レトロ作品 まったりレビュー

今週の1本 BLACULA(邦題: 吸血鬼ブラキュラ)

映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。


イーストビレッジ地区のセント・マークス・プレイスはかつてニューヨーク・サブカルチャーの聖地だった。今はコマーシャル化が進んで見る影もないが、1990年代当時はセントマークスに行けば朝方まで飲み歩くことができ、やばいものが街角で手に入り、奥に行くほど危険な店が多くなって、時々怖い目にもあった。

結婚する以前の僕の妻は、当時セントマークスと1番街の角のアパートに住んでいて若かった僕はガールフレンドの家に足繁く通っていた。そして3番街と2番街の間にあったのがモンドキムズの愛称で呼ばれていたレンタルビデオ店、Kim’s Video and Musicだった。映画ファンの間ではキムズに行けば、希少で専門的で実験的、人に知られたくないような秘密の趣味の映画が見つけられると知られていた。他の店では絶対にないような外国映画も充実していて、ベネチアで賞を取る以前の米国内では誰にも知られていなかった北野武監督作品もキムズに行けば借りられた。そしてキムズに通っているうちにハマってしまったのがエクスプロイテーション映画と呼ばれるいわゆるB級映画の数々だった。

B級映画の歴史は意外にも古く、映画の歴史自体の草創期、30年代にはすでに大手の映画会社では取り上げられない、売春、不倫、マリファナといったセンセーショナルな題材を扱い多くの観客を集めていた。

あまりの多さにハリウッド映画業界がプロダクションコードという自主規制を作り一時は少なくなったものの、戦後に観客層が若者に移行してドライブインシアターが増えると、その観客層を目当てにホラー映画、バイカー映画、サーフィン映画などのB級映画が雨後のタケノコのように出現した。時には大予算で映画スターを起用し宣伝費に莫大な予算をかけて作るハリウッド映画よりも、低予算と無名の俳優で制作されてセットも使い回すようなB級映画の方がヒットしてしまうこともあった。

ドライブインシアターのない大都市の中心部の大手の映画館ではB級映画を上映してくれなかったために出現したのがグラインドハウスと呼ばれたB級映画専門の映画館であった。

今ではディズニーランドのようにコマーシャル化されたタイムズスクエア近辺もかつては42丁目のブロードウェーと8番街の間にグラインドハウス映画館が軒並み立ち並ぶB級映画とポルノ映画の聖地だった。

B級映画への愛

B級映画にハマった僕がキムズで見つけたのが今回の映画だ。70年代にブラクスプロイテーション映画と呼ばれた都市部の黒人の若者向けに作られた黒人監督、俳優によるB級映画の数々の中の代表作で、このサブジャンルの映画はパム・グリアなどのメジャーになったスターも生み出し、クエンティン・タランティーノ監督やロバート・ロドリゲス監督の作品にも多大な影響を与えている。

1780年、アフリカのとある国の王子、ママワルデと妻のルバはヨーロッパに渡り奴隷取引の廃止を求めてトランシルバニアのドラキュラ伯爵を訪れた(この無茶な設定が笑える)。しかしドラキュラ伯爵は王子夫妻に襲いかかり(当然でしょ)、王子を吸血鬼にした上で呪いをかけて棺桶に閉じ込めた。

時は過ぎ1972年、この城にロサンゼルスから来たインテリアデザイナーのボビーとビリーが骨董品の買い付けにやってきてこの棺桶を興味本位に米国に持ち帰る。棺桶を開けた二人は蘇った吸血鬼ブラキュラに襲われてやがて街も恐怖に陥れられる。僕のB級映画への愛は決してなくなることはない。

今週の1本

Chinatown(邦題: チャイナタウン)

公開:1972年
監督:ウィリアム・クレイン
音楽:ジーン・ペイジ
出演:ウィリアム・マーシャル、ボネッタ・マギー
配信:Pluto TV、Amazon Prime 他

アフリカの王子ママワルデはドラキュラ伯爵に呪いをかけられ、200年後のロサンゼルスで吸血鬼ブラキュラとして蘇る。

(予告はこちらから)

 

鈴木やす

映画監督、俳優。1991年来米。ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。facebook.com/theapologizers

 

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