レトロ作品 まったりレビュー

今週の1本 Thelma & Louise(邦題: テルマ&ルイーズ)

映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。


1991年の夏にニューヨークに降り立ち、その1週間後に映画館に赴いて米国で初めて日本語字幕無しでハリウッド映画を観た。その時の事を細部まで鮮明に憶えているのにはわけがある。アラン・パーカー監督の『ザ・コミットメント』という映画を観に行ったのだが英語のセリフがさっぱりとわからない。英語には割と自信があった方なのだがきれいさっぱりまるでわからない。映画が大好きなのでこれにはかなり落ち込んだ。数年後にこの話しを米国の友達にすると「あれはアイルランドのロックバンドの話だからね。アイリッシュのアクセントがかなりきつくて、僕でも分かりづらかった」という。米国人でも分かりづらいものは来たばかりの僕にわかるはずがない。機会をみつけてまた『ザ・コミットメント』を観てみたいと思う。今度はどこまで理解できるだろう。そんなわけで果たして今度は英語のセリフが理解できるだろうかとおそるおそる観に行った2回目の映画が今回紹介する映画だ。

アーカンソー州に住むウエートレスのルイーズと専業主婦のテルマ。親友の2人はつまらない事の繰り返しの田舎生活の息抜きをしようと週末に山荘を借りて釣り旅行に出かける。その途中に寄ったバーでテルマは酔っぱらい、見知らぬ男と親しくなるが、その男は駐車場でテルマをレイプしようとする。激しく抵抗するテルマの前に護身用にとテルマが持参した拳銃を掲げてルイーズが現れる。過去に性暴力の被害者としての経験があるルイーズはあまりの怒りに思い余って男を射殺してしまう。田舎町の警察はレイプの証拠が薄い状況の男の死を疑うに違いないと2人はメキシコへの逃走を決意する。しかしせっかく苦労して手にした逃走資金を若い放浪者J・Dに盗み取られた2人は逃走を続けるうちにコンビニに強盗に入るなど徐々に大胆になっていく。

捜査を続ける州警察の警部ハルは状況を把握して2人には罪は無いと確信して投降するよう説得を繰り返すが2人は拒否。警察に追い詰められて行くテルマとルイーズは強い絆の友情で決して死ぬまで離れないと決意を固くして逃走の旅を続けていく。

米国社会が性暴力に対する声をようやく理解し始めて厳しく対処されるようになってきたのはごく最近の事だ。日本社会はまだまだ遅れをとって性犯罪に甘い現状がある。被害者の置かれている状況や心情を少しでも理解するためにもこの映画をぜひ観て欲しいと思う。

サウスウエスト

子供が生まれる少し前、僕たち夫婦は米国サウスウエストへのロードトリップに出た。サンフランシスコで車をレンタルしてヨセミテ国立公園を横切り、ネバダ、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコをひた走りサンフランシスコに帰った。読者の皆さんも東海岸近辺か米国の大都市しか行った事がない人たちが多いと思う。実にもったいない。せっかく米国に暮らしているのだからぜひ車でサウスウエストを走ってみて欲しい。そして壮大な大地に比べてなんともちっぽけな自分を感じて欲しい。きっとニューヨークのコンクリートに囲まれて仕事を続ける自分の心があの壮大な何もない大地のように広がって、また明日も頑張ろうという活力をもらえるはずだ。

今週の1本

Thelma & Louise(邦題: テルマ&ルイーズ)

公開:1991年
監督:リドリー・スコット
音楽:ハンズ・ジマー
出演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス
配信:AMC+、フィロ、ユーチューブ他

親友のテルマとルイーズの2人はレイプをしようとした男を撃ち殺してしまい車で逃走の旅に出る

(予告はこちらから)

 

鈴木やす

映画監督、俳優。1991年来米。ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。facebook.com/theapologizers

 

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