原因で、疲労や痛み、睡眠障害など、体に症状が出ることもあります。
精神疾患への根強い偏見も指摘されます。「精神疾患を患う=弱いダメな人間」という誤った認識から病気を認めたくない人もいれば、「精神科は受診しにくい」人もいます。
医療保険を使って診療を受けられる医師が限られることも、障壁の一つです。保険診療が可能な医師の場合、診療予約が取りにくく、数カ月待ちになるケースもあります。日本語を話す精神科医師、特に小児専門の精神科医師となると、さらに少数です。一方、セラピストやカウンセラーは、精神科医師よりも数が多く、保険診療を受けられるケースも比較的あるようですが、薬の処方を受けることはできません。
できます。プライマリーケア医師(PCP=Primary Care Physician、主治医)や、内科、家庭医学科、小児科、産婦人科の医師は、日々の診療でうつや不安などメンタル面の問題に関連したケースを扱うことがたびたびあり、多くの場合、診療経験が豊富です。精神科は敷居が高いという人は、これらの医師にまずは気軽に相談してみてはどうでしょうか。
うつ病や不安症などの自覚症状がある人はもちろん、「疲れが取れない」「よく眠れない」「常にイライラして落ち着かない」など、気になる症状や悩みがある人は、PCPに「コンサルテーション」の予約を入れてください。「どうも調子が悪い」など、ざっくりした理由でも構いません。年に一度の健康診断時に相談してもらってもいいのですが、時間が限られ、メンタル面について相談する時間が十分に取れません。
PCP、いわゆる「かかりつけ医(主治医)」は、患者の日常的な診療や健康管理を行う、身近で何でも相談できる医師です。他の疾患と同様に精神疾患の場合も、PCPが症状と重症度を診断し、軽症のケースではPCPが管理して治療を行い、重症かつ複雑なケースでは、精神科などの専門医を紹介し、場合によっては協力して治療にあたります。患者が自分や他人を傷つける恐れがある緊急のケースでは、直ちに専門医による診療を手配します。
また、PCPは各種の検査を行い、精神科以外に体に病気が隠れていないかを調べます。メンタル面の症状が、実は体の問題が原因で起きている可能性もあるからです。
当院は13歳以上の全ての患者に、年1回ごく簡単なうつ病のスクリーニングを行い、うつ病が疑われた場合はさらに、「こころとからだの質問票(PHQ-9)」というスクリーニングテストを行っています。
PHQ-9では、九つの主な症状(囲み参照)について、過去2週間にどのくらい頻繁に経験したか、それによって生活や人間関係にどの程度影響が及んだかを答えてもらい、うつ病の有無や重症度の判断の目安とします。問題を早期発見し、悪化する前に治療につなげることが目的です。
気持ちが沈んだときは、PHQ-9をインターネットから入手し(※囲み下URL)、自分の状態をチェックしてみてもいいでしょう。ただし、結果は自己判断をせず、PCPに見せて相談してください。
※次回は、精神疾患の身体症状や「チーム医療」についてお聞きします。
※2020年3月20日の記事を再掲しています。取材は2月に行ったものです。
加納麻紀先生
Maki Kano, MD
_________________
内科・小児科専門医師(Board Certified)。
マウントサイナイ医科大学卒業後、
同大学とニューヨーク大学医療センター共同の内科・小児科専門医師養成・研修プログラム修了。
米国日本人医師会(JMSA)副会長、
日本人家族と子供に医療関連教育や健康支援プログラムを提供する非営利団体(NPO)「ニューヨークすくすく会」代表。
東京海上記念診療所
Mount Sinai Beth Israel
Japanese Medical Practice
Westchester Office
141 S. Central Ave., #102
Hartsdale, NY 10530
TEL: 914-997-1200
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