Page 16 - NY Japion
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第5回  サイクルの重要性と衰退を繰り返すという とんどない為、融資や投資 ーマンショックなどです。 ことが基本原則です。経 に付随したリスクが低下   いずれの場合も、金融機 済、市場、企業も例外では したように見えます。徐々 関や投資家が低利の資金 ありません。必ず浮き沈み にリスク回避志向が薄れ、 を大量に提供した結果、行 があります。ではなぜ、われ 金融機関が事業拡大、つま き過ぎた事業拡大が進み、 われが生きている世界にサ り資金供給の拡大に動き 大規模な損失が発生して イクルが存在するのでしょ ます。 います。 うか。根本的な原因は、人   金融機関がマーケットシ   サイクルの波がなくなる がかかわっていることにあ ェア拡大の為、要求リター ことは決してありません。浮き沈み繰り返す人が介在する市場  前回は人間の思考につい て解説しましたが、今回は サイクルについて、お話し ます。に転じたりもします。急速 に前進した後、減速する場 合もあります。じわじわと 悪くなっていたものが、急 激に悪化することもありま す。人生と同じく、投資の 世界でも確実なことなど ほとんどありません。価値 がゼロになることも、予想 が外れることも、環境が変 わることも、確実といわれ ていることが崩れることも あります。しかし、それでも 信じられる原則が二つあり ます。ります。機械に任せれば、 物事は一直線に前進するこ ともあるでしょう。しかし、 歴史や経済学といった分野 では、その過程に人がかか わっており、人がかかわれ ば、結果は変化に富んだも のとなります。それは主に、 人が感情的な生き物だか らだと考えられます。ン、つまり金利の引き下げ それでも、 年に1度くら や与信基準の緩和、特定の いの間隔で人々はサイクル 取引を対象とした資金供 がなくなったと思い込みま 給の拡大、契約条件の緩和 す。良い時期が絶え間なく を行います。これが行き過 続く、あるいは悪い流れに ぎると、金融機関が本来は 歯止めはかからないと考え 融資するに値しない借り るようになります。そして、 手やプロジェクトに資金を 一方向への流れが永遠に続投資の原則  人が生きている中で起こ るほとんどの物事は、一本 調子には進みません。前進 もあれば、後退もありま す。回り道だと思っていた ことが、実は最短距離だっ たということや近道と思っ て進んだら思わぬ落とし 穴があったりということは よくあることです。その評 価は、時が過ぎ、今が過去 になってから初めて分かる ものです。サイクルが及ぼす影響提供するようになります。 よく言われている、最悪の 融資は景気が最も良い時 期に行われるという状況が 起きるわけです。その結果、 金融機関には粗悪な融資 残高が積み上がり、資金を 回収できなくなり始めるとくと主張し始めます。サイ クルはなくなった、という 思い込みは、今回は違う、 という危険な前提に基づ く考え方の典型例といえる でしょう。このフレーズは、 過去のことを理解し、歴史 が繰り返すと知っている人 に恐れを抱かせるととも に、格好の利益を生み出す 機会を提供します。  投資の世界も同じです。前進もすれば、後退もします。好調だったものが不調   物事は上昇と下落、成長す。  特に重要なのが、クレジげ、サイクルは下降局面へ 反転します。損失を出した 貸し手が意欲を失い、融資 姿勢を消極化させる。リス ク回避志向が強まり、それ にともなって金利の引き上 げ、与信基準や契約条件の 厳格化が起きる。利用可能 な資本の規模が縮小し、サ イクルの底では、融資が激 減する。企業が資本不足に 直面し、債務の借り換えが  過度に楽観的になるこ となく、そして極端に悲観 的になることもなく、良す ぎることは永遠でなく、そ してまた悪すぎることも永 遠に続かないということ を、決して忘れないことが 重要です。原則1  ほとんどすべての 物事にサイクルがある 原則2  大きな利益や大 きな損失は、世間が原則1 を忘れた時におきる  サイクルにもさまざまな種類があります。景気サイクルやビジネスサイクル、ライフサイクル、在庫サイ いった事態がおきます。こ クル、テックサイクルなど、 の段階に達すると、これま 多くのサイクルがありま での上昇局面は終わりをつット・サイクルです。クレジ ット・サイクルとは、クレジ ット(信用)の「回復・拡大・ 後退・修繕」という循環のこ とです。具体的な流れにつ いて説明します。経済が好 況期に入ったとします。す ると資本を提供する金融 機関は繁盛し、資本基盤を 拡大します。悪い材料がほ(参考=Howard Marks "The Most Important Thing”, Co- lumbia Business School Pub- lishing)できなくなり、債務不履行 や倒産がおきる。こうした プロセスが景気後退を招 き、さらに加速します。繰り返すバブル  寛大過ぎる資金供給者 は、往々にしてバブルを後 押しすることになりまし た。過去 年の間にも、甘 すぎる融資姿勢がブーム とその後の危機を引き起こ した例が多くありました。 1989〜 年の米国不 動産危機、 〜 年の新興 市場危機、2000〜 年 のベンチャーキャピタル・フ ァンド危機、 〜 年のリ© ImageFlow/ Shutterstock.com人が介在する金融市場は、必ず浮き沈 みのサイクルを繰り返すFriday, October 28, 2016|Vol. 888|16 BUSINESS            見過ごされている、見えにくいポイントを知 れば、複雑化する現代の金融市場も見え てくる。最新の情報を分析する専門家が 分かりやすく米国金融市場をひも解く。前田秀人野村ホールディングス傘下のノムラ・セキュリ ティーズ・インターナショナルのニューヨーク オフィスで、米国株式セールスとして勤務。テ レビ東京「モーニング・サテライト」、東京MX「ストックボイス」などに出演。鹿児島県出 身。早稲田大学商学部卒業。父は板前。10 07 099492 982001


































































































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