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50% 40% 30% 20% 10%0% -10%16石油生産量の推移(2008年12月~14年4月)US&Canada OPEC155019Friday, January 29, 2016|Vol. 849|16 BUSINESS堀古英司の【今週の用語解説】OPEC産油国が、欧米の石油カル テルに対抗して自らの利益を 守るため、1960年に結成し た組織。イラン・イラク・クウェ ート・サウジアラビアなど13カ 国が加盟している。本部・事 務局をウィーンに置く。14 50306030(出所: 米エネルギー情報局)経済ミラクルキャッチ!ニューヨークは世 界 経 済 の中心地。せっかくこの地 にいるのだから、株価の動 向、企業の買収や合併、 金利政策などを理解し、 資 産 運 用 に 生 か し た い! 敏腕ヘッジファンド運用マ ネ ジ ャ ー が 、経 済 情 報 の 読み解き方をやさしく解説 する。16263770堀古英司ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホ リコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責 任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライ ト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、 アメフト部で活躍。7040Dec-08 Apr-09Aug-09 Dec-09Apr-10 Aug-10Dec-10 Apr-11Aug-11 Dec-11Apr-12 Aug-12Dec-12 Apr-13Aug-13 Dec-13Apr-14第 回  原油価格暴落で株式市場混乱は経済にとって良いことな のではないのか、特に車社 会のアメリカでは、今後ガ ソリン価格の下落によって価格は100ドル近辺での高止まりが続いていたの 非合理な動きは です。しかし供給に対する 中長期的に修正される 不安が後退するやいなや、需要と供給のバランスがそ   しかし既にお気付きの のまま原油価格に反映さ 通り、原油価格が下がれば原油価格が落ちると なぜ株価が下落するか 消費者に大きなメリットが  1年半前、原油先物価格は1バレル当たり100ドル近辺で取引されていました。しかしその後急落を始め、2015年初には2分の1の ドル、同年の年末にはほぼ3分の1の ドル、そして 年初頭にはほぼ4分の1となる ドル台を付けるに至りました。 ショックによって世界経済もたらされるのではない か、という疑問が沸いてく ると思います。それでは原 油価格の下落はなぜ、今回 このように株式市場に悪影 響を与えているのでしょう か?れる形で急落が始まったと いうわけです。下がるほど売らないといけ ない、原油価格が下がった ら株式も売らないといけな い、というのは経済的に合 理的な行動ではありませ ん。短期的な行動を別にす れば、中長期的には原油価 格が下がれば生産量を減 らすはずですし、それはい ずれ原油価格の上昇につな がります。また前述の通り、 原油価格の下落は、ガソリ ン価格の下落を通じていず れ、アメリカ経済の7割を 占める個人消費を刺激し、 それは株式市場のサポー ト材料になるはずです。てからの原油先物価格の 急落を受けて、世界の株式 相場も歩調を合わせるよ うに急落となり、今年は株式の売却で 産油国が損失穴埋めか「株式市場の歴史において 最悪の年明け」ともいわれ ています。シェール開発による 供給過剰が原因  シェールオイルの損益分 岐点は、原油価格 ドルの 所から110ドルの所ま で、広範囲に渡っています。 ただその中心は ドルく らいですので、原油価格が  しかし1970年代、原 油価格が高騰したオイル年中もしばしば見られ が大混乱したことからす  そもそも今回、原油価格 が下落を始めたきっかけ は、アメリカを中心とする シェール開発による供給過 剰がきっかけでした。左上 の図は石油生産量の推移 を示したものですが、20 09年以降、OPEC(石 油輸出国機構)諸国による 生産量がほぼ一定であった のに対して、アメリカとカ ナダの生産量はほぼ % も増えています。このほと んどがシェール開発による ものです。た現象ですが、 年に入っれば、逆に原油価格の下落ドルを下回れば多くの 業者は赤字になるため、生 産を止めるはずです。  原油価格は需要と供給 のバランスで決まります が、これだけ供給が増えて いたにもかかわらず、 年 はイラク、パレスチナ、ウク ライナなどで断続的に軍 事衝突が起こり、石油の安 定供給に対する不安が高 まっていた事もあり、原油  そしてそれは恐らく、財 政や年金などを石油収入  正直な所、私も原油価格の下落は予想していましたが、この理由から、結局中長期的には ドル台で落ち着くと考えていました。 がるから売る、売るから下もちろんいずれそうなるか もしれませんが、少なくと も短期的には最近の ド ル割れに至る原油価格の 下落は、別の要因が働いて いるとしか考えざるを得ま せん。恐らく需要は短期的 に大きく変わることはない でしょうから、 ドル割れ でも売らなければならない 主体がまだ多く存在して いる、ということなのです。がる」と、非合理的な動き になることがしばしばあり ます。そしてその非合理性 を、中長期的に修正してい くのも市場自らなのです。に大きく依存している産油 国でしょう。一定の収入を 見込んでいたものが、原油 価格が半額になってしまっ たので、収入を同じにする には量を2倍売らなけれ ばならない、原油価格が3 分の1になったら3倍売ら ないといけない、という動 きになっているのです。  産油国は石油収入を世 界の金融市場で運用して きましたから、その収入の 穴埋めのために株式を売 却しないといけない、その ような動きが現在世界の 金融市場で起こっていると 見るのが自然だと思いま す。  もちろん市場というのは 短期的にはこのように「下


































































































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