レトロ作品 まったりレビュー

今週の1本 Scrooged(邦題: 3人のゴースト)

映画監督・鈴木やすさんが、思い出の映画作品を、鑑賞当時の思い出を絡めてゆったり紹介します。


黄色く彩られた街路樹の葉が北風に吹き飛ばされて秋の終わりが告げられると、ニューヨークの街がキラキラとイルミネーションで飾られ始める。多民族、多宗教社会のニューヨークではクリスマス・シーズンとはいわない。メリー・クリスマスともいわない。ハッピー・ホリデーというのが無難なのだ。ニューヨークに来たばかりの頃は僕もメリー・クリスマスを連発して何度か恥をかいた。このキラキラの電飾が今でも好きだ。クリスマスの飾り付けがあまりにも好きなので一度クリスマスが終わってもずっと一年中つけておいた年があった。夏でもずっとキラキラついていたので次の年のクリスマスが来てもちっとも面白くなかった。あれはやはりソメイヨシノのように儚く短いのがよろしいようだ。

子供ができてからはクリスマスツリーにも気合を入れて望んでいる。ちょっと高くつくが本物の杉の木を毎年買って飾り付けも毎年恒例の一大イベント。パパに肩車をされての頂上のお星様の飾り付けは娘の重要な行事であるのだ。今回は数あるクリスマス映画の中でも僕の一番好きな映画を紹介します。

1843年に発表されたチャールズ・ディケンズのクリスマス物語、『クリスマス・キャロル』を現代版に甦らせた映画で物語はご存知の方も多いと思う。最年少で米国大手テレビ局、IBSテレビの社長に就任したフランクは、その辣腕と無慈悲な経営で今日も特別番組、『クリスマス・キャロル』のプロモ・コマーシャルが過激すぎると意見をした重役の一人、エリオットを容赦無くクビにして社員から恐れられた。

その夜、同じく無慈悲な辣腕経営で知られ7年前に心臓発作でこの世を去った前社長、ルーの亡霊がフランクのオフィスに現れ、「俺のように誰にも愛されなかった惨めな死に方をしたくなければ、今すぐに生き方をあらためろ。これから3人のゴーストがお前のもとに訪れる」と忠告し、フランクのかつての恋人、クレアの番号を電話に押してから消え去っていく。翌日、数十年ぶりに再会したクレアはフランクとは対照的に昔と変わらない優しさで貧しい人々へのボランティアに明け暮れる日々を送っていた。しかしフランクは嬉しさの反面、そんなクレアへの苛立ちを隠せずにまたもや喧嘩別れしてしまう。そしてついに彼の元に過去のクリスマス、現代のクリスマス、そして未来のクリスマスの彼自身の姿を映し出すゴーストが現れる。果たしてフランクは改心して生き方をあらためることができるのか。

Do They Know?

1984年にジョージ・マイケル、ボノ、フィル・コリンズ、ボーイ・ジョージ、などの当時のイギリスとアイルランドのトップ・ミュージシャンが一堂に会して『ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?』という歌をリリースした。これはアイルランドのロックスター、ボブ・ゲルドフがエチオピアの大飢饉を救済するためにミュージシャン仲間に呼びかけて実現した企画で、その後に続く伝説的コンサート、ライブ・エイド「ウィ・アー・ザ・ワールド」をリリースしたUSAフォー・アフリカなどのきっかけを作った。「クリスマスは恐れや不安が消え去り心がキラキラと光り輝く楽しい時期なのに、涙にくれるアフリカの子供たちは今がクリスマスだと知っているのだろうか?」と歌った。街も人々の心もキラキラと輝くこの楽しい時期に読者の皆さんもこの映画を見て、今年も戦時下にいるウクライナやガザの子供たちのために想いを馳せて欲しいと願います。メリー・クリスマス

今週の1本

Scrooged

公開:1988年
監督:リチャード・ドナー
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ビル・マーレイ、カレン・アレン
配信:Sling TV、Amazon Prime TV他

大手テレビ局の冷酷な辣腕社長、フランクのもとへ前社長ルーの亡霊が現れて生き方を改めろと忠告を受ける。

(予告はこちらから)

 

鈴木やす

映画監督、俳優。1991年来米。ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。facebook.com/theapologizers

 

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