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当地在住7年目のラッパー・R-NABYは、なぜ逆境の今、こんなに「強い」のか?確かな自信に裏付けられた、独自の観点をひも解いてみる。
「食べさせていく」ことのすごさ
——このパンデミック期間はどう過ごしていますか?
2月ごろまでは、月20本ライブに出たり、曲を作ったり、さくらRADIOのレギュラー番組を担当したりしてました。2月の後半からはライブツアーを東海岸でやっていたんですけど、最終公演でコロナのパンデミックが起こったんですよ。チケットもホテルも取ったのに、公演中止。
でも、いいリフレッシュになりましたね。今まではライブや他の仕事をしつつ、プライベートを両立させながらの曲制作でしたけど、今回は何にもすることがなくて、家にずーっといたんですよね。落ち着いて、めっちゃ曲が作れましたね。1曲に掛ける時間が長かったし、外に制作にも出掛けました。
——外で制作ですか?
ビーチや公園へ。今までは「家で書けるのに、なんで外出ないとあかんねん」と思っていたんですが、家だとあまりにも一人の時間が長いし、精神的に辛いじゃないですか。なので、外で曲聴きながら作って。おかげで、12月発売の新アルバムには、自然や緑といった普段じゃ使わないテーマの言葉がよく出てきますね。
全然ライブできなくて、むしろ良かったな。そうして制作が落ち着いてきた時に、ラーメン店「GORIN」のオーナーの話が来て。
——ラーメン店オーナー!?
どっちみち家にいるのも嫌やし。コロナが終わるまでに店を繁盛させて、終わったら(業務から)抜けて、を目標にしています。
——初めて飲食店を経営してみて、いかがですか?
音楽仲間がみんな店で働いているので、店員との関係性も、音楽制作時と変わらないんですよね(笑)。まかないのラーメンをみんなで食べてから、その足でスタジオ行ったり。
世の中で生活する上で一番大事なのは、金とご飯ですよね。それがあれば生き残れる。
——今、飲食業界もなかなか大変だと思います。
飲食業界を見ていると、いいところだけ仲間意識を出していて、「本当に協力し合ってる?」って思ってしまいますね。俺、他店の宣伝はしないんです。まずは自分の店を固めて、従業員を守らないと。
そういう意味での仲間意識も芽生えましたね。俺が止まったら、従業員に飯も食わせられなくなるし。生き残る一つの手段を与えている満足感というのは、経営者になって分かりましたね。母親が自分にしてくれたみたいに、人にご飯を食べさせられることってすてきだな、と。この31歳の段階で経験できたのは、すごいなと思います。
街は助けてくれない 自分との戦いだ
——アーティスト業界では、生活が厳しい人もいるのでは?
家賃の支払いすら厳しい人もいるんじゃないですか。特に学生の子は、親に仕送り頼んだり、家賃の支払いを待ってもらったり。
——でもNABYさんは、ポジティブですね。
だって、「そんなネガディブなら日本に帰ったら?」って思うでしょ(笑)。日本人って、傷の舐め合いが多いんですよね。「分かる、分かる。時間ないよね、うちも」とか。それしている間は絶対成功できないですよ。
ニューヨークに住んでいると嫌なことがたくさんあると思うんですけど、しょうがなくないですか、と。身近に誰かいても、結局この街では、誰も助けてくれないんですよ。
話は聞いてくれる。でもいっぱいいっぱいで行動に移すことがない。「本当に助けてくれよ」って時に助けてくれる人がいないことを、この7年間でしみじみ感じたんですよ。
結局、海外、自身のメンタルが相当強くないと生き残っていけないですよね。友達の数じゃなく、自分との戦いです。いくら信用している相手にも、「金貸してくれ」は無理じゃないですか。
俺は、お金が悩みの9割を解決してくれると思っている。俺も1カ月収入が途絶えた時があって、その時は悩みましたね。普段全然、悩まないんですが(笑)。
「俺でもできる、だから負けんな」
——その原動力には、どんな思いがあるんでしょう?
次の次世代に何か残したいんですよ。自分がニューヨークに来たのが23歳ごろなので、その世代に言いたい。「俺も中卒やけど、やればできるんだぞ」と。中卒でもちょっと頑張れば、ラーメン店のオーナーになれて、音楽レーベルとのメジャー契約もできるぞ、と。
それを事実として残していってます。言うのは簡単ですけど、やって見せないと、若い子が夢持たないんですよ。「R-NABYくんができてるなら、俺にもできるじゃん」ぐらいの気概の子に来てほしい。俺も、その勢いでしたから。
バカの俺でもできるんだから。成し遂げることによって、「バカ」が武器になるんですよ。
若い世代に言っていきたいな。俺でもできる、負けんな、と。
——自身の中の最終的なゴールは、ありますか?
今レコーディングスタジオを作ってるんですけど、アパレルも作りたい、焼肉店もやりたい。そして最後に自社ビルを建てたいんですよね。
それが小さい頃からの夢だった。でも、今なら、できますよね。
R-NABY
本名・吉本秀真。
1989年4月13日生まれ、京都府出身。
14歳でヒップホップに目覚め、24歳で渡米。
2018年にメジャー1stアルバム『THE R-NABY ALBUM』(ユニバーサル)を発売。
20年に『Chink Culture EP』(ソニー/チャート27位)発表。年間200本以上ライブを行う。
「孤高のカス」を突き通し、海外生活でのリアルメッセージを届ける。
Instagram: @r_naby_official_nyc