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来年の11月5日に実施される大統領選挙に先立ち、1月から6月にかけて各州と準州で指名争い(予備選挙)が行われる。現時点での候補者、米国在住なら最低限知っておきたい大統領選挙の仕組みなどを予習しておこう。(取材・文/加藤麻美)
本戦はバイデンVSトランプ
世論調査から見る現在の候補者と支持率、有権者の動向、本選の予想をジャーナリストの武末幸繁さんに解説してもらった。
トランプがWH奪還の可能性大
予備選の候補者の支持率を見てみると、共和党はトランプ前大統領(77)、民主党はバイデン大統領(81)(以下、敬称略)が他候補を圧倒しており(P4参照)、本戦は4年前と同様、両者の戦いになると見て間違いないです。トランプとバイデンの一騎打ちとなった場合ですが、調査会社リアル・クリア・ポリテックス平均で、トランプは46.6%、バイデンは44.5%でトランプが2.1ポイント上回る結果となっています。12月11日発表のエマーソン大学調査でもトランプ47%、バイデン43%です。
バイデン不人気の理由は「高齢」「パンデミック明けのインフレ物価高」「ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争の対応」や「次男ハンターに絡む不正疑惑」です。ガザで人道危機が起きているにもかかわらず、イスラエルの自衛権に固執し停戦に向けた国連安保理決議を次々に一蹴し、軍事支援を続けるなどイスラエル支持を続けています。アラブ系は全人口の1%程度とはいえ、今回はアラブ系の多いミシガン州を落とすのは間違いないでしょう。18〜26歳までのZ世代や27~43歳までのミレニアル世代にも人気がありません。一方、トランプは「自分が大統領だったらロシアのウクライナ侵攻はなかった」「ハマス襲撃は起きなかった」などと言っています。起訴されるたびに「陰謀だ、魔女狩りだ」などと訴え、むしろ支持率が上がるという強さを見せています。
勝敗を左右する?第3の党からの候補
今回の最有力候補は無所属から立候補したロバート・ケネディ・ジュニア(69)で、ロイターとイプソスの世論調査によるとバイデン、トランプ両人と三つ巴になった場合、20%の票を獲得する可能性があるとされています。ケネディは共和、民主の両党の票を取ると見られていますが、急進左派の黒人活動家コーネル・ウエスト(70)と二度目の出馬となるジル・スタイン(73)は民主党候補の票を奪うだろうと予想されています。
民主党の選挙対策
バイデン不人気を背景に民主党全国委員会は今年2月、大統領選の党候補指名争いは初戦アイオワ州、次にニューハンプシャー州という長年の慣例を破り「初戦は2月3日のサウスカロライナ州とする」と決定しました。アイオワ州の党員集会は延期、1月23日のニューハンプシャー州の予備選は変更しないと11月に同州議会が決めたため、バイデンは参加しないという異例の事態です。白人票が9割で惨敗の可能性が高いアイオワ州とニューハンプシャー州を避け、黒人票が4分の1を占め勝利が確実なサウスカロライナ州を初戦にして勢いをつけ3月のスーパーチューズデーに持ち込むというのが狙いです。また、前回の大統領選挙同様、郵便投票による「投票収穫(Ballot Harvesting)」にも力を入れると思います。前回の大統領選ではコロナ禍もあり、全投票数約1億6000万のうち半分の8000万以上が郵便投票でした。投票収穫というのは特定の代理人が有権者からの郵便投票を集めて選挙管理事務所に送るもので、民主党に有利とされています。
どんでん返しも?
大統領選は現時点ではまだまだ不確定要素があり、トランプは、大統領選の敗北を覆そうとした裁判で有罪判決が夏の共和党大会前に出れば党内にも大きな変化が起き、他候補に動くかもしれません。またバイデンは健康問題や次男の不正疑惑を理由に辞退、あるいは辞退させられる可能性もあります。そうするとカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(56)やカマラ・ハリス副大統領(59)らが出てくるかもしれませんね。どんでん返しもあり得ます。
<お話を聞いた人>
武末幸繁さん
在米ジャーナリスト。ニューヨークの邦字新聞OCSニュース(2005年休刊)元編集長。ワシントンDCとヒューストンで発行の邦字紙SAKURA編集長。週刊文春、週刊ポストなど日本の雑誌メディアにも寄稿。ネットラジオのさくらラジオで時事問題解説も。