意外に完治ま&#
きっかけは腰の捻挫から
体が硬くなる冬は要注意
Q. ぎっくり腰とはどういう状態ですか?
A.
冬場はぎっくり腰を理由に来院される方が増えるのですが、実はぎっくり腰は病名や診断名ではありません。急に起きた腰の強い痛みを指す通称で、正式な診断名は「急性腰痛症」といいます。仰向けの状態から勢いよく体を起こしたり、重い物を持ち上げたりした拍子に、突然腰に激痛が走り、ひどいときは歩けなくなることもあります。
ぎっくり腰は、簡単にいうと「腰の捻挫(ねんざ)」です。医師の診断や治療を受けず、痛みが治まるのをじっと待つ人もいますが、それはよくありません。痛みで辛い思いをするのはもちろんですが、放置すると症状の悪化や慢性化につながる危険があるからです。捻挫の原因や、捻挫の裏に「隠れた問題」を正しく診断し、適切に治療することが大事です。同じぎっくり腰でも、人によって原因も違えば、隠れた問題もあり、それによって治療法も違ってきます。
Q. 腰の捻挫とはどういうことですか?
A.
捻挫とは、関節を支える筋肉や、靭帯(じんたい=骨と骨をつなぐ組織)などが損傷した状態を言います。
正常な筋肉は柔軟性が高く、関節を正しい位置に保つ役割をしています。ところが、何らかの衝撃や疲労によって損傷すると、関節を適切に支えることができず、その結果、関節がずれてしまいます。そうすると、機能が低下した筋肉の分まで靭帯が負荷を受け、やがて古くなったゴムのように伸びきります。そして、支えを失った関節はグラグラと不安定になり、筋肉と靭帯にさらに負荷がかかるという悪循環に陥ります。
捻挫は、全身のどの関節でも起こり得ます。ただ、立ったり座ったり、バランスを取ったりするときの動作の中心になる腰は、負荷がかかりやすく、捻挫もしやすいといえます。
Q. 腰の捻挫を放置するといけないのはなぜですか?
A.
最初はただの捻挫かもしれませんが、それによってさまざまな症状が引き起こされる可能性があるからです。
小さな骨が縦に重なってできた背骨の場合、周囲に捻挫が起きると、骨と骨の間で衝撃を吸収するクッションの役割をする軟骨組織の「椎間板(ついかんばん)」に負荷がかかり、椎間板が腫れたり、「髄核(ずいかく)」と呼ばれる中身が外に飛び出したりすることがあります。中身が飛び出した状態を「椎間板ヘルニア」といいます。飛び出した中身が周囲の神経を圧迫し、腰や脚の痛み、しびれ、麻痺(まひ)など深刻な問題が起きやすくなります。
椎間板は加齢とともに硬くなり、衝撃に弱くなります。そのため、最初はただの捻挫でも、何度もぎっくり腰を繰り返すうちに椎間板そのものが損傷し、椎間板ヘルニアになる恐れがあります。
ちなみに起床時に首の後ろや肩にかけて痛みが出る、いわゆる「寝違え」も、首の椎間板ヘルニアが原因であることが多く、放置するのはよくありません。
捻挫を放っておけないもう一つの理由は、「腰部脊柱管狭窄症(きょうさくしょう)」を悪化させる危険があることです。背骨の中を通る「脊柱管」と呼ばれる神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫される病気です。加齢現象の一つですが、捻挫によって背骨の関節の動きが悪くなると、患部への血流が滞り、脊柱管内部の組織の硬化が進み、神経が余計に圧迫されることになるからです。
Q. 冬にぎっくり腰が多いのはなぜですか?
A.
腰の捻挫は、悪い姿勢や体の間違った使い方によって起こります。それに加えて冬場は、寒さで体が硬くなり、関節の動きも悪くなります。そのため筋肉や靭帯に余計な負荷がかかりやすくなり、ぎっくり腰にもなりやすくなります。
人間の体には、自分の力でけがや病気を治す自己治癒力がありますが、筋肉が硬いと血流が滞り、組織の修復に必要な栄養が不足してしまいます。新陳代謝も低下し、けがが慢性化しやすくなります。かといって、椎間板ヘルニア予備軍や、関節がすでに損傷している人は、患部を温めると症状を悪化させる場合もあります。
間違った予防法や治療法を避けるためにも、ぎっくり腰は放置せず、専門家の診断を受けることが大事です
※次回は、ぎっくり腰の治療について伺います。
石谷三佳先生
Mika Ishitani, DC
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カイロプラクティック専門医師(DC=Doctor of Chiropractic)、国際小児カイロプラクティック協会認定医師。
パーマー・カイロプラクティック大学卒業後、ハーバード大学医学部専門課程修了。
腰や肩、首など全身の痛み、頭痛、椎間板ヘルニア、スポーツや事故によるけが、妊婦のケア、姿勢矯正など。
理学療法、鍼治療、心理カウンセリングなどを取り入れた包括的ケアを提供する石谷ヘルスセンター院長。
Ishitani Health Center
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