Page 16 - NY Japion
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第 回 大統領選の動向派の)共和党をやり込めよ うとしてきたのは知ってい た。しかし、この選挙戦を通 して、いかにメディアが偏 向していて、不誠実かがは っきり分かった。メディアの やりたい放題にはさせてお さらに同サイトは、これ まで有権者が、選挙の動向 を知るために接してきた主 要メディアではなく、トラ ンプ氏を支持している右派 メディアの「ドラッジリポー ト」「ブライトバート」「ナシ ョナル・レビュー」などを読 むように勧めている。 同氏が演説の最中、演台 の正面に設けられたメディ アの取材席を指差し、こう 叫んだ。すると、支援者が ブーイングを始め、まるで、 記者らが犯罪人でもある かのように、スマートフォン で写真を撮る人さえいた。トランプ候補陣営の下 右派メディア表舞台に 選挙陣営のトップに、過 激な右派メディアの経営者 を起用する̶。米大統領選 挙で、共和党候補のドナル ド・トランプ氏が、表現の自 由を標榜する世界一の民主 主義国家で、「反乱」を起こ している。 トランプ氏は8月 日、 けない。われわれの選挙戦 「われわれは、ヒラリー・クリントン(民主党候補)と戦っているのではない。不 て敵だ。トランプ氏は、こう 誠実で完全に偏ったメディ 主張する。 同時に、トランプ氏はウ ェブサイト「主要メディアの 信頼性調査(メインストリ ームメディア・アカウンタ ビリティ・サーベイ)」を新 設。支持者がアンケートに 答え、トランプ氏が主要メ ディアと戦う資金の寄付を 求めている。質問は以下の ブライトバートから起 用したバノン氏は、家庭内 暴力(DV)で元妻から警 察を呼ばれた過去があった ことも米メディアが報じ た。過去のチェックもせず に、政治経験もない人物を 起用することも、最近の米 大統領選挙では異例なこ とだ。アと戦っているのだ」 「メディアが常に、(保守クリントン氏が反応 憎しみを推進と警鐘支援者への一斉メールで、主 要メディアに対する全面戦 争を宣言した。ニューヨー クタイムズなどの有力新 聞、CBS、NBC、ABC などのネットワークテレビ 局、CNNなどの 時間ケ ーブルニュース局といった 伝統的なメディアは、すべでは、やり返すんだ」 集会では、「ヒラリーは、 死ね」という声さえ上がる。 クリントン氏が指摘する ように、トランプ氏は、対立 候補、移民、イスラム教徒 などへの「敵愾(がい)心」を 煽ることで、人気を得てい るのが、集会に参加すると よく分かる。主要メディアは不誠実 報道の姿勢を問う 同時にトランプ氏は、右 派メディア「ブライトバー ト」のトップだったスティー ブン・バノン氏を選対本部 の最高責任者に抜擢した。 同氏については、過去にブ ルームバーグが「最も危険 な政治工作員」と指摘して いる。ようなものだ。 「FOX、CNN、MSN 1年前は誰も知ること がなかった「ブライトバー ト」は、トランプ氏を支持 して、急速に成長してき た。男女平等主義、イスラ ム教徒、同性愛者、リベラ ル派だけでなく、共和党の 主流派でさえ過激に攻撃 する。「ハイテク企業がなぜBCなどのケーブルニュー ス局は、トランプ氏の選挙 戦に対し、公正な姿勢の報 道をしていると思うか」 いつまで、このような「異 常さ」を、世界最大の民主 主義国家が許していくのだ ろうか。 「主要メディアは、オバマ ケア(オバマ大統領政権が 実現した医療保険制度)に 複数の欠陥があるというこ とを明らかにするために必 要な精査を行ったと思う か」 「(保守強硬派の)茶会党 (ティーパーティー)について の報道は、意図的にネガテ ィブなものだったと思うか」女性を雇わないのか〜イン タビューでムカつくからだ」 といった記事が、人気を集 める。 クリントン氏は、即座に 反応した。 「トランプ氏は、憎しみを 推進するグループを、表舞 台にのし上げた」 主要メディアを敵視する 姿勢は、4月にニューヨー ク州北部のポーキプシー で、そして7月にペンシルベ ニア州スクラントンで、ト ランプ氏の集会に参加した 時も目撃した。 「メインストリームメデ ィアは、最も不誠実な奴ら だ!」ハート共和党大会で反トランプを訴える人々【今週の用語解説】ブライトバート ブライトバート・ニュース・ネット ワークはロサンゼルスに本社 を置くオンラインニュースサイト。ラジオ放送、ブライトバー ト・ニュース・デイリーも行う。 保守派コメンテーターのアンドリュー・ブライトバートが 2005年から開始したニュー スサイトを基盤に07年に創 設。当初は通信社のニュース を集めた米国のニュース、オ ピニオンを掲載した。WTAE ニュースのアンカーだったス ティーブン・バノンを雇い入 れ、12年にブライトバートが 亡くなった後、テキサスなどに 支局を設置し、事業を拡大。Photo by Morgan Freeman152434Friday, September 2, 2016|Vol. 880|16 BUSINESS津山恵子の に刺さるニュース解説米国で起きているさまざまなニュースは、市民 の生活にも深く関わっている。ニュースの背 景や深層、そしてわれわれの生活への影響 を、気鋭のジャーナリストが解説する。津山恵子ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク 発で、米社会、経済について執筆。フェイス ブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに 単独インタビュー。近書に「教育超格差大 国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市 平和特派員。元共同通信社記者。