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映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。
ニューヨークでのお正月も1月2日から通常モードに切り替えて仕事を始めるのにすっかり慣れてしまった。しかしお正月には必ず『寅さん』と『トラック野郎』シリーズを観に連れて行ってもらった子供時代のワクワク感からはなかなか抜け出せない。
お正月になると定番のコメディー日本映画が見たくなる。僕はクレイジー・キャッツの世代ではないが、この映画は古き時代の洗練された映像の構図とカメラワークが好きでたまに見る。高度成長時代の日本のモーレツ会社員に対するアンチテーゼの象徴で無責任で調子がいいけれどどこか憎めないキャラクターの数々を演じた植木等さんは実は演じた男たちとは正反対の生真面目な性格だったそうだ。
大ヒットした『スーダラ節』の録音の前にふざけた歌詞にかなり悩み抜いて僧侶である父に相談しに行ったところ、正義感の強い彼の父は「素晴らしい、これぞ親鸞聖人の教えだ。わかっちゃいるけどやめられない、というのが人類の真理なのだ。頑張ってこい」と背中を押されたそうだ。いい話である。植木等さんといえば僕にも深い思い出がある。
そのうちなんとかなるだろう
ニューヨークに渡って3年ほど経ったまだ20代の僕は一度全てを失った経験をした。アッパーイースト地区にあったアパートをルームメイトと折り合いが合わなくなって数日後に追い出される羽目になったのだ。その夜、働いていたミッドタウン地区のラーメン屋のマネージャーからは「明日から来なくてもいいから」と解雇を通達された。舞台の公演がある度にかなり無理を言ってスケジュールを変えてもらったり、長期で休んだりしていたので経営者からすれば当然だろう。銀行口座には200ドルぐらいの金しかない。疲れ切った夜中の2時ごろ6ラインの地下鉄の中で眠ってしまった。気がつくともう110丁目まで来てしまっている。仕方なく降りて真冬の2月のニューヨークを20ブロック以上南にあるアパートに向かってとぼとぼと歩き始めた。
氷点下の下、吐く息が真っ白になるのを見ながらそろそろ誕生日だと思ったら泣けてきた。そして凍りついた水溜りに足を滑らせて見事な尻もちをついた。ドスンと仰向けに倒れたレキシントンアベニューが人生のどん底だった。見上げる形になった透き通るような真冬の夜空を見上げた時「ああ、星がキレイだな」と思った。その途端笑いが込み上げてきた。異国の地で金も仕事も住む家も全て失って滑って転んで「星がキレイだ」だって。この能天気さはもはや笑うしかない。仰向けに寝転んだまま「金もない」と呟いてみては笑い、「仕事もない」と言っては腹を抱え、「家もないよ〜」と叫んでみるともはや笑いは止まらない。全てを失って砂漠のようになった自分から笑いが泉のように湧き上がってくる。立ち上がって歩き出した自分は生まれ変わっていた。そして真夜中のレキシントンアベニューを歩きながら真冬の星空を見上げて高らかに歌いはじめた。
「ゼニのないやつぁ、俺んとこへ来い。俺もないけど心配するな。見〜ろよ青いそ〜ら〜、白いく〜も〜、そのうちなんとか、な〜るだ〜ろ〜お〜」そして全ての所有物を失ってみたその時、自分が何でできているかを理解した。「僕は生きようとする力でできている。生きている喜びでできている」その証拠に30年以上たった今でも僕はちゃんと生きている。植木等さん、ありがとう。あの超絶に明るい歌声には人々を笑わせる以上の力があったのだ。皆さまの2024年が笑いに溢れた一年でありますように。
今週の1本
ニッポン無責任時代
公開:1962年
監督:古澤憲吾
音楽:神津善行
出演:植木等、ハナ肇
配信:DVD
正体不明の無責任男、平均(たいら・ひとし)はバーで知り合った洋酒会社の社長に気に入られて翌日、会社に入社する。
(予告はこちらから)
鈴木やす
映画監督、俳優。1991年来米。ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。facebook.com/theapologizers
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