ニューヨークで活動する注目の若手アーティスト

ニューヨークを拠点にジャズドラマーとして活動する三上麟太郎さん。12歳の頃に独学で始めたドラム。大学生の頃にジャズと出会い本格的にこの世界へ。9月に初のアルバム「ファースト・フィッシュ」をリリース。第二の故郷に想いを馳せて作曲したという今作について話を聞いた。


三上さんがドラムを始めたきっかけは、父親が休日にロックバンド、クイーンのライブ映像を観ていた時のこと。自然とドラムに目が奪われたんだそうだ。昔バンド活動をしていた父親から、家にあった古いスティックで基本的な叩き方を学び、音楽に合わせてソファーを叩くようになり、その後、電子ドラムで本格的にスタート。吹奏楽部や軽音部に所属した経験もなく、全て独学で、高校生の頃はロックバンドを組んでいたという。

大学1年生の時にドラムのレッスンを本格的に受け始める。その恩師の影響でジャズの世界に入るようになったそうだ。2016年に恩師と共にニューヨークを訪れ、有名なジャズクラブを巡り、プロたちの生演奏に実際に触れたことで刺激を受け、翌年にジャズを学ぶべく留学を決意。

仲間とのセッション風景

 

ジャズの面白さ

「実は、幼少期から音楽が好きで、祖父がかける古いジャズやビッグバンドのレコードを聴きながらリズムにのるのが好きでした。時々僕から祖父にアレをかけて! と曲をリクエストすることもあったようです」と、子供の頃からジャズに触れる機会が実はあったと話す。

ジャズの面白さについて聞くと、「即興性と自由な感性だと思います。トップクラスのミュージッシャンでも演奏がうまくいかないこともあります。アドリブや掛け合いなど、プレイヤーの個性がでる音楽なので。演奏が凄いと思ったら、どこが凄いのか考えて、あの時のサックスがいいのか、ドラムがいいのか、発せられるエネルギーがかっこよかったのかなど、自分なりに追求しています」と自身がなぜジャズに惹かれるのかを教えてくれた。

 

第二の故郷鹿児島への想いを曲に

中学生の時に、鹿児島県の口永良部島(くちのえらぶじま)という小さな島で山海留学を体験したという三上さん。大自然の中で2年間暮らしたことで、生きる糧や自然に対する考え方、アーティスティックな感性や創造性など、色々な面においてインスピレーションを受けたという。「島は僕の心の拠り所です」と話す三上さんは、音楽の道を志す今、時々島のことを思い出しては、また訪れる日を目標にして自分を鼓舞しているという。「ピアノに向かうと自然と島の情景が頭に浮び、気づいたら書き上げた曲の大半が島に繋がるような作品になったので、今回アルバムにすることにしました」と第二の故郷へ想いを馳せる。

今作のタイトルでもある「ファースト・フィッシュ」という曲は三上さんが作詞作曲をし、友人のリリー・レスニコフさんがボーカルを担当し透き通るような声で歌い上げている。「彼女は仲の良い友人で、僕がよく島のことを話すし、島をイメージした曲作りに対しても共感してくれていたので、よき理解者ということもあり、ボーカルは彼女しかいないと思いました」と話す。 また、同曲のPV撮影はドラマチックに仕上げるため、ロングアイランド地区にあるファイヤーアイランドで撮影を行ったそうだ。

アルバム制作に関わったメンバー

 

自由でオープンな意見を言える仲間

今作に携わったメンバーは全員、学生時代に出会った仲間なんだそうだ。全て自分で9曲を用意し、イメージや要望をメンバーに伝えて曲を完成させていくという作業を初めて経験し、仲間との共同作業に多くのことを学んだという。

「ライブ演奏も、アルバム制作も、自分一人の力では完成できないのは承知の上ですが、僕はドラムに関しては知識はあっても、コードやハーモニーのことに関しては彼らの方が知識が豊富なので、彼らとはオープンな関係で率直にアイデアや意見をもらい、素直に取り入れたいと思いました。僕は、気の知れた仲間と切磋琢磨しながら作ったものを『作品』として残したいという考えなので、今回それを実現することができて良かったです」と語る三上さん。

青い海をイメージする心地よい美しい音色と、迫力があるのにどこか切なく、独特の世界観が詰まった今作を是非いろいろな人に聴いてほしい。

 

三上麟太郎 Rintaro Mikami

1995年、東京都生まれ。
ジャズドラマー、パーカッショニスト、作曲家。

21歳で渡米し、ニュースクール大学を卒業後はニューヨークを拠点に活動し、これまでに数々のライブ公演やレコーディングに参加。Canopus Drumsのエンドーサーを務める。

Instagram: @rintaro_mikami

rintaro-mikami.com


三上麟太郎 1st Album『First Fish』全9曲

Rintaro Mikami – Drums

David Truilo – Tenor  Saxophone・Omri Bar Giora – Guitar

Henry Plotnick – Keys・Bar Filipowicz – Bass・Lily Resnikoff – Vocal

Ariel Bart – Harmonica・Designed by Laney Lai

 

初のアルバム「ファーストフィッシュ」発売記念ライブ

日時:9月20日(水)午後7時開場

会場:Nublu

住所:151 Loisaida Ave.

nublu.net

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1247

我らのドジャース

大谷翔平選手の一挙手一投足から目が離せない。スポーツ報道でLAドジャースの名前を見ない日はない。5月1日現在の勝率・621でナ・リーグ西部地区トップ。そのドジャースが、5月末には対NYメッツとの3連戦、6月には対NYヤンキースとの交流戦で当地にやって来る。NYジャピオン読者としては憎き敵軍なるも大谷選手の活躍に胸が熱くなる複雑な心境。だが、LAドジャースの「旧姓」はブルックリン。昔はニューヨークのチームだったのだ。

Vol. 1246

人気沸ピックルボールを楽しもう

あちこちに花も咲き乱れ、4月に入りニューヨークにも春が到来した。本号ではこれからの季節、屋外でも楽しめるピックルボールを紹介する。テニスよりも狭いスペースで出来るピックルボールはここ数年、ニューヨークでも人気だ。

Vol. 1245

春到来! 週末のプチお出かけ 〜ハドソン川流域・キャッツキル山麓編〜

桜の花も満開を迎え春の行楽シーズンがやって来た。ニューヨーク市内から日帰りできるハドソン川流域・キャッツキル山麓の人気のスポットを紹介しよう。

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。