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慢性的な体の凝りと痛み
改善の鍵は筋肉を覆う膜
Q. 「筋膜」について教えてください。
A.
筋肉を包む薄い膜のことを指し、全身をクモの巣のようにくまなく覆っています。生の鶏肉の皮をはがすと、肉と皮の間に薄い膜がありますが、それが筋膜です。筋膜の存在は以前から知られていましたが、慢性的な体の凝りや痛みも、実は筋膜のよじれや硬直がかかわっていることが、近年の研究で明らかになってきました。
全身には約640種類もの筋肉があるとされ、それらが伸びたり縮んだりすることで体は動きます。筋膜はそれら筋肉を一つずつ、みかんの袋のように包んでいるだけでなく、個々の筋肉を構成する「筋線維」と呼ばれる組織をも一本ずつ覆っています。ある筋肉からその隣の筋肉へと、筋膜は全身を通してひと続きにつながっています。
参考までに、人間の体には臓器や骨、神経、血管、さらには細胞を一個一個包む膜状の組織があり、それらを広く「ファーシャ(fascia)」といいます。筋膜もファーシャの一つで、「マイオファーシャ(myofascia)」と呼ばれることもあります。
Q. 筋膜の役割は何ですか?
A.
いろいろありますが、中でも大切なことの一つが筋肉を包んで形を保ち、筋肉の伸縮を助けることです。筋肉と筋膜の間には水分を含む液体が流れており、それが「潤滑剤」として働くことで、筋肉は滑らかに動くことができます。
ほかにも筋膜には、筋膜の中を走る血管や神経、リンパ管を筋肉の圧迫から守り、体内循環を助ける作用があります。
Q.筋膜の異常が凝りや痛みを引き起こす仕組みとは?
A.
薄く柔らかい筋膜は、筋肉が使われ過ぎたり、逆に長時間使われなかったりすると、よじれて硬くなりやすいという特徴があります。筋膜を取り巻く液体も水分が失われて乾燥し、筋肉と筋膜がくっついてしまいます。
このような異常が起きると、筋肉と筋膜の間の潤滑剤が適切に働くことができません。
生の鶏肉をラップで包んだ様子をイメージしてみてください。鶏肉とラップの間にすき間がない状態と同じように、筋肉と筋膜がくっついて滑らかに動けなくなり、凝りや痛みの原因になるのです。筋肉が支える関節の動きも悪くなり、可動域が狭くなることもあります。
例えば、猫背で顎(あご)を突き出した姿勢でスマートフォンやパソコン画面を長時間見続けていると、首と肩甲骨周辺の筋肉と筋膜が硬くなり、肩や首が凝って痛くなります。肩関節の動きが悪くなり、腕が上がりにくくなることもあるでしょう。
肩や首周辺の筋肉をもむと楽になるかもしれませんが、大抵の場合、それは一時的です。根本原因である筋膜のよじれがそのままなので、症状はぶり返すことが多いです。
Q.筋肉と筋膜がくっつくことによって血管が圧迫されると、どうなりますか?
A.
圧迫された部分から先に血液が流れなくなり、体にさまざまな障害が起こります。筋肉の凝りや痛みもその例です。
しかし、最も大きな影響は、自己治癒力の低下でしょう。私たちの体には本来、けがや病気を自分で治す力が備わっています。ただ、その力が生かされるためには、血液が全身をくまなく循環し、回復に必要な栄養と酸素が組織や細胞に行きわたっていなければいけません。筋膜の異常によって血流が途絶えると、組織や細胞の修復に時間がかかり、病気にもなりやすいという悪循環に陥る危険があります。
Q.足先の痛みの原因が、足とは一見無関係の場所に隠れていることもありますか?
A.
あります。これは頭から手足の先まで、全身の筋肉が全て筋膜でつながっていることと関係しています。
足先の痛みも原因を突き詰めると、例えば首回りの筋膜の異常だったということもあり得ます。私のマッサージのクライアントでも、骨盤や腰回りの筋肉をほぐし、筋膜の異常も修正したところ、長年の肩凝りが楽になったなどの例があります。
筋膜のよじれや硬直が生じる原因はさまざまですが、強い精神的ストレスが引き金になることもあります。
※次回は、筋膜異常の原因や「筋膜リリース」について伺います。
秋山祥子さん
Shoko Akiyama, LMT
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マッサージセラピスト(ニューヨーク州免許、LMT=Licensed Massage Therapist)、
リフレクソロジスト(米国リフレクソロジーボード認定)、アロマセラピスト(米国アロマセラピー登録カウンシル認定)など。
スウェディッシュ・インスティテュート・ヘルスサイエンス学校卒業。
ディープティシューマッサージ、筋膜リリース、トリガーポイントセラピーなどを組み合わせた痛み緩和に注力。
Shoko Akiyama Massage Therapy Studio
138 W. 15th St.(bet. 6th & 7th Aves.)
TEL: 917-345-1340
www.shokomassage.com