意外に完治ま&#
骨格異常を早期発見
原因解消し再発予防
Q.顎(がく)関節症はどのように治療するのですか?
A.
治療法は原因によって異なります。歯のかみ合わせの異常、歯ぎしり、ストレスによる顎(あご)周辺の筋肉の緊張、全身の姿勢や骨格、筋肉の異常など、顎関節症は人によって複数の要因が複雑に絡み合って起きると考えられており(前編参照)、人の数だけ治療法もあると言えます。
さまざまな要因の中でも、特に骨格や筋肉の異常による影響は大きく、顎関節症患者の頭蓋骨から足首まで全身を調べると、ほとんどのケースで骨格や筋肉に何らかの問題が見つかります。そのため、顎関節症の治療と再発予防のためには、顎の異常を治すだけでなく、その背後にある骨格や筋肉の問題を突き止め、根気よく解消に取り組む全身アプローチが求められます。
Q.顎関節症治療の全身アプローチとは?
A.
左顎の痛みに長年悩まされてきた50代女性のケースを例に説明しましょう。この女性は、ひどいときは食事もできないほどの強い痛みと、頭の左側だけに出るピリピリとしびれるような痛みを訴えていました。
まず、顎の痛みを和らげるため、顎関節周囲の筋肉と筋膜を指でほぐすマッサージを、口の中と外から行いました。同時に、顎関節が滑らかに動くように、頭蓋骨を構成する小さな骨のずれを手技で元に戻しました。ちなみにこれらの専門治療ができるのは、顎関節症について特別訓練を受けた一部の専門家に限られます。
この女性の場合もそうでしたが、大抵のケースでは、数回の治療で顎の痛みは大幅に緩和します。しかし、ここで治療をやめると、痛みはほぼ確実に再発します。というのも、顎の異常の背後にある全身の骨格の問題が、まだそのまま残っているからです。
全身の骨格や筋肉を調べたところ、この女性は左足首に問題があり、左足に体重をうまくかけられていませんでした。それが原因で、骨盤、背骨、頭蓋骨を支える首の骨にゆがみが生じ、頭蓋骨が不安定になり、顎関節とその周辺の筋肉に強い負荷がかかっていました。加えてこの女性は、呼吸するときに反り腰になる癖があり、このことも骨格のゆがみの一因と考えられました。
最初は週1回のペースで通院してもらい、骨格のゆがみや筋肉の凝りを矯正する治療を行いました。また、体の状態を見ながら呼吸法、顎周囲の筋肉をリラックスさせる運動、全身の筋肉のバランスを整える運動などを指導し、自宅で続けてもらいました。
この女性の場合、最初の治療後に顎の痛みも頭痛もほとんどなくなっていましたが、その後も痛みから完全に解放され、半年以上たった今も再発していません。現在は健康維持のため数カ月に1回通院し、体のバランスを整える治療を続けています。全身の骨格や筋肉を整えたことで、慢性的な肩凝りや腰痛も解消しました。
Q.顎の異常を治療して、全身症状が治ることもありますか?
A.
あります。腰痛で来院された男性のケースをご紹介しましょう。
この男性は右足に体重をうまくかけることができず、体の重心が左に傾いていました。骨盤、背骨、首の骨と順番にゆがみを矯正し、運動によって筋肉のバランスを整え、呼吸法の癖も直したのですが、体の重心は偏ったままで、腰痛は改善したものの完治とはなりませんでした。
さらに調べると、この男性は顎関節のゆがみが原因で、歯のかみ合わせが悪化していることが分かりました。かみ合わせを整える治療を行ったところ、体重を左右両足に均等に乗せられるようになり、骨格のゆがみや筋肉のバランスが徐々に改善され、腰痛も最終的に解消されました。
かみ合わせの異常が体の重心に影響を与え、全身症状を引き起こすことは、珍しいことではありません。かみ合わせを手技や他の治療で矯正できないときは、歯科医師と協力し、治療用マウスピースを使うこともあります。
原因不明の耳鳴り、めまい、鼻詰まりなど、顎とは無関係と思われるような症状も、突き詰めれば顎の異常に行きつくことは多々あります。あきらめず専門家に相談してください。
※次回は中根真理子さんに、他人の気力を奪う「エネルギーバンパイア」とその対策について伺います。
高田洋平先生
Yohei Takada, DPT, OCS, SCS
理学療法士(DPT)。
米国理学療法士協会(ABPTS)認定整形外科臨床医学療法士(OCS)/スポーツ臨床理学療法士(SCS)、
フィジカル・アート研究所(IPA)認定機能的徒手療法士(CFMT)など。
Func-Physiotherapyニューヨーク/東京分院代表。
体の痛みの治療やリハビリ、予防ケアを手掛け、ゴルフなどスポーツ愛好家や選手のケアに特に定評がある。
Func-Physiotherapy
16 E 40th St., #703
(bet. Madison & 5th Aves.)
TEL:347-497-0500(日本語可)
www.funcphysio.com