心と体のメンテナンス

テーマ ◆ 間違えやすい風邪とアレルギー疾患(前編)

長引く鼻水・鼻づまり
ハウスダストが原因か

Q. 風邪だと思って受診した人が、実はアレルギー疾患だったということはありますか?

A. 

意外かもしれませんが、そういうケースは珍しくありません。特に冬場に鼻水や鼻づまりが続き、風邪だと思って薬を飲んでもなかなか治らないときは、ハウスダストが原因のアレルギー性鼻炎かもしれません。外気に湿気が多く、室内の換気もおろそかになりがちな冬は、ハウスダスト、中でもカビやダニに対するアレルギーの発症が増える時期でもあるのです。

アレルギー疾患と聞いて、花粉症や食物アレルギーを連想する人は多いのですが、アレルギーの原因は花粉や食物だけではありません。ハウスダストとは、衣類やカーペットなどの繊維クズ、カビ、ダニの死がいなど、肉眼では見えにくい小さなホコリのことです。本人が知らないだけで、ハウスダストにアレルギーがある人はたくさんいます。

ニューヨークでは例年3月に花粉症シーズンが始まり、夏にいったん収まった後、秋に再び花粉が飛び始めます。冬から春への季節の変わり目にくしゃみや鼻水がとまらず、「花粉症だと思って受診したら風邪だった」という、逆のケースもあります。

複数の種類のアレルゲン(トレイに小分けされた液体)を皮膚に垂らし、その上から軽く引っ掻いて反応をみる。各アレルゲンへのアレルギーの有無を約15分で調べることができる

 

Q. アレルギー性鼻炎を放置するとよくないのはなぜですか?

A.

症状がつらいのはもちろんですが、鼻の粘膜に細菌が感染し、気管支炎や副鼻腔炎(ふくびくうえん)など、治すのが難しい病気を発症することがあるからです。感染した細菌を肺に吸い込むと、肺炎の原因になります。

副鼻腔炎とは、いわゆる蓄膿症です。鼻周囲の副鼻腔と呼ばれる空洞部分にウイルスや細菌が感染し、炎症が起きて膿がたまった状態です。代表的な症状は、ひどい鼻づまり、黄みや青みがかった粘っこい鼻水、咳、痰(たん)など。鼻水が喉に垂れる後鼻漏(こうびろう)、頭痛、頭が重い感じ、歯や目の周囲、顔面の痛みなどを伴うこともあります。

風邪をこじらせた結果、同じように細菌に感染することもあります。風邪とアレルギーでは治療法が異なるので、細菌感染や症状悪化を防ぐためには、医師による速やかな診断と適切な治療が大切です。

Q. 風邪とアレルギー性鼻炎を見分ける方法は?

A.

普通の風邪は1週間もすれば治りますが、1週間たっても症状が改善しないときは、おそらくただの風邪ではありません。冬場に2回以上、1年に何度も繰り返し体調を崩す場合も、風邪ではなくアレルギー性鼻炎が疑われます。

発熱の有無も、判断の目安になります。インフルエンザの場合を除き、鼻水・鼻づまりなどの症状に加えて高熱があれば、ほぼ間違いなく風邪といえます。熱がないか、あってもそれほど高くなければ、風邪ではなくアレルギー性鼻炎の可能性があります。

例えば、高熱が出て1週間以内に治った場合は、風邪と考えて問題ないでしょう。対照的に、熱はなくても風邪の症状が1週間以上続き、しかもそれが1年に何度も起きている場合は、アレルギー性鼻炎の疑いが大です。

参考までに、細菌感染を起こしているかどうかは、鼻水の状態の変化で分かります。風邪やアレルギー性鼻炎の場合、鼻水は透明で水っぽくさらっとしていますが、細菌に感染した後は粘り気が出て濃くなり、色も黄みや青みを帯びてきます。

Q. アレルギーの有無はどのように調べるのですか?

A.

どの物質にアレルギーがあるかを調べる方法は、スキンテスト(写真参照)と血液検査の主に2種類です。いずれのテストも、複数のアレルギー物質(アレルゲン)に対する反応を、一度に調べることができます。

誤解されることが多いのですが、「花粉症ではない=花粉以外の物質にもアレルギーがない」というのは正しくありません。冬に多いアレルギー性鼻炎患者の多くも花粉症とは無縁で、カビやダニなど花粉以外の物質にアレルギーを持つ人たちです。

「風邪だと思っていたけど、どうも違うようだ」と気になる人は、一度はアレルギー検査を受けることをお勧めします。原因を見つけることが予防と治療の第一歩だからです。

※次回は、アレルギー性鼻炎の予防と治療についてお聞きします。

 

ジェフリー・M・アン先生
Jeffrey M. Ahn, MD

_________________

耳鼻咽喉科専門医師。
耳鼻咽喉科頭頸部外科/顔面形成外科専門(board certified)。
コロンビア大学教授、同大睡眠障害/ロボット外科ディレクターなどを経て、
現在ペンシルベニア大学医科大学院・耳鼻咽喉科頭頸部外科教授。
子供から大人の鼻炎、鼻づまり、花粉症など耳・鼻・喉の疾患を治療。
日帰りの蓄膿症手術、ロボットを使った睡眠時無呼吸症候群手術に定評がある。

 

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