今週からプロリーグの新シーズンが始まったアイスホッケー。スピーディーな試合展開とフィジカルテンションが最大の魅力だが、TVで観るのと実戦をナマで観るのがこれほど違うスポーツもない。今年こそ、アリーナに足を運んでアイスホッケーを観戦してみよう。
今、米国の若&#
映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。
前回の話の続きからさせてもらいたい。1995年のO・J・シンプソン裁判でドリームチームと呼ばれた敏腕弁護士チームの一人にバリー・シェック氏がいた。彼の法廷での議論はロサンゼルス市警の科学捜査が、特に現場での物的証拠の収集が精密さを欠くずさんなものであり、証拠として認められないと主張して、結果としてO・J・シンプソンの無罪評決に繋がってしまった。しかし、法科大学の教授でもあるシェック氏は同時に92年にイノセントプロジェクトというNPOを大学内で立ち上げ、ずさんな科学捜査で無実の罪を着せられて収監されていた数多くの人たちを今日現在で240人も救ってきている。法廷での評決は有罪か無罪かとはっきりと出ても正義の議論は白か黒かでは語ることができない。
さまざまな角度から人間や、国家社会や歴史を掘り下げていくと、ある国家社会で道徳的で正義であることが他の国家社会では不道徳であり不正義であることがわかる。人類文明の歴史は、この正義を暴力で押し付けあってきた歴史で満ちている。一部のグループの正義を他のグループに暴力で押し付け、イデオロギーを押し付け、宗教を押し付ける。結果として血に濡れた死体の山を累々と築いてきた歴史でもある。今回の映画はそんな正義とイデオロギーの押し付け合いがどれだけ非人道的な結果を迎えるかを教えてくれる。
ブラックホール
75年、内戦が激化していくカンボジアで米国人ジャーナリスト、シドニー・シャンバーグの仲間と現地の新聞記者で彼らの通訳として行動を共にするディス・プランが取材を続けていた。ポル・ポト率いるクメール・ルージュのカンボジア全土の制圧が濃厚になる中でシャンバーグ一行はプランを米国亡命させることを画策するがそれも失敗に終わり、一行は農場での強制労働が待っているプランを残して国外に退避しなければいけなかった。
数年が経ち、カンボジアの取材でピューリッツァー賞を受賞するシャンバーグとは対照的に共同農場で強制労働を強いられ、いつ処刑されるかわからない恐怖の中で生き続けるプラン。彼はそこでクメール・ルージュに処刑された死体の山、キリング・フィールドを目撃する。
文化、歴史の大刷新を掲げて「ゼロ年」と呼ばれたこの年のカンボジアでは医師、教師、芸術家、資本家などが次々と処刑され眼鏡をかけていただけで処刑されることもあった。
この原稿を書いている現在、ニューヨークのコロンビア大学でのイスラエルによるパレスチナへの非人道的な攻撃を非難する抗議活動が米国中の大学に飛び火して一部では暴力へとエスカレートしている。米国でも日本でも平和的な抗議活動は表現の自由として憲法で守られている大切な権利である。
憂慮すべきなのは若者に限らず抗議を口にする多くの人たちがTikTokやYouTubeなどから情報を得ていることにある。このコラムで何度も書いたがSNSの情報は分厚い事実検証を通り抜けることなく誰がどんな目的を持っていても載せられてしまう。しかも、AIのアルゴリズムでずらりと閲覧される似たような情報で見ている人たちを偏った情報のブラックホールに引き込んで物事を判断する見解が更に狭められていく。結果、物事を白か黒かでしか見ることができなくなり、他の人の意見を聞くことすらできない極端に偏った意見を持つ人間が出来上がってしまう。そんな分断が極限まで深まった世界では何が起こり得るのか。この映画を見て考えるきっかけにして欲しい。
今週の1本
The Killing Fields(邦題: キリング・フィールド)
公開:1984年
監督:ローランド・ジョフィ
音楽:マイク・オールドフィールド
出演:サム・ウォーターストン、ハイン・S・ニョール
配信:Netflix、Amazon Prime他
1975年、内戦下のカンボジアで米国人ジャーナリストと現地の新聞記者との数奇な運命と深い友情の物語
(予告はこちらから)
鈴木やす
映画監督、俳優。1991年来米。ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。facebook.com/theapologizers
あなたの思い出の映画はなんですか?
レビューの感想や、紹介してほしい作品などの情報をお待ちしています。
editor@nyjapion.comまでお寄せください。
今、米国の若&#
映画監督・鈴&#
【音楽】 11日(
今週からプロリーグの新シーズンが始まったアイスホッケー。スピーディーな試合展開とフィジカルテンションが最大の魅力だが、TVで観るのと実戦をナマで観るのがこれほど違うスポーツもない。今年こそ、アリーナに足を運んでアイスホッケーを観戦してみよう。
安定したインターネット環境と自宅のパソコンやタブレットを使用して、海外からいつでも受講できるという便利さが魅力の通信教育。バイリンガル学習や帰国子女のための日本の教材・教育が揃う通信教育の魅力をリサーチ。
自然のリサイクル活動を生かしたミニチュアガーデン、テラリウム。5月に特集した盆栽と並んでパンデミック以降、ジワジワ人気上昇中のエコな園芸にズームイン!