Page 15 - NY Japion
P. 15
15|Vol. 895|Friday, December 16, 2016 BUSINESS阪本が選ぶ読めば分かる この一冊残業ゼロがすべてを解決する 小山昇「わが社の社長室に、私 の椅子はありません。 私が社長室で仕事する ときは、『立ったまま』で す( デ ス ク の 脚 を か さ 上げして、作業ができる ようにしています)。」ダイヤモンド社110共 感 マ ー ケ ティン グ「他社ではジョーシキみた 買い出しに行かない。 いに簡単にできちゃってる   また、土俵をずらす姿勢 のに、うち、できない」とい も重要です。あなたが自転 う、一見「困ったこと」や「欠 車部品(子供用ヘルメット 点」は、チャンスの泉に見え など)を販売しているとし てきます。欠けていること、 ます。モノ=商品の良さや〝共感〞をキーワードに独自のマーケティング理論を 展開するブランディングコンサルタント・阪本啓一の「マーケティング力アップ講座」。足りないことを埋める発想 ではなく、違うやりかたを 見つける創意工夫につなが るようにします。使い勝手をアピールするの は、他の店でもやっているこ と。土俵をずらします。第 回 マイナスが商機になる  例えば、「この自転車に 乗ると、算数の点数が上が る」といった、「因果関係に 違和感」を持たせるのです。 ウソはいけませんが、身体 能力と学力との関係に因 果関係が見つかるような 事例があったらこっちのも  知人は生まれつき股関 ようにするなど徹底した 節に障害を持っています。 データ管理のデジタルをう それがきっかけで股関節専 まく組み合わせ、社員だけ 門の整体と出会い、現在は で純米大吟醸を製造販売 股関節専門整体院の経営 しています。いまや供給が をしています。「いまの仕事 追いつかないほどの人気ブ に出会えたわけですから、 ランドに育っています。 生まれつきの障害は、ギフべて商売のネタになるわけで、いいことなんですね。   その基本的な知的姿勢トに思えます」と、知人は困りごとはチャンス 不器用が産んだ商品振り返っています。  人気絶頂の日本酒ブランド「獺祭」を生み出した 旭酒造は、大きな負債を負 ってしまった時、杜氏に逃 げられてしまいました。杜 氏がいなくなったから、自 分たちでやるしかなかっ た。でも、それまで杜氏に遠 慮していたのが、自分たち のやりたい酒造りができる  1920年、アール・ディクソンは、料理好きだが不器用で炊事のたびにやけどしてしまう奥さんのためにばんそうこうをテープで簡単に張れる工夫をしました。これが「バンドエイド」 むあるご夫婦が、「木を運 が生まれた瞬間です。いま ばせる牛や馬がいるので、 も売れ続けるロングセラー 餌やりのため、旅行に出ら となり、ディクソンはジョン れない」というぼやきを耳 ソン・エンド・ジョンソンの にしたとき、「では、木を運 副社長にまで上り詰めま ぶ機械があればいいだろ した。これも奥さんが不器 う」という発想で、「やまび 用という「困りごと」がギフ こ」という林内作業車が生 トになったわけです。 まれました。ようになった。  人の手による洗米、和釜の技法で蒸し米、人の手で ほぐし続けて2昼夜半の 麹造り...といった人力のア ナログと、もろみタンクの 成分を毎日調査してグラ フにし微妙な違いが分かる  そう思うと、「困りごと」   こう思うと、「あれが足 も含め、起こったことはす りない」「これができない」「三輪駆動静香(さんりん くどうしずか)」「草刈機ま さお」「男前刈清(おとこま えかりきよし)」「主役 芝耕 作」「伝導よしみ」など、一度 聞いたら忘れない、そして くすっと笑えるネーミング で有名な農機具メーカー 筑水キャニコムは、ユーザ ーである農家の「ぼやき」を ネタに商品化しています。は、「ないものを補う」ではなく「あるもので何とかする」です。料理に例えれば、 のです。ポイントは、「同業  例えば「草刈機まさお」 は車軸に草を巻き込まな いようタイヤに工夫を凝ら しています。また、林業を営「ない」でなく 「あるもの」で冷蔵庫を開けて、そこにあ る食材を使っておいしいも のを作る、ないからといって他社がやっていそうもない 因果関係の結び付け」で す。 す。やる気にあふれて仕事に没頭している社員にやめろ、とは心情的にも言いにくい。とはいえ、社会問題化した大手広告代理店の事件を持ち出すまでもなく、ビジネスのあり方が大きく転換している今の時代「、労   本書は著者の実体験を 働時間の長さ」と「業績(パ 元に、具体的に残業ゼロに フォーマンス)は比例しませ することの効用を学べま ん。 す。一般社員の前に、まずは残業は悩ましい問題でという形で売っている」か ら「、稼ぐアイデアを生み出 すことで給料をもらってい る」へと変えなければなりま せん。 時間机に向かって 何も生み出さないより、 分で何かを生み出したほう がいいのです。  社員の意識も、「自分の マネジャーの意識改革が必 人生の時間を会社に給料 要ですが。1010今週の教訓うまくいかないことを大切にしましょう阪本啓一■ブランディングコンサルタント。大阪大学 人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し 渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。 06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役社 長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営 の実現に取り組む。『ブランド・ジーン~繁盛をもたら す遺伝子(』日経BP社)などの著書・訳書、講演活動 も多数。www.kei-sakamoto.jp 電子メディア開店!www.orange-media.jp


































































































   13   14   15   16   17