心と体のメンテナンス

第8回 ◆ パンデミックと出産 (心と体のメンテナンス)

現時点で胎児への影響はまれ
定期検診はビデオ診療も可能

Q. 妊婦のコロナウイルス感染のリスクは?

A.

妊婦中は免疫機能に変化があり、インフルエンザをはじめ呼吸器系の感染症についてはハイリスクだと考えられますが、今回の新型コロナについてはそれほどでもないようです。もちろん、感染して重症化する人もいるので、油断は禁物。予防を心掛けることは重要です。

妊婦の感染が胎児に与える影響についてもよく質問を受けますが、現時点では胎児へのリスクは低いと考えられています。妊娠中に胎盤を通しての胎児への感染は、起こり得ますが、非常にまれで、胎児奇形の頻度が増加したという報告もありません。しかし、新しい感染症なのでまだデータは乏しく、長い目で見たときの子供への影響などは分かっていません。

また、新型コロナの感染症状がない妊婦さんには、定期的な検査は勧めていません。PCR検査は、検査時点での感染の有無しか把握できない上、検査結果が100%正確ではないからです。

 

 

安西先生のクリニックの受付と待合室。スタッフもマスク着用。患者数を制限し、なるべく早く診察室に通すようにしている。手の消毒液も随所に配備

 

Q. ビデオでの遠隔定期検診は可能ですか?

A.

可能です。アメリカ産婦人科学会(ACOG)のガイドラインに従い、当院でもリスク軽減のため来院回数を減らし、ビデオ診療を行うことが増えています。

ビデオでは触診や超音波検査などはできませんし、痛み、出血などの症状があった場合は外来での診察が必要です。妊娠時期によってもビデオ診療の可否は変わってくるので、どの時期の検診がビデオ診療の対象になるかは、かかりつけの産婦人科医師と相談してください。

当院では、例えば合併症もない健康な妊婦さんは、通常なら4週間に1回のクリニックでの定期検診を8週間に1回にし、その間にビデオ診療を1回行うなどして対応しています。

Q. クリニックや、病院での感染予防対策は?

A.

クリニックでは患者数を制限し、定期検診での付き添いはお断りしています。患者、医師、スタッフ全員のマスク着用が義務付けられていますし、手洗い、消毒は頻繁に行っています。他人との接触を最小限にするために、待合室からできるだけ早く診察室に案内できるようにしています。

病院での出産時に、ご主人の立ち合いと付き添いは可能です。入院時に、妊婦さんは全員PCR検査の対象となりますが、最近は陽性の人は非常に少数です。仮に陽性でも、ご主人が出産に立ち会うことはできますし、生まれた赤ちゃんも、きちんと注意をすれば、母子感染のリスクは低いとされており、お母さんとの同室を認める病院が多いです。

出産時には、医師や看護師はもちろん、妊婦さん本人、立ち合いのご主人と、全員がマスクを着用します。ACOGのガイドラインに従い、院内感染を防ぐために入院期間も短縮。出産後、自然分娩は通常なら2晩を1晩に、帝王切開は3晩を2晩にしています。

 

Q. 妊婦が特にすべき感染予防策は?

A.

特別な注意点はありませんが、マスク着用、手洗い、ソーシャルディスタンシングを守り、安全に生活してください。感染を気にしながらの妊娠はストレスもたまると思うので、心理カウンセリングを勧めるケースもあります。

2人目、3人目の妊娠の場合、上の子供たちから感染することがあるので、家族全員で予防を徹底してください。子供たちにはかわいそうですが、友達と自由に遊ぶのは、もう少し待った方が安全です。

 

 

安西弦先生
Yuzuru Anzai, MD

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産婦人科医師(Board Certified)。
日本で医師免許取得後、1986年からマウントサイナイ大学病院(当時)で子宮体がんと乳がんの基礎研究に従事、産婦人科臨床研修修了。
ニューヨーク大学(NYU)病院産婦人科勤務を経て、現在ニューヨーク・ミッドタウンOB/GYN院長。
産婦人科一般診療と検診、分娩、内視鏡手術などを手掛ける。
米国日本人医師会前会長。

 

NY Midtown OB/GYN

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